じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 10月8日は未明から夕方まで雨模様となり、合計22ミリの降水量を記録した。7月〜9月は、休園日を除いて毎日、半田山植物園にウォーキングに出かけていたが、この日は雨が小降りになるのを待ってから近隣の住宅地を回るコースに切り替えた。
 4カ月連続の「半田山植物園皆勤賞」は途絶えたが、17時40分頃には雨が止み、西の空には燃えるような夕焼けが見えていた。

2020年10月8日(木)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(23)セッティング事象とは何か?(9)「四項随伴性」

 昨日に続いて、

武藤崇 (1999).「セッテイング事象」の概念分析一機能的文脈主義の観点から一. 心身障害学研究, 23, 1313-146.

についての感想。なおこの論文はつくばリポジトリから無料で閲覧できる。

 武藤論文では、Leigland(1984)に続いて、

Brown,W. H,Bryson-Brockmann,W.,& Fox,J. J. (1986) The usefulness of Kantor's setting event concept for research on children's social behavior. Child and Family Behavior Therapy,8,15-25.

に言及されていたが、私の自宅からは、この論文を閲覧することはできなかった。武藤(1999)からの孫引きになるが、要点としては、
  • 従来の三項随伴性の枠組みが、行動に対する生物的・文脈的条件の影響を直接検討することに、ほとんどの場合失敗している。
  • Bijou (1976) を例に挙げ、従来の三項随伴性に、セッティング事象を加え、四項随伴性の分析枠を提唱した。
  • この枠組みは、子どもの社会的相互作用の分析には特に必要。
といった点にあるようだ。「四項随伴性」については、10月4日の日記にも挙げた、
園山・小林(1994).相互行動心理学と行動分析における文脈的視座 行動療法発展への示唆. 心身障害学研究,18,179−190.

でも言及されているほか、ネット検索では、園山先生の企画と思われる、

●オペラント型指導の理論的枠組みの展開 : 三項随伴性モデルから四項随伴性モデルへ、そして相互行動モデルへ(行動療法の基礎理論とは何か,パネルディスカッション)【日本行動療法学会大会発表論文集 (24), 52-53, 1998-11-26.】

という資料もヒットしたが、オンラインで閲覧できるかどうかは分からなかった。

 原典が読めていないのであくまで武藤(1999)からの孫引きになるが、Brown,Bryson-Brockmann,& Fox (1986) が指摘した点、
  1. 社会的スキルの援助をした研究結果によれば、直接的な社会的随伴性の操作は未介入の場面での般化効果を生み出すのに不十分である。
  2. 三項随伴性では理解できないような「活動の順序」や「使用可能な玩具の種類」などの変数は【1986年の時点で】行動分析家によってほとんど検討されてこなかった。
というのは、確かにその通りであると思う。

 このうち1.は、「般化と文脈」という点でいま【2020年】なお検討が続いている課題であると理解している。このことに関係しているかどうかは分からないが、「般化」については、つい最近にも、

井上雅彦先生(鳥取大学)×武藤崇(同志社大学)による対談:「般化と維持」から「実装の科学」へ

という対談が行われたと聞いている。
 また、2.については、私自身、かつて長崎大学医療短大に勤めていた頃、自閉症のお子さんの支援プログラムに参加させていただいたことがあったが、お子さんの中には、課題の順序をちょっと変えただけで急に不機嫌になることがあり、なぜそうなるのか困惑したことがあった。

 武藤(1999)では、概念分析の論文として、もう1つ、Carr & Smith (1995)の論文:

●Carr,E. G.,& Smith,C. E. (1995) Biological setting events for self-injury. Mental retardation and developmental disabilities.,1,94-98.

が紹介されていたが、この論文は出版社扱いで無料では閲覧できない。またまた武藤(1999)の孫引きになるが、タイトルの通り、Carr & Smith (1995)では生物学的な要因(月経、中耳炎、疲 労、アレルギー)が例に挙げられているという。
当該の問題行動は「文脈(セッティング事象+誘因(trigger)刺激)」によって影響され、さらにセッティング事象は自傷行動の結果(逃避、注意引き、物品)の価値を変化させることによって、先行刺激が自傷行動を誘発するだろう確率を変える。
というように、条件づけの原理を導入して、「予測と影響」の有効性を高めているように思われる。

 なお上記に限らないが、概念的分析に関する議論は引き続き活発に行われているいっぽう、支援の実践現場では、セッティング事象や「四項随伴性」の枠組みが、すんなりと受け入れられているところもあるようだ。実際、現場にかかわる人たちにとっては有用なツールになっているかもしれないし、セッティング自体の妥当性について思い込みや迷信行動が生じている場合もあるかもしれない。

不定期ながら次回に続く。