じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 文学部中庭のアマリリス。岡大西門・西側花壇のアマリリスと同種であり、分球で殖えたものだが、西側花壇より日当たりが悪いせいか、開花が一週間ほど遅くなっている。
 アマリリスは地植えのままの冬越しは難しいと思っていたが、今年は暖冬だったせいか開花率はきわめて良好。


2019年6月02日(日)



【連載】

世界禁煙デー協賛企画(5)吸い殻ポイ捨てをどう防ぐか?

 昨日の続き。

 喫煙がもたらす弊害としては、受動喫煙被害、喫煙者自身の健康被害、薬物依存とは別に、「吸い殻のポイ捨て」という重大問題がある。

 ポイ捨ては、環境美化を損ねるばかりでなく、火災の原因にもなる。じっさい、岡大構内においても、過去に吸い殻の投げ捨てが原因とみられるボヤが発生したことがある。2019年4月16日にパリで起こったノートルダム大聖堂の火災においても、エレベーター1基に使われた電気回路のショートが原因であるとされる一方、禁煙とされていた火災発生現場からタバコ7本の吸い殻が見つかっており、2019年6月時点ではタバコ原因説は完全に否定されたわけではないし、火災の原因ではなかったとしても、そもそも世界遺産の改修工事の現場で、禁煙を無視して喫煙をしていたこと自体、犯罪行為であったと言わざるを得ない。

 では、どうすればよいのか? その前に、まず、「喫煙行動」と「喫煙後行動」(「後始末行動」、「ポイ捨て行動」)を分けておく必要がある。

 ここでいう「喫煙行動」というのはタバコに火をつけて喫煙する行動のことをいう。じつは、この段階でも、タバコの灰を枯れ草の上にまき散らしたり、運転中、車の窓の外に灰を落としたり、といった犯罪的行為が含まれる場合があるのだが、議論がわかりにくくなるため今回はこれ以上は言及しない。

 いっぽう「喫煙後行動」とは、喫煙後の後始末にかかわる行動である。このうち、「後始末行動」とは、タバコの火をちゃんと消して、吸い殻を喫煙場所の灰皿、もしくは携行しているポケット灰皿等に収納することを意味する。「ポイ捨て行動」とは、吸い殻を路上や空地に放り投げる行動であり、靴底で火をもみ消す場合もあれば、火の付いたまま放り投げる場合もあるが、ゴミを投げ散らかすという点で犯罪行為であることに変わりない。

 「喫煙行動」と「喫煙後行動」は、本来独立した行動である。もちろん、喫煙しなければ「喫煙後行動」は起こりようがないが、喫煙したすべての人が吸い殻をポイ捨てしているわけではない。大学敷地内を全面禁煙化しようという議論が始まると「大学構内を禁煙にすると、周辺の路上での吸い殻ポイ捨てが増えて、周辺住民に迷惑がかかる」という反論が出てくるが、これは、「喫煙行動」と「喫煙後行動」をごっちゃにした主張である。(敷地内禁煙化後にはすべての構成員が禁煙を守ることが最善であるが)全面禁煙実施後にもどうしてもタバコを止められない人がいたとしても、ポケット灰皿を携行していれば吸い殻のポイ捨て問題は起こるはずがない。要するに、禁煙化が原因でポイ捨てが増えるのではなく、喫煙者がしっかりと吸い殻の後始末をできないことが問題なのである。

 では、どうすればポイ捨てを無くすことができるのか? よく言われるのは「モラル向上」であるが、そのような抽象的なスローガンを掲げただけでは問題は到底解決しない。であるからこそ、喫煙擁護派は「モラル向上」に問題をすり替えて、禁煙化を先延ばししようと企むのである。

 より有効な方策は、問題行動を洗い出した上で、強化もしくは弱化の随伴性を制度化することである。このWeb日記でも何度か書いたことがあるが、基本は、
  1. 「ポイ捨て行動」の弱化。→厳罰により対処。
  2. 「後始末行動」の強化。しっかり後始末すると得をするような仕組をつくる。
という2点に尽きるように思う。

 このうち、ポイ捨ての厳罰化としては、まず、防犯カメラや通行人の監視を通じて、ポイ捨て行動を摘発し、1本につき罰金1万円というような厳罰を科すことが考えられる。投げ捨てられた吸い殻のDNA解析し犯人を特定すればより確実であろう。

 このほか、すべての紙巻きタバコのフィルター部分に固有のシリアルナンバーを付しておき、そのいっぽう、taspoに個人IDと購入者情報を登録しておき、タバコ購入時に、誰がそのタバコを買ったのかを対応づけるようにしておく。その上で、路上で吸い殻が発見された場合には、そのフィルターのシリアルナンバーから購入者を特定し、吸い殻1本につき1万円の罰金を科すようにすれば確実にポイ捨ては減るはずだ。

 上記の場合、シリアルナンバー部分をわざわざ切り取ってからポイ捨てする喫煙者も出てくるかもしれないが、指先では簡単には破壊できないようなICタグとか、破れにくい繊維にバーコードを打ち込んでおくというようにすれば、いくらなんでもそれらを無効化する手間をかけてからポイ捨てするようなことはなかろう(そのような手間をかけるぐらいならちゃんと後始末したほうが楽)。

 次に2.の「後始末行動」の強化であるが、これにはデポジット制が有効であろうと思う。例えば、タバコ購入時には、1本あたり100円程度の預かり金を上乗せしておく。喫煙者がタバコ販売店に吸い殻を持参すると、預かり金が返金されるという仕組である。

 上記のデポジット制では、路上に捨てられた吸い殻を拾い集めて持ち込んだ場合にも同じように返金できるようにしておけば街中の美化にもつながるだろう。

 このデポジット制では、タバコ販売店の手間が増えるという問題、具体的には、返金が正しく行われたのか、回収された吸い殻をどう処理するかといった問題が生じると思われるが、基本的な経費はタバコ代金に上乗せすればよい。これは一般消費者がレジ袋代金を負担するのと同じ発想である。また、もしタバコ販売店がそんなに手間のかかることはイヤだと言うならタバコの販売を止めればそれで済むことである。

 以上述べたうちの2.はかなりの有効性が期待できるが、現実に導入される見込みはあまりなさそうである。

 なぜなら、まず、そもそも喫煙行為がゼロとなれば、ポイ捨てのような犯罪行為は決して派生しない。であるからして、ポイ捨て摘発を重視するよりは、禁煙推進にエネルギーを注いだほうがよいと考えられるからである。

 もう1つ、タバコ販売業者の立場からみれば、デポジット制を実施したところで売り上げが増える見込みは全くない。喫煙率がますます低下する中で、儲かる見込みのないことにお金をつぎこむというような対策はビジネスモデルにならないと思われるからである。



 次回に続く。