じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 7月4日の午後、東に向かうドクターイエロー(のぞみ上り検測)を目撃した。梅雨時の曇り空のため、かえって逆光にならずに輝いて見えた。


2019年7月04日(木)



【連載】

行動分析学用語(第3期分)についての隠居人的独り言(5)「強化子」と「弱化子」(3)

 行動分析学用語(第3期分)の話題から少々脱線するが、昨日に続いて、強化子(好子)、弱化子(嫌子)について、これを機会に私なりの考えを述べておきたいと思う。

 まず、昨日も述べたように、強化子(好子)や弱化子(嫌子)は、特定の刺激事象を意味するものではなく、特定の文脈における当該の刺激事象の機能として理解する必要がある点を強調しておきたい。

 要するに、強化スケジュールに関する実験研究のように、適当に選ばれた強化子(好子)を用いて明らかにされた諸法則は、別の強化子(好子)を用いた強化スケジュールにおける行動にも適用できるということである。これは応用行動分析についても言える。例えばシェイピングや分化強化の手続の有効性は、何が強化子(好子)であるのかによって影響されにくい。このようにして、強化子(好子)や弱化子(嫌子)という一般概念のもとで、強化・弱化の理論を体系化することができる。

 しかし、昨日も述べたように、特定の刺激事象が強化子(好子)になるか、弱化子(嫌子)になるか、もしくは何の影響も及ぼさない中性的な刺激にとどまるのか、ということは個人個人で異なるし、同じ個人にあっても文脈によって異なることがある。応用場面で、何らかの行動を強化するような場合は、当初、強化子(好子)として導入された刺激事象が強化機能を維持し続けているのかどうか、常に点検する必要がある。




 以上に関連するが、

●「刺激が○○機能を有する」というのは機能主義特有の表現であって、その刺激自体の中に当該機能の化学成分が含まれているというような意味では決してない。

という点についても補足しておく。

 「生活体は外界との関わりによって行動を変える」という考えは徹底的行動主義の基本的なスタンス」と言える。その際、外界がどのような形で影響を与えているのかを明確に示すのが「機能」という考え方である。「この刺激事象は強化機能を有する」と表現すると、「刺激事象」という宇宙人に手が伸びていて「強化機能」という道具を持っているような印象を受けるが、本当のところは、単に、「当該の刺激事象が○○という効果を及ぼしている」と言っているだけで、それ以上でもそれ以下でもない。

 これに対して、認知心理学的アプローチの中には、行動の原因(変化、変容、持続等の原因)を、生活体側の内部要因に帰属する理論もある。例えば、動機づけ理論の1つ、自己決定理論で「欲求」、「義務感」、「必要性」、「目的」、「やりがい、楽しさ」といった概念で人間行動の原因を説明しようとしている。こうしたアプローチを一概に否定するつもりは毛頭ないが、これらは、行動分析学的には、
  • 確立操作(動機づけ操作)に関わる部分
  • 強化による部分
  • ルール支配行動として説明できる部分
というように再構成できる。動機づけ理論と、行動分析学の理論のどちらが正しいかということは、議論したところであまり意味は無い。どちらがどれだけ有用であるのか、としか言いようがない。

 次回に続く。