じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 エンジェルトランペット(キダチチョウセンアサガオ)は、例年この時期に霜があたって地上部が枯れてしまうが、今年は氷点下の日が少ないせいか、建物に近い枝はまだ葉っぱをつけている。まだ何本かの枝には莢がぶら下がっている。もっとも、岡山の気候では、莢が熟する前に萎れてしまい種にはならないようだ。なお、近縁種のチョウセンアサガオの種は猛毒であるが、ウィキペディアによれば、本種も同様に有毒植物であると記されているので注意が必要。

2019年1月18日(金)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(21)「関係フレーム」とは何か?(9) いろいろな関係フレーム(4)Coordination(3)潜在学習、レスポンデント条件づけとの関係

 昨日の続き。

 1月16日の日記で、等位フレームに関連する言語訓練として、コップを見せて「これ、コップだよ」と発声する方法、あるいはもっとシンプルに、実物のコップを見せながら、「コップ、コップ、...」と繰り返すだけでも訓練は可能であると述べた。じっさい、家庭内で、子どもがこういう形でモノの名前を覚えていくことは、経験的に見て確かであろうと思われる。

 しかし、この方法は、行動分析学の立場から見ると腑に落ちないところがある。というのは、

《実物のコップ》→《「コップ」という音声》
(もしくは、《実物のコップ》と《「コップ」という音声》の対提示)

というのは単なる刺激の提示であって、どこにも行動が記述されていないからである。

 これは、昨年12月28日に述べた、「関係反応」と「関係」の議論にも関連している。徹底的行動主義の立場を貫くならば、「関係があることを学ぶ」というのはあくまで「関係反応が生じる」すなわち、「ある刺激に対して、別の刺激の観点から反応する」という行動を主人公にして分析する必要があるのではないかと思われる。

 もっとも、別の立場の心理学であれば「刺激と刺激の対提示による学習」はそれほど奇異には感じられないかもしれない。一昔前、私が学部学生だったころには、Tolman,E.C(トルーマン)の潜在学習やサインーゲシュタルト説が授業でも大きく取り上げられていたが、もし、人間の言語学習において、刺激と刺激の対提示が大きな役割を果たすと主張するのであれば、レスポンデント/オペラントの枠組みを超えるような別の理論体系が構築されなければなるまい。

 ちなみに、レスポンデント条件づけというのは、刺激と刺激の対提示がもたらす行動変容であるが、そこではあくまで、無条件刺激によって誘発される行動(レスポンデント行動、無条件反応)が主人公であり、それと同様の行動が、条件刺激によって誘発されることの確認をもって、条件づけが起こったと見なしているのである。

 例えば、《強いお酒》を《茶色のコップ》に入れて飲んでいると、《実物のコップ》を見ただけでヨダレが出てくるかもしれない。これは、《茶色のコップ》が条件刺激となって、ヨダレという条件反応を誘発したというように説明される。この事例は、形式的には、関係フレーム理論で言うところの「刺激機能の変換」に似ているが、《強いお酒》=無条件刺激、《お酒によって誘発されるヨダレ》=無条件反応は非恣意的な関係であり、あくまでレスポンデント条件づけとして説明することが妥当であるように思われる。もっとも、同じ人が、「チャイロノコップ」という音声を聞いただけでヨダレを出すようになり、かつ、その音声とお酒を一度も同時提示されたことが無かったとするなら、この現象は、レスポンデント条件づけの原理では説明できず、やはり関係フレーミングの事例として記述されるべきであろう。

 元の話題に戻るが、刺激等価性の実験研究も、関係フレームの説明事例も、見本合わせ課題に基づくものが殆どであった。しかし、見本合わせの「対応づけ行動」に依拠せずに関係フレームを説明するということになれば、別の課題での検証実験が必要となるだろう。潜在学習をめぐる古典的な実験もその中に含まれてくるかもしれない。

 なお、見本合わせ課題に関しては、『ACTハンドブック』(武藤編、2011)の第10章(大月・木下)の中に関連記事がある[]。(潜在学習ではなく潜在認知の話題ではあるが)あくまで行動分析学の立場を貫くということであれば、構造論的な仮説構成概念として捉えるのではなく特定の文脈下で生じる行動として捉える姿勢が必要であろう(←行動分析学的なアプロートのほうが簡潔で、行動の予測や影響に有用であることを同時に示す必要もある。)
]以下の文献が紹介されていた。ネットで無料で入手できたが、まだ読んでいない。
Barnes-Holmes,D., Barnes-Holmes,Y., Smeets,P.M. ,Cullinan,V., & Leader,G. (2004). Relational frame theory and stimulus equivalence : Conceptual and procedural issues. International Journal of Psychology and Psychological Therapy, 4, 181-214.

 不定期ながら次回に続く。