じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ヘクソカズラの花。花自体は美しいが、植栽に絡まる迷惑植物のチャンピオン。

2020年7月10日(金)



【小さな話題】新型コロナは弱毒ウイルスに進化するか?

 ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、日本時間6月11日午前03時時点で、新型コロナウイルスの感染が確認された人は世界全体で1234万2043人、亡くなった人は55万6383人となった(7月11日04時23分NHK発信)。
 このうち、感染者の数は多い順に、
  • アメリカ:314万4472人
  • ブラジル:175万5779人
  • インド:79万3802人
  • ロシア:71万2863人
  • ペルー:31万6448人
などとなっている。また亡くなった人の数は、
  • アメリカ:13万3677人
  • ブラジル:6万9184人
  • イギリス:4万4735人
  • イタリア:3万4938人
  • メキシコ:3万3526人
になっているという。
 少し前までは、イギリスやイタリアなどの西欧地域が感染の中心になっていたが、最近はブラジル、インド、ペルー、メキシコといった、中南米や南アジア地域での感染拡大が目立つようになった。
 また、22時53分配信のNHKまとめによれば、7月10日の新たな感染者数は、東京都の243人をはじめとして全国で430人となっている。1日の感染者数が400人を超えるたのは4月24日以来であるという。

 しかしそのいっぽう、7月10日からはイベントの参加人数の上限を今の1000人から5000人に引き上げたり、プロ野球で観客を最大で5000人まで入れて試合が行われたり、さらに7月22日からは 国内旅行を35%割り引く「Go Toキャンペーン」観光分野が予定されていたり、というように、次々と緩和が次々と進められているように見える。

 さて、こうした中、新型コロナウイルスの変異に関心が向けられている。まずは、武漢を震源とした「アジア型」から、イタリアを震源として爆発的に感染拡大した「ヨーロッパ型」への変異である。また最近では南米エクアドルで、より強力なタイプが確認されたという。この「エクアドル型」では「ORH3b」が変異し、自然免疫システムで出動される警報物質を20分の1に抑えてしまう(今のところエクアドル国内限定だという)。

 こちらの連載でも何度か触れているように、ウイルスと人類は切磋琢磨しながら進化を続けてきた。しかし、だからといって、一方が他方を絶滅させるように進化するとは限らない。むしろ大枠では共生の関係を保っていると言われている。

 じっさい、今回の新型コロナウイルスも、強毒化ではなく弱毒化の方向に進化していくことは十分に考えられそうだ。仮に、従来型の新型コロナウイルスが、より重症化をもたらすSタイプと、無症状もしくは軽症で完治するWタイプの2種類に変異したとする。そうすると、Sタイプにかかった患者は、重症化ゆえに直ちに隔離・入院するため、他者に感染させるリスクは大幅に低下する。これに対してWタイプの感染者は、自覚症状が無いため、そのまま他者と接触したり、大規模イベントに足を運んだりするだろう。となると、ウイルスそのものの感染力は同程度であったとしても、Wタイプのほうが感染の機会が圧倒的に多いゆえに、圧倒的に拡大していく。同じ免疫システムによって、SタイプとWタイプが防げるのであれば、より多くの人がWタイプに感染したほうが結果としてSタイプの感染を防ぐこともあり得るかと思う(ある種のワクチン接種も、Wタイプへの感染と同じようなものだろう)。

 もっとも、上記の素人的仮説にはいくつか問題がある。

 まず、Wタイプへの免疫がSタイプにも有効かどうかという問題。インフルエンザの場合は、一度罹っても、別のタイプへの免疫とならないことがある。

 さらに問題となるのが、今回の新型コロナウイルスでは、軽症で終わるか、重症化するかというのは、ウイルスのタイプの違いではなく、人間側の免疫システムの働き方の違いによる可能性が高いという点である。6月7日の日記にも記したように、新型コロナウイルスによる重症化の多くは、サイトカインストームと呼ばれる免疫システムの暴走状態によってもたらされるという。であるとすると、重症化を防ぐ方法は、あくまで人間サイドの問題であって、ウイルス自体が弱毒化する方向に変異しようとしまいと関係なさそうになってくる。

 素人なりに考えると、エクアドルで発見されたという「警報物質を20分の1に抑えてしまうようなウイルス」であれば、サイトカインストームも起こしにくいように思える。ならば、サイトカインストームで重症化している患者さんに、エクアドル型のウイルスを大量に注入して再感染を起こせば、血管の炎症や凝固が治りそうにも思えるが、こういう逆転の発想が成功するのは映画かドラマの世界だけだろうか(←エクアドルの新型とサイトカインストームは、自然免疫と獲得免疫それぞれの違うレベルでの話のようである。)

 なお、最近、山中先生登場の関連番組もいくつか放送されており、私の理解できる範囲で少しずつ感想・考察を述べさせていただく予定である。