じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1998年に岡山県北部を襲った台風10号で、同県津山市の牧場から約90キロ離れた瀬戸内海の島まで流されながら奇跡的に生還し、「おかやまファーマーズマーケット・ノースヴィレッジ」で「奇跡の牛」と親しまれていた雄牛の「元気くん」が1月14日、老衰のため21歳で死亡。人間に換算すると105歳の長寿に相当するという。2月8日、そのお別れ会が開催され、ローカルニュースで取り上げられていた。【こちらこちらに関連記事あり。】
 ノースヴィレッジは2007年7月に訪れたことがあり、その際に、柵越しに元気くんを見ることができた。まだ存命であったにもかかわらずすでに「元気くん神社」が建立されており、柏手を打つと神棚から元気くんの人形が登場してモーと鳴く仕掛けになっていた。濁流に巻き込まれながらも諦めずに生き延びた元気くんに文字通り元気づけられた人々は数知れないと言われている。これからも語り継がれていくことだろう。

2020年2月9日(日)



【小さな話題】社会参加を支援する「分身ロボット」

 2月9日朝のNHK「目撃!にっぽん」で、

目撃!にっぽん「ひとりではたどりつけない世界へ〜分身ロボットと歩む日々〜」

という話題を取り上げていた。

 分身ロボットというと、少し前のNHK「くらし☆解説」(2019年11月5日放送で、

「人生100年を支えるデジタルツイン『もう一人の自分』

という話題が紹介されており、今回も似たような内容かと思っていたが、全く別物であった。「もう一人の自分」というのはAIの技術を活用して自分のコピーのような話し相手、代理人を作ってしまうという話。いっぽう今回の分身ロボットのほうはAIではなくて、障がいや病気で外の世界とのつながりを持てなかった人たちが、遠隔操作の技術を使って、デパートの売り場やカフェで接客の仕事をするという内容であった。

 このロボットを開発したのはオリィ研究所吉藤健太朗さん。リンク先に記されているように吉藤さんは小学校5年生から中学校2年生までの3年半、不登校を経験、早稲田大学創造理工学部在学中に遠隔で操作できる人型分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発し、オリィ研究所を設立した。2012年の「人間力大賞」で準グランプリ、衆議院議長奨励賞、総務大臣奨励賞を受賞している。

 ロボットというとこれまで、人間の代わりをするものという印象が強かった。例えば、介護ロボットは、介護士に代わって要介護者をサポートする。人手不足や介護疲れを補うという点では大きな役割を果たすと期待されるいっぽう、ロボット化が進めば進むほど、人と人との繋がりは希薄になってしまう恐れがある。

 いっぽう、今回紹介されていた分身ロボットは、寝たきり状態にある障がい者の社会参加を支援するものであり、人と人との交流の機会を増やす効果がある。番組ではこのほか、分身ロボットを活用した体験で自信を持った障がい者が、仲間たちと作ったゲーム作品をコミックマーケットに出品し、分身ロボットで呼び込みをしたり【こちらに関連記事あり】や、分身ロボットを通じて自力でお金を稼ぐことの喜び、大学で講師をするシーンなどが紹介された。

 いまの時代、テレビ電話(動画の相互配信)的な交流であればスマホだけでも可能となっているが、実際に現場で動き回り、その場の状況を踏まえて会話をしたり、説明をするということになると、やはり、その現場で移動可能なロボットが必要となる。例えば、美術館で観覧者と一緒に歩きながら作品の説明をしたり質問に答えたりするというのは、出来合いの音声ガイドではできない。加齢が進んで私が寝たきりになった場合、接客にはあまり興味は持てないが、分身ロボットを使って植物園や動物園、京都の庭園、さらにドローンのような浮遊型のロボットが簡単に操縦できるようになればトレッキングのガイドなどを務めさせていただければありがたいところだ。

 何はともあれ、生身の人間を排除するロボットではなく、社会参加を支援するロボットという発想には大いに共鳴できる。