じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 昨日の日記で、私自身が体験した最も低い気温は氷点下39℃であると書いた。これに次ぐ、2番目に低い記録は、1981年に中国シルクロード、ウルムチ郊外で体験した気温で、温度計が無かったため正確な測定はしていないが、氷点下20℃以下であったと思われる。

 ちなみにこの場所の近くは2011年にも通過したことがあるが、景色は一変しており、ウルムチ市街地ではラクダもロバも全く見かけなかった。


2019年2月10日(日)



【小さな話題】

雇用年齢引き上げについて考える

 昨日の日記で、私の定年退職後の生活のことを少しだけ書いた。
 私の大学の場合(←国立大学法人の多くは同じだと思うが)、教員の定年は65歳(年度の終わりまでに65歳に達していると3月31日で退職)、事務職員の定年は60歳となっている。但し、教員の場合、理事などの役職に就いていれば65歳を超えても在籍することがあり、また、特任教授という形で一定の給与を受け取って研究や教育を続ける制度もある。事務職員の場合は、65歳からの年給支給開始まで収入が無くなってしまうため、別の教育機関に再就職する人が多かったが、最近では同じ職場での再雇用が制度化されたこともあって、たいがいは嘱託のような形で残る人が多いように思われる。

 しかし、こちらの記事でも報じられているように、最近では定年年齢を70歳まで引き上げた場合の経済効果が検討されており、さらには75歳までの雇用年齢引き上げも検討されていると聞く。

 その背景にあるのは、
  1. 60歳代後半の高齢者の就業率が70%まで高まっている。
  2. 少子化に伴う人手不足緩和につながる。
  3. 年金財政を改善し、若者世代の負担を減らせる。
といった点にあるらしい。

 もっとも、リンク先に記されているように(第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏の引用)、「60代後半の高齢者の就業率が70%まで高まっているのは、年金が一部カットされる制度が導入されて、収入への不安が高いため」という指摘もある。あくまで、高齢者の生きがい、働きがいを保障するために定年年齢を引き上げるということであるならば、

●働いても働かなくても年金額は変わらない(働いたことで一定以上の給与を受け取ったとしても年金の支給停止はしない)

ことが大前提になるように思う。

 そもそも、定年退職後に働き続ける人がいるのはなぜだろうか。

 1つは、リンク先でも指摘されているように、年金だけでは充分な生活ができないため、必要に迫られて働くというケースである。最低水準の衣食住の経費はまかなえるとしても、マンション諸経費、健康保険、介護保険、自動車保険、自動車メンテ費用、さらに病気になった時の医療費などを含めると、厚生年金相当分やすでに積み立ててきた財形年金や拠出型企業年金を受け取っても、ギリギリの生活が余儀なくされることは確かである。

 もう1つは、退職後、一日じゅう家に居てもすることがない、どうせ外で何かをするのであれば働いてお金を稼いだほうがいい、という理由である。もちろん、退職後には、高齢者向けのさまざまなレクリエーションもあるし、ボランティア活動に生きがいを見出すという機会もあるはずなのだが、「今の仕事、もしくは今と似た仕事を続ける」という消極的な選択をしてしまう人もいる。今のような時代では、同じ仕事を続けたいという高齢者が多いほうが人手不足を補えるので好都合かもしれないが、AI・ロボット化が進んで逆に就職難の時代になった場合は、高齢者は若者に就職機会を譲るべきであり、それに代えて経験豊かな高齢者ならではできるようなボランティア活動に邁進してもらったほうがありがたい。

 あと、高齢者はタンス預金などせずに、もっと消費をしてもらわなければならない。そもそもお金というのは、貯め込まれてしまったらデフレになるばかりであり、逆に一斉に使われてしまうとインフレと人手不足を招く。借金をしない程度でほどほどに使うことが多くの人を幸せにする。

 これは別段、私自身の言い訳というわけではないが、「高齢者が海外旅行に出かけるというのは贅沢だ、そういう富裕な資産があるなら寄付しろとか、税率を上げて低所得者への福祉に回すべきだ」というような意見もあるかと思う。しかし、旅行者が旅行先でお金を使うことは、現地での雇用やインバウンド需要の創出につながるのであって、一銭たりとも無駄にはなっていない。仮に税率を上げてその税収分で当該国に無償援助をすれば、それはそれなりに喜ばれるだろうが、雇用の創出にはつながらない。

 もとの話題に戻るが、働き続けることが生きがいであるという人たちのための雇用年齢引き上げはあっても良いとは思うが、年金削減と連動されるのはお断りである。それよりも、高齢者が趣味を拡げて楽しんだり(←ACTでいう「価値」との接触のようなもの)、気軽にボランティア活動に参加できるような機会を増やすべきである。