じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 津山線沿いのセイヨウカラシナ。2015年の写真がこちらにあり。
 セイヨウアブラナに似ているが、セイヨウアブラナの場合は、花が固まって咲いていることと、葉の基部が耳形になり茎を抱いているという特徴があり、簡単に見分けることができる。

2020年4月3日(金)



【小さな話題】新型コロナウイルスを巡るもっともらしい仮説

 新型コロナウイルスの感染をめぐって、感染症の専門家ばかりでなく、生物学、経済学、統計学などの専門家、さらには全くの素人などから、もっともらしい仮説が提唱されている。耳を傾ける価値のありそうなものがあるいっぽう、サンプリングの偏りを反映したものもあるように思う。

 まずは、トレジャーDNAと重症化との関係。昨年5月頃、山中伸弥先生とタモリさんによる、遺伝子の最新研究と心理学の将来という話題を取り上げたことがあるが、個人レベルでは、病気にならない特別なDNAと長寿遺伝子で取り上げたように、HIVに感染しても発症しない人たちもおられる。ヘビースモーカーの中にもごく稀に、肺のダメージを修復する力を持った人がいるという話を聞いたこともある。


 今回の新型コロナウイルスの場合も、おそらく、感染すると重症化しやすい人とそうでない人がいるはずだ。事前に個々人のDNAを解析しておけば、重症化しやすいタイプの人を優先的に入院させることができるので犠牲者を減らすことができるはずだ。

 上記は個人レベルの話だが、人種や民族、あるいは1つの民族の中でも祖先の違いによって、重症化しやすいタイプとそうでないタイプがあるという話もある。確か、池田清彦先生の話だったと思うが、SARSの場合は、HLA型がHLA-B4601、HLA-B5401(中国南部、香港、台湾に多い)に感染しやすく、特にHLA-B4601は重症化するといった研究があるという。新型コロナウイルスの場合も、こうしたタイプが分かれば、上記と同様、重症化しやすいタイプの人を優先的に入院させることができる。

 遺伝子にかかわる個人情報は、扱いを間違えると差別や偏見に繋がる恐れがあり、きわめて慎重に扱う必要があるが、今回のような深刻な事態が起こった時には有効な防疫、治療情報につながると思う。

 さて、もう1つ、最近、なるほどそうかもしれないなあと思う仮説が、「BCG仮説」である。池田センセイ【←上掲の池田清彦センセイではなく、池田信夫センセイ】のブログを拝見すると、疫学的な状況証拠は十分ありそうに思ってしまう。じっさい、
  • BCG接種を義務づけている、日本、中国(武漢を除く)、韓国(大邱を除く)、ロシア、インド、ASEAN諸国、中南米(エクアドルを除く)などは、例外なく新型コロナウイルスの死亡率が低い。
  • BCGを義務づけていないイタリアやアメリカなどの死者は恐るべき数にのぼっている。
  • BCGの義務化をやめた国(スペインなど)も死者が恐るべき数にのぼっている。
 また興味深いのは、ドイツの中で、日本型のBCGを義務づけていた旧東ドイツ地域では感染率が低いというデータもあるという。

 例外的に、BCGを義務づけていたにもかかわらず死者が多い国としてはイランがあるが、池田センセイは、イランのBCG株は日本型のBCG株とは異なると指摘しておられた。この議論は、さらに、ロックダウンよりBCG接種の試験をという御主張に繋がっている。

 なお、BCGは、私の世代では、ツベルクリン検査で陰性となった場合に限り接種されていた。ウィキペディアの該当項目によれば、私の世代では、幼児期、小学生、中学生の3回の接種があったが、私はたいがい擬陽性であり、そのうち陽性になったため、小学生以降の接種は受けていないと記憶している。BCGの接種回数や接種方法は世代により異なっており、日本で新型コロナウイルスの死者が少ないことをBCG義務化だけで説明するのは無理があるだろう。むしろ、今のところは、高度な医療技術と入院者抑制がうまく機能しているように思われる。

 全くの素人の私には「BCG仮説」がどの程度正しいのかはさっぱり分からない。最終的には病理学レベルで有効性を検証する必要があるとは思うが【こちらにまとめの情報あり】、BCG自体は安全性が確認されていることから、ダメ元で大量接種を進めても良さそうな気もする。