じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 少し前に購入したヨーグルトメーカーで、甘酒作りに初めて挑戦してみた。近隣のスーパーで買ってきた乾燥米麹と、炊飯器の御飯と混ぜて、60℃で12時間ほど醸成したところ、無事に甘酒ができあがった。砂糖は全く入れていないのだがかなり甘い。

 ところで、ヨーグルトの場合は、作ったヨーグルトの一部を牛乳に加えることで再生産ができるが(一部の乳酸菌を除く)、甘酒の場合は、その都度、米麹を使う必要があるようだ。その理由を検索したところ、Yahoo知恵袋
.....甘酒の場合はコウジカビの持っている糖化酵素がデンプンを糖に変えるだけの変化です。ですから甘酒ができる過程は発酵とは呼べないのです。ちなみにコウジカビの生育は25℃〜30℃程度が好ましく、一般のカビと生育温度が変わりません。...【中略】...60℃は一般的な雑菌の増殖を抑えた上で糖化酵素が良く働くという温度だからです。つまり甘酒作りでは、麹の中で増殖したコウジカビが糖化酵素の源として利用されているだけであり、それをタネに次の甘酒作りにするのは困難です。
という回答があった。
 なお、ヨーグルトの場合も、ビフィズス菌やガゼリ菌由来の乳酸菌はヨーグルトメーカーでの再生産が難しいと聞いているが、おそらく、似たような理由(市販のヨーグルトの場合は、それらの菌をヨーグルトに付加しているだけ?)によるのではないかと思われる。

2020年10月14日(水)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(24)セッティング事象とは何か?(10)実証的研究(2)

 10月12日に続いて、

武藤崇 (1999).「セッテイング事象」の概念分析一機能的文脈主義の観点から一. 心身障害学研究, 23, 1313-146.

についての感想。なおこの論文はつくばリポジトリから無料で閲覧できる。

 武藤論文では、10月12日に引用した3つの研究のほか、さらに4つの実証研究が紹介されていた【139頁以降】。

 このうち、Repp,Singh,Karsh,& Deitz (1991)の論文は、出版社系の雑誌であり全文を閲覧することはできなかった。武藤論文からの孫引きになるが、「6つの活動(余暇、職業前訓練、ジム(構造化された身体活動)、学習活動、家事、昼食)が、常同行動と適応行動の生起に影響を与えるかについて検討し」したものであり、それらの活動のパッケージがセッティング事象として設定されていたという。但し、その活動の最中にスタップから直接的な課題の要求、間接的な課題の要求がなされ、常同行動と適応行動の生起は、活動の種類によるものであったかは不明確であると指摘されていた。

 このことで思い浮かぶのが、園芸療法の効用をめぐる議論である。定年退職前、私も園芸療法学会に参加していたが、年次大会では、

●高齢者施設で園芸療法を実施したところ、利用者の行動に改善が見られた。

というような発表がしばしば見られたが、その「園芸療法」の中身は、マチマチであり、植え付け作業、水やり作業、共同で作業に取り組むこと、それによって会話が増えること、花を鑑賞すること、など様々な行動がパッケージとなって園芸活動を構成しており、園芸療法士はそれを適切に支援する役割を果たすというものであった。楽天版に毎日、写真を掲載しているように花好きの私としては、園芸活動が高齢者の生きがいの1つになるという点では全く異論が無いのだが、療法的効果をどう実証するのかという議論はなかなか難しいように思った。【とはいえ、園芸活動自体が価値に繋がっているのであるから、それを支援する園芸療法士を養成すること自体は必要であるように思う。】

 続く、Chandler,Fowler,& Lubeck (1992)の論文は、こちらから無料で閲覧できる。セッティング事象としては「先生の対応の仕方(the status of the teacher)、玩具の数の多少、同年齢児の社会的スキル」が設定されたという。社会的相互作用の指標としては「vocal and gesturalbehaviors of subjects」が「initiations」と「responses」としてカウントされたという。「玩具の数の多少」という条件は、例えば、お絵かき場面での用具の数(少ない条件はクレヨン3色のみ、多い条件は15色に加えてフェルトペンやスタンプなど各種あり)などで差違を与えたようである。

 Kennedy and Itkonen (1993)の論文は、重度の障害生徒2名に対して、時間的に先行するセッティング事象の効果を検討したものであり、機能的アセスメントの結果、「朝寝坊」や「学校まで送る際の車の停止回数」回数がセッティング事象として同定されたという。この論文もこちらから無料で閲覧可能。

 もう1つ、O'Reilly (1997)の論文も、こちらから無料で閲覧できる。1名の「周期的な中耳炎(recurrent otitis media)」を持つ発達障がい児(26カ月の女児)に対して、中耳炎の期間とそうでない期間における自傷行動の生起を機能分析するという研究であり、そこでは「中耳炎」そのものがセッティング事象であるとされていた。この論文に限らないが、体の症状・病状などをセッティング事象、あるいはMOやEOに加えるという研究や専門書があるようだが、それが妥当かについては大いに議論があるように思われる。

 不定期ながら次回に続く。