じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 2月12日の午後から、低気圧の通過にともない気温が上がり、13日の朝にかけて一晩中10℃以上という暖かい夜になった。さっそく、室内にあったパフィオペディルムの鉢を玄関先に移す。いましばらく暖かい状態が続く予想となっており、数日間は出しっぱなしにできそう。

2020年2月13日(木)



【連載】シロアリのスゴいところ(その1)

 2月2日放送のNHK「サイエンスZERO」で、

世界最多!スーパー長寿!ミラクル昆虫 驚きの生態

という話題を取り上げていた。地球上で最も数が多く、最も長生きする昆虫は何か?と言われてもすぐには答えが浮かばないが、正解はシロアリであるという。シロアリの数は世界で24京匹で、普通のアリの1京匹を遙かに上回っている。また寿命は、王様アリが50年以上、女王アリが25年以上、兵隊アリはおよそ10年、働きアリはおよそ5年などとなっている。また後述するように、女王アリは自分の分身(クローン)を作ることができるので、コロニーが全滅しない限りは不滅であるというから驚きだ。

 アリの生態については、以前、

又吉直樹のヘウレーカ:アリ社会の分業と「利他」性

という話題を取り上げたことがあるが、ウィキペディアに、
体の大きさや巨大な群れを作る社会性昆虫であることなど、アリとの共通点が多いが、アリとシロアリは全く異なった昆虫である。アリはハチ目(膜翅目)の一員で完全変態を行う昆虫であり、幼虫は蛆のような形態をしている。一方、シロアリはゴキブリ目(網翅目)に属する不完全変態の昆虫である。シロアリでは幼虫も成虫によく似た形態をしている。

社会の仕組みについて、アリは雌中心で女王と不妊の雌である働きアリ(職アリ)で構成され、雄アリは一時的にしか生じないのに対し、シロアリでは生殖虫(女王・王)、働きアリ(擬職アリ)、兵アリ(兵隊アリ)などの階級それぞれに雌雄が含まれている。
と記されているように、アリは蜂の仲間、シロアリはゴキブリの仲間であるという。ちなみに英語では、"white ants"とも呼ばれることもあるが、「termite」が正式呼称らしい。中国語は「白蟻」。ロシア語は「Термиты」で英語と同じ語源。

 ではどんなところがスゴいのか?

 まずは、「女王アリは死なない」。女王アリは、王の遺伝子が入っていないで卵を単独で産むこともできる。女王が死ねば今度は分身が女王となるが、王の遺伝子が入っていないので近親相姦による遺伝子の劣化は起こらない(この発見者は、今回の番組に登場されたM先生であるという。) この「分身」は巣の中に600匹を超えることがあるという。

なお、このことから分かるように、女王アリは不滅だが、王様アリを産むことはできない。それゆえ、王をとにかく長生きさせようというように進化してきた。

 ここまでのところで、王や女王を長生きさせることが種の存続繁栄に都合がよいということは分かったが、都合がいいということと、どうして長生きできるのかということは別次元の話である。番組によれば、彼らが長生きできるのは、
  • 王や女王は巣の奥の低酸素部屋に棲んでおり、細胞を傷つける活性酸素の発生を抑え、長寿にとって有利な環境を作っている。【呼吸を活発にしてアクティブに振る舞うということと寿命を延ばすということは普通は相反する方向】。
  • 王は、木を消化することができない。働きアリが唾液腺で生成し吐き戻して口移しで提供される特殊な食べ物で生活している。この食べ物の成分には人間の健康長寿にも役立ちそうな成分が含まれているが、特許の関係で現時点ではヒミツということであった。
 ここからは私の感想になるが、まず、王とか女王という呼称が果たして適切なものかどうかは考え直す必要があるように思った。これらは人間の制度に喩えたものだが、王や女王は別段、働きアリや兵隊アリに忠誠を誓わせて酷使しているわけではない。というか、働きアリや兵隊アリはすべて、自分たちの子どもであり、王様アリは「父親アリ」、女王アリは「母親アリ」と言い換えても矛盾は生じない。いっぽう、シロアリのコロニー全体を超個体と見なすこともできそうだ。人間の体を構成するさまざまな細胞、エキソソーム、さらには腸内細菌などの全体を1つのコロニーと見なせば、人間も超個体と言えないことはない。

 次回に続く。