じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月1日と2月2日の朝はよく晴れていて、南東の空に、月、金星、木星、さそり座・アンタレスなどが輝いていた。2月1日は金星食(日本では見られない)のすぐ後で、金星と月が接近している様子が見えた。
 なお、デジカメでは撮れていないが、2月2日は、月の左下に土星が輝いているのが双眼鏡で確認できた。夕刻には土星食になるようだが、日本では見られない。


2019年2月2日(土)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(32)「関係フレーム」とは何か?(20) いろいろな関係フレーム(15)Distinction(4)行動変動性、でたらめに振る舞う行動、乱数生成行動

 昨日の続き。

 すでに述べたように、Distinction(区別)は、実験場面では相違の検出反応として確認される。見本合わせ課題では、まず、見本として刺激Aが呈示され、比較刺激として、Aと同一の刺激Xと、Aとは異なる刺激Yが同時呈示される。この場合、非恣意的な関係課題であれば、XはAと色や形がそっくりでなければならないし、Yのほうは何らかの比較軸において、Aとは物理的に異なっている必要がある。また恣意的な関係課題においては、「同じものを選ぶ」という文脈のもとではXを選んだ時に強化され、「違うものを選ぶ」という文脈のもとではYを選んだ時に強化される。

 この「違うものを選ぶ」を拡張すると、「直前に選んだものとは違うもの(=新しいもの)を選ぶ」、「過去の反応系列とは違うように反応する(新しい反応をする)」といった行動の研究に役立てることができる。

 例えば、0、1、2、...9という10個のボタンがあり、これをできるだけデタラメになるように押すという課題があったとする。この課題は「乱数生成テスト」などと呼ばれており、私自身は学部生の頃からこのことに興味を持っていた。行動分析学のほうではその後、「行動変動性(behavioral variability)」という形で研究が発展している。
長谷川(1989)長谷川(2008)、その他、ネット上公開論文リストの関連文献をご参照。

 ここでもとの「違うものを選ぶ」という課題に戻るが、単に、直前に選んだ数字と違う数字を選ぶというだけであれば、0から9を順番に押すという反応を繰り返せばそれで事足りる。当然、これでは乱数とは言えない。

 そこで、長谷川(1989)や、その後の一連の実験では、反応が起こるたびに、直前に選んだ数字とたったいま選んだ数字からなる2桁の数字(=ダイグラム)の出現頻度をパソコンが自動集計し、出現頻度の少ないダイグラムが発生した時にポイントを与えるという随伴性を設定した。
 もし、上記の「0から9を順番に押す」というステレオタイプな反応を繰り返すと、生成されるダイグラムは「01」、「12」、「23」、...「89」、「90」ばかりになってしまって、当然、これらの反応系列は高頻度であるゆえ、いくらボタンを押しても全くポイントがとれなくなってしまう。同様に、同じ数字ボタンばかりを押してもダメ(1ばかり押せば「11」というダイグラムだけが高頻度となる)。
 もちろんこの随伴性においても、「00」から「99」までの100通りのダイグラムの頻度をメモしながら、常に低頻度になるようにまんべんなく押していけば高得点は取れるが、人間の記憶容量の限界からか、そこまで裏を読んで反応するような方略は取られないようであった。少なくとも、発達障がい児の画一的な選択パターンを可変的にする効果があることは間違いない。

 1980年代から1990年代に、乱数生成課題や行動変動性の実験をやっていた時には、とにかく、ステレオタイプな選択行動をどうやって可変的にするのか、という観点から考えていたため、関係フレームのことは全く頭になかったが(というか、当時はRFTのパープルブックはまだ刊行されていなかった)、いま思えば、長谷川(1989)の図3において、スコアの低かった発達障がい児が、等位、反対、区別といった関係フレームをどこまで形成していたのかを調べておけば、より生産的な研究につながったのではないかと気がする。

次回に続く。