じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月14日0時35分配信のNHKオンラインニュースによれば、ギリシャとトルコが、東地中海に埋蔵されている天然ガスをめぐって対立し、双方が領有権を主張する海域に艦艇を派遣するなど緊張が高まっているという。
 ギリシャとトルコの関係は、日本と近隣諸国との関係以上に複雑で長い歴史があるようだ。写真上は、東トルコ・スメラ寺院で宗教行事を行うために集まってきたギリシャ人。ひっそりとギリシャ国旗が置かれていた。この東トルコ・バスツアーの運転手は、ギリシャからの出稼ぎであると聞いている。
 写真下2枚は、ギリシャのクルーズ船がトルコのクシャダスに寄港したところ。クルーズ船乗客は入国審査無しにエフェソス遺跡などを観光することができた。
 トルコ人やギリシャ人からは、日本と近隣国との政治的な対立などは歴史上のほんの些細な出来事にしか見えないかもしれない。


2020年8月13日(木)



【連載】新型コロナの感染の広がり方とPCR検査の問題(2)「暴露力」とは?

 昨日に続いて、

高橋泰教授が新型コロナをめぐる疑問に答える 暴露と感染の広がり方、PCR検査の問題を解説

の話題。

 リンク先1ページ目では、高橋泰教授の、
新型コロナウイルスについて、弱毒であり、日本人では暴露した人のうち98%が自然免疫で処理される
という仮説についてより詳しい説明があった。

 ここでいう「暴露力」というのは「人の体内に入り込むこと」であり、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスに比べると「暴露力」が強いとされている。であるならば「侵入力」でも良さそうな気もする。ネットで検索した限りは、「暴露力」という言葉が出てくるのは高橋泰教授関連記事ばかりで、果たして、「暴露力」という専門用語があるのかどうか分からない。

 私が理解している限りでは、ウイルスに感染するプロセス(感染力)としては、まず、ウイルス自体の「増殖力」があり、そのウイルスがどういう感染経路を介するか(一般向けに「空気感染」、「飛沫感染」などと言われているもの)が拡大する。しかし、新型コロナウイルスは、増殖力が弱く、また飛沫感染が主体であるため、この段階までのところでは「伝染力」はインフルエンザウイルスよりも弱いとされている。「暴露力が強い」というのは、そこから後の段階であり、例えば鼻や口などにインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスがそれぞれ100個到達した場合は、その先体内に入り込む確率は新型コロナウイルスのほうが高いということを意味しているように思われる。但し、そうであるならば、構成概念としての「暴露力」ではなく、直接その強さを比較できるような量的指標が必要であるようにも思う。

 高橋教授の仮説の重要なポイントは、
新型コロナに感染して細胞から排出されると、毒性も弱く増殖力も弱いので、当初は身体が自然免疫で対処可能な敵と判断し、98%程度は自然免疫で処理され、完治する。
という点にある。ここから言えることは、自然免疫だけで完治した人は、感染のある段階ではPCR陽性となるが、その後は陰性になる。但し、抗体は形成されないということであると理解した。別の記事に示されている「感染7段階モデル」では、これは2番目のステージということになる。

 高橋泰教授のモデルはこのことを前提に取り入れた上で、日本人の重症化率・死亡率が低い3つの要因を挙げておられる。この記事が公開された7月27日以降、日本では感染者数(PCR検査等の陽性者数)はかつてないほどに急増しているが、直近データ(8月13日19時47分集計)で、検査陽性者数は50622人であるのに対して、死亡者は1065人、現在患者数は13033人、対策病床使用率は31.5%となっていて、まだまだ医療崩壊までには余裕があるように見える。東京を中心にニュータイプが急拡大しているという説も出ているが、こちらの記事(8月5日配信)では、
東京型・埼玉型といった地域に起因する型(type)を認定するような根拠は得られていないし、ステレオタイプに定義のない型を使用して混乱を増長する危険性を感じている。また、新型コロナウイルスの塩基変異に伴う病原性の変化についての議論がしばしば見られる。一般論としては、ウイルスは病原性をさげて広く深くウイルス種を残していく適応・潜伏の方向に向かうと推定され、新型コロナウイルスの病原性の変化については単にゲノム情報を確定しただけでは判定できるものではなく、患者の臨床所見、個別ウイルス株の細胞生物学・感染実験等を総合的に考慮する必要があると考えている。
というように、混乱を増長することの懸念も指摘されているようだ。ま、これから先の見通しについては慎重であるべきだが、少なくとも7月までのデータに基づいて言えば、やはり、日本人は重症化しにくい、死亡率が低いということは、客観的に明らかであるように思われる。

 高橋泰教授は感染7段階モデルに基づいて、重症者や死亡者が少ない理由を以下のように説明しておられる。この内容は、前回の私の連載と同内容であり、
  1. 環境面。リスクの高い高齢者をウイルスから隔離する仕組みが高齢者施設で徹底し、高齢者一人ひとりの自主的な隔離も行われていた。もともとインフルエンザウイルスやノロウイルスへの対策が徹底していた。
  2. 自然免疫。欧米に比べて何らかの理由で強い。BCG説など有力な説がある。
  3. 体質。日本人は欧米人に比べるとサイトカイン・ストームの起きる率が低く、起きても血栓ができにくく、重症化しにくい。
となっていた【長谷川による一部改変、省略あり】。

 感染7段階モデルに基づいて、日本人と欧州人の死亡率は以下のように見積もることができる。
リスクの高い高齢者の暴露率を日本は欧州と比べ1/4、自然免疫力の差によりしっかりした症状が出てしまう発症率の差は欧州人の1/10、サイトカイン発生により死亡する可能性を欧州人の1/2.5とすると、4×10×2.5=100で日本の死亡率が欧州各国の約1/100という関係を説明できる。...
ここで1/100というのは事実として得られたデータである。但し、欧州各国の中でも死亡率には大きな差があるので、できれば各国別に数値を変えて分析してほしいところだ。またかけ算に使われている3つの数値はあくまで「3つの数字の設定はさまざまな情報から私が予測したものにすぎない」とされている。暴露率、自然免疫力の差、サイトカイン発生率について、何らかの独立した量的指標があれば、さらに説得力を増すし、今後の対策にも活かせるであろう。

 次回に続く。