じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 写真下(5月5日撮影)のヒラドツツジに代わって、岡大・東西通りのサツキツツジが見頃となってきた(写真上)。
 ヒラドツツジは東西通りの北側(津島北キャンパス側)と南側(津島東キャンパス側)の両方に植えられているが、北側のほうは今年はまばらにしか開花しなかった。サツキツツジは北側のみに植えられており、毎年しっかりと開花する。昨年の記録が楽天版にあり。

2019年5月16日(木)




【連載】

遺伝子の最新研究と心理学の将来(3)コーヒー・カフェインの分解

 昨日の続き。

 第1集 あなたの中の宝物"トレジャーDNA"では、DNA98%の中に見つかった「カフェインの分解能力を決めるDNA」の例が取り上げられた。

 リンク先にも記されているように、コーヒーに含まれる「抗酸化物質」には血管を若返らせ、心臓を健康に保つ働きがあるが、その一方、コーヒーに含まれるカフェインには、血管を収縮させ血圧を上げる可能性があると考えられている。カフェインには健康に良い働きもあるが、総合的に見ると、
  • カフェインの分解が速いDNAを持つ人(46%):抗酸化物質の働きにより心筋梗塞のリスクが大幅に減少。
  • カフェインの分解が遅いDNAを持つ人:抗酸化物質の働きと、カフェインの血管を収縮させ血圧を上げる働きが相殺されて、コーヒーを飲んでも心筋梗塞のリスクは必ずしも減少しない。
という個体差が生じるというように説明された。

 番組で説明されたカフェイン分解の仕組を私が理解した範囲で要約すると、以下のようになる。
  1. 肝細胞の核(1/100ミリ)の中にDNAが詰まっている。その中の98DNAの中に、カフェイン分解をコントロールする部分がある。
  2. カフェインが摂取されると、スタート装置(転写因子)がコントローラーの部分を「叩く」。
  3. すると、設計図の読み取り機(RNAポリメラーゼ)により、カフェイン分解にかかわる設計図の部分がコピーされる。
  4. そのコピーは、核の外に放出される。
  5. 核の外にあるリボソーム(さまざまな物質を作る製造機)がそのコピーから情報を読み取り、カフェイン分解物質を作る。
  6. カフェイン分解物質は、やってきたカフェインを分解する。
 この仕組はすべての人に存在するが、カフェインを速く分解できるDNAを持つ人では、2.の段階で「叩く」回数が多いので、カフェイン分解物質をより早く大量に作ることができる。なお、私の理解した範囲から言えば、カフェインを速く分解できるかどうかは、第二集で取り上げられたDNAスイッチ(エピジェネティクス)のオンオフの違いではなく、「叩く」回数の違いであり、それを量的にコントロールしている構造的な仕組み(←作用の強弱として観察されるのではなくて、形状の違いとして確認できるという意味)が98%DNAの中に組み込まれているということのようであった。

 生理学的な知識がほぼ皆無である私は、食べ物の消化・吸収は、口の中(唾液)から胃、小腸、大腸の中の消化液(消化酵素)によってなされ、分解されものの中の有用なものだけが体内に取り込まれるというように思っていた。じっさい、小中高では、一般の食物に含まれる炭水化物や脂肪などは、そのようなプロセスで消化・吸収されているはずである。しかし、カフェインの場合は、いったんそのままの形で血液の中に取り込まれ、遺伝子のコピーまで関与した上で分解されるというのであるからスゴい。コーヒー1杯を飲むたびに、いちいち、スタート装置(転写因子)やら設計図の読み取り機(RNAポリメラーゼ)やらリボソームやらが駆り出されるというのはずいぶん大げさなことのように見えた。おそらく、肝臓で分解されるような物質は、みな似たような仕組が関与しているのであろう。しかし、多種多様な化学物質、なかには人類が一度も口にしたことの無かったような薬物も肝臓にやってくるはずで、その時にもちゃんと対処できるのか、それとも、どこかでとんでもない誤作動(有用な物質を有害とみなしてしまって分解したり、分解物質を余剰に作り出してしまって体全体に悪い影響を及ぼすなど)が起こることはないのか、気になるところでもある。

 次回に続く。