じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



07月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 半田山植物園で見かけたヘビウリの花と、とぐろを巻いている実。大きくなった時の形はこちらにあり。受粉から実が熟すまでずっと、ヘビの形にそっくりなところが興味深い。


2019年7月07日(日)



【連載】

チコちゃんに叱られる!「きょうだいと親族呼称」

 7月5日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」の話題。今回は、
  1. なんでお兄ちゃん、お姉ちゃんとは呼ぶのに弟ちゃん、妹ちゃんとは呼ばないの?
  2. 魚の赤身と白身は、なぜ色が違う?
  3. 「2番目に大きい都道府県は?」
  4. なぜ松竹梅は縁起がいい?
という4つの疑問が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 年上のきょうだいは「兄ちゃん」、「姉ちゃん」と呼ぶのに、当人から見て年下のきょうだいは名前で呼ぶという習慣については、言われてみればその通りだが、深く考えたことは無かった。

 番組によれば、これは

●日本では目上の家族に対しては親族呼称を使う

という習慣が今でも残っていることによるという。もっとも、この習慣を厳密に適用すると、例えばサザエさんの一家では、
  • サザエさんは、磯野舟を「お母さん」と呼ぶ
  • フグ田タラオは、サザエさんを「お母さん」と呼ぶ
となって、同じ家の中で「お母さん」と呼ばれる女性が2人出てきて紛らわしくなる。そこで、混乱を避けるという利便性から、全員が磯野舟を「おばあさん(おばあちゃん)」と呼ぶようになる【=家族の呼び名は一番下の子を基準に決まる】というような説明であった【実際のアニメでそのように呼ばれているかどうかは未確認】。

 この話題で驚いたのは、言語学の長老、論客として知られる鈴木孝夫先生が解説者として登場されたことであった。鈴木孝夫先生と言えば、私自身、『日本人はなぜ英語ができないか』、『英語はいらない!?』などの御著書を拝読したことがあり、拙著でも引用させていただいたことがあったが、お姿を拝見したのは今回が初めてであった。

 「家族の呼び名は一番下の子を基準に決まる」という「原理」は、同居家族の中では通用するが、ふだんは別居していて時たま会うような家族間では必ずしも成り立たないように思う。私の場合、息子や娘からは「お父さん」と呼ばれており、孫たちと過ごす時に限って、孫の前で「じいじい」と呼ばれている。ちなみに妻は「ばあばあ」と呼ばれるのを嫌がり孫には「○○ちゃん【○○は妻の名前】」と呼ばせているようだが、これって孫たちが成長した時に混乱を招くのではないだろうか。

 あと、番組では全く取り上げられていなかったが、「年上の家族を親族呼称で呼ぶ」という習慣が他の国・民族でどの程度使われているのかも紹介してほしかった。少なくともアメリカでは、そうした習慣は無く、親のことは「Dad」、「Mammy」などと呼ぶものの、きょうだい間は名前で呼び合っていたと思う。

 少し脱線するが、7月の始め頃、中日ドラゴンズの応援歌で

●お前が打たなきゃ誰が打つ

というフレーズのについて与田監督が「『お前』という言葉を子どもたちが歌うのは、教育上良くないのではないか」というような発言をしたことがネット上で炎上をもたらしたという【詳細は未確認】。デジタル大辞泉で検索すると「お前」は、
[代]《古くは目上の人に対して用いたが、近世末期からしだいに同輩以下に用いるようになった》二人称の人代名詞。
1 親しい相手に対して、または同輩以下をやや見下して呼ぶ語。「お前とおれの仲じゃあないか」
2 近世前期まで男女ともに目上の人に用いた敬称。あなたさま。
となっていて、使われ方には歴史的変遷があるようだ。これは「貴様」も同様である。いっぽう英語の「You」は、目上の人に対しても、敵国の捕虜に対しても使われる中性的な2人称になっている。こうした使われ方の違いは、幼少時の視点取り(perspective taking)の学習にも影響を及ぼすであろう。日本人はそうした学習環境の中で、かなり早い時期から、年上・年下といった年齢差や、社会的文脈とセットにしながら2人称に関する多様な範例に晒されているのである。

 次回に続く。