じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



01月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
 岡大七不思議の1つ「落ちないモミジバフウ」(写真の右手前の木)の近況。1月6日頃には、まだわずかに葉をつけていたが、ついに完全に葉を落としていた。共通テスト(1月16日〜17日実施)の受験生のお守りにはならなかったようである。


2021年1月20日(水)




【連載】ヒューマニエンス「“目”物も心も見抜くセンサー」(1)色覚の多様性

 昨年10月から毎週木曜日にBPSで放送されている、

NHK ヒューマニエンス 40億年のたくらみ

という番組がなかなか面白い。これまでに視たのは の3回分だけであるが、他の回もいくつか録画してあり、順次、感想を記していきたいと思う。

 本日取り上げる「目」についての放送は二部構成となっており、前半は色覚、後半は白目や視線の役割について解説されていた。

 さて、色覚というと、私の世代が学校などで習った知識では、ウィキペディアに「ほとんどのヒトはS・M・Lの3つの錐体細胞を持つことにより、3色型色覚である。S、M、Lのいずれかの錐体細胞が欠如すると色覚異常となる。」と記されているように、3色型色覚が正常で、2色型の人は異常とされており、石原式色覚異常検査表で「異常」と判定されると将来の進路で不利な扱いを受けることがあった。

 今回の番組ではそのような「正常」「異常」という分け方ではなく、人間の色覚は多型であり(=個性)、「いろんな色覚型がいたことで人類は絶滅を免れて生き延びてこれた」(河村正二先生)という立場が強調されていた。

 人の色覚は3色型が圧倒的に多いとされてきたが、番組によると、「いわゆる3色型」は90数%となるが、2色型と3色型の間にはグラデーションがあり、典型的な3色型の人は2/3程度にとどまるらしい。2色型は生活上不利であるとされているが、高緯度の地域で薄暗いなか、輪郭をはっきり見ようとする場合には2色型のほうが有利にはたらくこともあるという。南米に棲むオマキザルには2色型と3色型があるが、昆虫を捕獲できる数は明るいところではほぼ同じであるものの、暗いところでは2色型のほうが有意に多くの昆虫を捕まえられるというような観察結果も示されているという。

 一口に3色型といっても、「緑/赤/青」のセンサーではなくて、「緑/赤と緑の融合/青」というセンサーを持っている人もいるという。後者の場合、赤の色はそれほど目立たなくなるため、景色や絵画の色の見え方も変わってくるという。

 そういえば、2019年10月23日初回放送の「又吉直樹のヘウレーカ!」で、人によって2色のドレスが違った色に見えるという話題が取り上げられていたが、あの現象も、センサーのタイプによる違いが影響しているのかもしれない。同じ日の日記にも書いたが、アフリカに住むヒンバ人のように、
  • 水の色は「白」、空の色は「黒」
  • 現代人の多くには見分けがつきにくいようないくつかの緑色の中から特定の緑を素早く見つけられる
  • 緑色の中から青を見つけ出すのは困難
という独特の色覚を持っている人たちもいるし、また、今回の番組でも紹介されたように4色型のセンサーを持っている人もいるという。なお、ゴッホはどうやら2色型であり、3色型の人よりも2色型の人が見たほうがゴッホの作品は美しく見えるという説もあるようだ【こちら参照】。

 ちなみに、私自身は平凡な3色型であると思われるが、私の場合、春にお花見にでかけてもソメイヨシノの花がみな白っぽく見えたり、紅葉のシーズンにモミジの葉っぱが茶褐色に見えてしまうという傾向はあるかもしれない。2色のドレスはどうみても金色と白にしか見えない。
 いずれにせよ、色覚というのは、本来一次元にすぎない波長という物理的性質を、複数のセンサーによって切り分け、適応上有益になるような特定の波長帯を目立たせる働きをするものであるゆえ、多様性があるのは当然とも言える。多数派の3色型の人たちの都合で2色型の人たちが不利にならないよう、交通信号はもとより、色が手がかりとなるような道具や薬品の区別にあたっては、2色型に最大限の配慮をする必要があるだろう。

 不定期ながら次回に続く。