じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、ネット上で「マスクの材料に紙が回される」とか「原材料が中国から輸入できなくなる」といった誤った情報が流れているという。東京ではトイレットペーパーを求めて行列ができている店もあると聞く。
 散歩のついでに近隣のドラグストアを覗いてみたところ、2月28日の夕刻の時点では棚いっぱいであった商品が、29日夕刻には写真の通りほぼ空っぽになっていた。残っているのは高額商品のみ。トイレットペーパー騒動は、オイルショックの頃にもあった。あの時は物価がどんどん上がっていたので、買いだめすることにはそれなりのメリットがあった。しかし今回、こうしたデマがなぜ広がったのかはさっぱり分からない。オイルショック時とは逆に原油価格は下がりつつあるし、為替レートも少し前の111円近辺から108円近辺に円高となっているので、紙製品の価格はむしろ値下がりしていくのではないかと思われるのだが、まことに不思議である。誰がそんなデマに惑わされるものかと思ったが、その我が家でも某家族からさっそく「散歩に行くならトイレットペーパー買ってきてちょうだい」と言われたところであり、SNSの影響の大きさを痛感した。

2020年3月1日(日)



【小さな話題】灼熱の大地 塩の民〜エチオピア ダナキル砂漠〜

 2月29日にNHK-BSプレミアムで2

極限生活「灼熱の大地 塩の民〜エチオピア ダナキル砂漠〜」

という番組が放送されていた。【こちらに追加資料あり。】

 ダナキル砂漠は2010年〜11年の年末年始に訪れたことがあり、その写真はこちらに掲載していたが、ソニーの「Life-X (ライフ・エックス) 」のサービス終了により、一部が自動的に削除されてしまっていた。今回、この放送に合わせて、フォートラベルのほうに、

ダナキル砂漠:塩のキャラバン

という旅行記を投稿したところである。それ以外のエリアについても時間があれば、旧「Life-X (ライフ・エックス) 」で削除された写真をフォートラベルのほうに移し替えたいと思っている。

 今回の放送を視ると、塩の採掘、成型、そしてラクダのキャラバンによる運搬は、10年前と全く変わらずに続いているようであった。テント泊したアハメッド・エラという集落の風景も、村の人たちが使っている井戸も、10年前と全く変わらない様子であった。

 しかし、まさに番組で取り上げていたように、そこに住む人たちの生活は、いま、トラックによる大量輸送によって、さらには重機による大量採掘が計画されていることによって、大きく脅かされているということであった。

 塩の採掘は、まず「ホコロ」と呼ばれる塩掘り職人によって岩版状に切り出され、次に「ハデリ」と呼ばれる塩削り職人によってラクダに積みやすいように30×20×5cmの直方体に成型される。それらは「アホロ」と呼ばれる商人によってラクダに積み込まれ、50km離れたブラハレという町まで2泊3日で運ばれる。この営みは2000年も繰り返されてきたという。

 番組で紹介されていたキャラバンは1回に136枚の岩版が運ばれ、ブラハレでは合計12000円で買い取られた。また塩削り職人ハデリの一人シャフィは3000円を受け取っていた。別のシーンでは、1枚35円という数字も紹介されていた。

 こうした長年にわたる分業化のなかで、人々は仕事に誇りを持ち、苛酷ではあるがそれなりの生活を維持してきたのだが、2年前から、トラックによる岩塩の運搬が行われるようになってきた。1台のトラックに積めるのはおよそ2000枚、ラクダ100頭分。しかもラクダのキャラバンで3日かかるところを1時間で運んでしまう。それによりラクダ隊の仕事は半減したという。また、トラックで運ぶ際には、岩版をきっちりと成型する必要はないし割れても製塩には影響しない。いずれ機械による採掘が行われるようになれば、分業で生活を維持してきた、ホコロ、ハデリ、アホロたちはすべて仕事を奪われることになり、私たちがテント泊させてもらったアハメッド・エラも消滅することになる。

 このことについては2011年1月4日の日記でも考えを述べたことがあったが、当時はまだ、トラックによる運搬や重機による採掘という話は聞いていなかった。現地の人々の将来が気になるところであるが、もはや、ダナキル砂漠:塩のキャラバンの写真にあるような果てしなく続くラクダの隊列は見られなくなるのかもしれない。

 こういう問題は、機械と人間との関係、働きがいの根源、仕事に対する誇りや情熱といったさまざまな面から考えていく必要がある。

 なお、2010年の旅行の目的の1つは溶岩湖で知られるエルタ・アレ火山に登ることにあった。しかし、今年の正月に旅行されたこちらの方の旅行記によれば、2018年頃の地殻変動の影響で、現在は溶岩がずいぶん下のほうへ下がってしまい、溶岩湖は見学できなくなっているとのこと。このこともあって、辺境旅行を取り扱っている旅行会社のツアー募集広告でも、エルタアレの溶岩湖の写真はカットされ、溶岩湖ではなく、カラフルな硫黄泉を目玉にしたツアーに切り替える傾向が見受けられる。