じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 散歩道沿いで見かけたカルガモ。岡山市内の用水路でたまに見かける。又吉直樹のヘウレーカ!「ホントに鳥は飛びたいのか?」でも取り上げたが、カルガモの場合も同様であり、人間が横を通り過ぎる程度では飛び立つことはない。

2019年5月21日(火)




【連載】

遺伝子の最新研究と心理学の将来(8)まとめ

 昨日の続きでこの連載の最終回。

 第2集の終わりの部分では、
  • 親のDNAスイッチは一台限りであり精子の段階ですべてリセットされると考えられてきたが、最近の研究では、祖父の代の飽食(大豊作)が孫の代の心筋梗塞や糖尿病発症リスクを高める可能性が明らかになった。この知見に基づき、デンマークのコペンハーゲン大学では、父親の精子のDNAスイッチを健康な良好に保つための「精子トレーニング」の研究が行われている。【親が経験によって獲得した性質や体質が次の世代に遺伝することがある。】
  • ネズミの実験によれば、特定の嗅覚刺激と恐怖体験との対呈示を繰り返すとと(レスポンデント条件づけ)、嗅覚にかかわるDNAのスイッチが変化し、子や孫も同じニオイを怖がるようになる。
    【Dias, B.G., & Ressler, K.J. (2014). Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations. Nature Neuroscience, 17, 89-96.】
  • 国際宇宙ステーションに340日間滞在した宇宙飛行士の血液のDNAスイッチを調べたところ、9000以上のスイッチの変化が確認された。宇宙では強力な放射線の影響によりDNAにキズがつくことや、無重量により骨が弱くなることが分かっているが、それを補うような変化が起こった。【DNAのスイッチは未知の環境にもすばやく適応し生き抜くために備わった仕組である可能性。】
といった新たな知見が紹介された。

 以上をふまえて山中先生は、
長い時間をかけて環境に適応する「進化」、短期間の環境の変化を乗り越える「DNAスイッチ」→その組み合わせで人類は生き延びてきた。
とコメントしておられた。




 ここからは、この連載のタイトルである「遺伝子の最新研究と心理学の将来」の話題になるが、DNAスイッチの研究が知られていなかった段階では、
  • 進化:適者生存。環境にうまく適応した個体が生き残り次の世代に受け継がれる。ゆっくりとした大きな変化に有効。
  • 学習:同じ個体の中で、環境変化に対する応答を変えたり(レスポンデント条件づけ)、環境を変えるように反応したり(オペラント条件づけ)することで適応。短期的な環境変化への適応に有用。
というように二分法で考えられるのが一般的であったように思われるが[]、最近の知見をふまえると、その中間段階としてDNAスイッチを考慮する必要が出てきたと言えるかもしれない。
]但し、1970年代にはエソロジーの影響もあり、学習の生物的制約論議が活発に行われたこともあった。

 例えば、これまでは強化の原理に基づいてスキルアップを図ってきたような課題に、ある段階で、DNAスイッチをonにするような別の訓練を挿入したほうが、より効果が上げられるかもしれない。あるいは、DNAスイッチのオンオフタイプに合わせて、それぞれに適合した異なる訓練法を実施するという可能性もある。とはいえ、これまで積み上げられてきた訓練法のノウハウや効果検証の手順がムダになることは全くない。むしろ、タイプ別訓練ということになれば、単一事例の効果検証の方法がより活用されるようになるであろう。

 もっとも、DNAスイッチのオンオフは、本人の選択に委ねられるべきであろう。「性同一性障害」もある種のスイッチのオンオフに起因するものと推測されるが、最近では「性同一性障害」が「国際疾病分類」の精神障害から外され、かつ名称の変更が検討されていると聞く。5月20日のノーナレ「恋愛圏外」に関連していると思われる無性愛 asexualityも同様であろう。【但し、地球上での何らかの環境変化、環境ホルモンの影響などによって人類の大半が無性愛化してしまい極端な少子化が進んだような場合は、DNAスイッチを切り替えるための何らかの施策がとられるかもしれないが。】

 次回に続く。