じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 岡大構内では、理学部南のソメイヨシノが満開になっているほか、文学部中庭のソメイヨシノの開花も確認された【3月24日の楽天版参照】

 写真は文学部西出入口前の八重咲きの花桃。例年、3月25日に卒業を祝福していたが、今年は新型コロナウイルスの感染防止のため卒業式が行われず、ひっそりと開花している。

2020年3月24日(火)



【小さな話題】岡山県内初感染の女性はスペイン旅行

 新型コロナウイルスの感染が広がっているなか、3月22日、岡山県でもついに初の感染者が確認された。このニュースはかなり注目されており、3月23日の夕刻には、NHKオンラインニュースのアクセスランキングで、

県内初感染の女性はスペイン旅行

という記事がトップになるほどであった。

 新型コロナウイルスの感染者数は国内で1140人(クルーズ船除く)にのぼっており【2020年3月23日 23時47分、NHKまとめ】、感染者の多い北海道、首都圏、愛知、京阪神あたりでは1名の感染者が出ても数字が1つ増える程度でニュースにもならないと思われるが、県内初感染ということと、ニュースのタイトルに「スペイン旅行」が含まれていたために注目を集めたようであった。

 リンク先の記事には、
岡山市によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは市内に住む60代の女性で、長女と2人で今月9日から15日まで旅行でスペインを訪れていたということです。
成田空港から新幹線などを利用して、岡山市内の自宅に帰宅してから発熱やのどの痛みが出たため、17日と21日「帰国者・接触者外来」に指定されている医療機関を受診し、医師の判断でウイルス検査を行ったところ、22日、陽性と判明しました。
女性の症状は軽く、22日までは外出を控えて自宅で静養していたということです。 市は、一緒に旅行していた40代の長女と同居している60代の夫、それに早島町に住む30代の長男について、いずれも濃厚接触している可能性があるとして23日、ウイルス検査を行うことにしています。
と記されており、ご家族への感染のほか、成田空港から新幹線東京駅までの移動、東京駅から岡山駅まで、さらに岡山駅からご自宅までの移動の間に感染が起こっていないかどうかが懸念される。

 このニュースで1つ気になったのは、3月9日から15日までのスペイン旅行をなぜ思いとどまることができなかったのかという点である。

 外務省の海外安全ホームページで確認したところ【こちら参照】、3月9日時点では
●3月9日15時現在,スペイン全土で確認された新型コロナウイルス感染者数は累計で999人。
●常に最新の情報を収集するとともに,手洗い・咳エチケット等の励行など,新型コロナウイルス感染予防策の徹底をお願いいたします。
●日本の外務省は,スペイン等に対する感染症危険情報(レベル1:十分注意してください)等を発出しました。
となっていて、この時点ではまだ旅行を断念するほどの深刻な状況ではなかった可能性はある。いっぽう、旅行の最終日の前日の3月14日(出国されたと推定される日)には、スペイン国内の感染者数は5753人に増加し、3月13日、ペドロ・サンチェス首相は15日間の「非常事態宣言」を発出し、3月14日午前0時より発効した。また2020年03月15日 00:01時点で、
●日本の外務省は,スペインのマドリード州,バスク州及びラ・リオハ州に対する感染症危険情報をレベル2(不要不急の渡航は止めてください)に引き上げました。その他の州はレベル1(十分注意してください)を継続しています。
というように、危険レベルの引き上げが行われた。

 スペインの直近の感染者数は3万3089人【中国、イタリア、アメリカに次いで世界で第4位】、死者は2182人【イタリア、中国に次いで世界で第3位】となっているが(2020年3月24日 6時07分、NHK調べ)、ま、好意的に見れば、ご旅行出発時点ではそのような事態は想定されず、直近で出発を中止した場合は多額のキャンセル料を徴収される可能性があったように思われる。
 もっとも、ご旅行中にはスペイン国内での変化は刻々と伝わってきていたはずで、ご帰国時点では、症状が出ていなくても万が一の感染を自覚し、公共交通機関を利用しないという手段を選ぶこともできたとは思う【といっても、ご自宅が岡山にある場合、成田から岡山までどうやって移動するのか、という問題はある】。

 ところで、この「初感染」は岡大関係者の間でも深刻に受け止められており、23日に岡大構内でたまたま出会った知人(複数)からもより詳しい情報を伝え聞くことができた。上掲のように、公式のニュースでは感染者の年代や旅行先、家族構成が伝えられているだけであるが、個人間のSNS情報ではすでに、感染者や家族の職業や勤務先などの詳細情報が拡散しているとのことであった。この種の情報は、いつどこで感染が起こっているのかを少しでも知りたいという聞き手のニーズを満たすものであり、話し手のほうも公共的利益に資すると考えて発信するため、あっという間に拡散してしまう。個人情報保護という点からみて望ましくないことは確かであり、また、事実と異なる情報までもが尾ひれのようについて行く恐れがある。

 中国では防犯カメラを通じて感染者や自宅待機者の行動が監視されていると聞く。日本ではそこまでの監視体制は取られていないが、その代わりに「衆人環視」や同調圧力、他人から悪く思われることを避ける戦略(Not-Offend-Others Strategy、こちらの論文参照)が強く働いており、その一般的な功罪は別として、今回の新型コロナウイルス感染拡大を抑止する力として一役買っていることは間違い無い。