じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 このところウォーキング歩数があまりにも少ないことを反省し、1月2日は少し遠方まで歩き、合計歩数は11574歩となった。写真は道沿いにあったヒメツルソバ。岡山に比べるといくぶん暖かいせいか、北九州では南向きの石垣などでこの花が群生している。

2019年1月3日(木)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(12)「関係フレーム」とは何か?(1)

 1月2日の続き。

 前回までのところでは、ある反応が「関係反応」であるのかどうかについて考察してきた。しかし、行動分析学が分析の対象としているのは、1回限りの反応ではない。繰り返し生じる反応がどういう原因によって増えたり減ったりするのかということが主要な関心事となる。そうしたひとまとまりの反応は「反応クラス」と呼ばれる。

 ではどういう基準でひとまとまりにすればよいのか、ということになるが、これには反応の形態(トポグラフィー)の類似性に基づく基準と、機能的に定義された基準がある。前者の基準は、踊りの型、投球フォーム、水泳の指導などでおそらく有用と思われるが、より広い範囲の諸行動を分析対象とする時には機能的定義のほうが行動原理の記述に適しているようである。機能的定義の例としては、しばしばラットのレバー押しが挙げられる。要するに、レバーを左前足で押しても、右前足で押しても、あるいは鼻先やシッポで押しても、レバーに一定の力がかかってスイッチがonとなり、さらにレバーが上に上がって元の状態に戻った時には「反応が1回起こった」と見なされる。同様に、「水を飲む」という行動は、コップで水を飲んでも、ボトルで飲んでも、噴水型の飲水装置で飲んでも同じ行動となる。「誰かにメッセージを送る」という行動は、手書きの手紙でも、ワープロで印刷した手紙でも、あるいはスマホで入力してEメールで送っても、変わらない。

 「関係フレーミング」もこの反応クラスに由来する概念である。『ACTハンドブック」の中の武藤(2011)では次のように説明されている【一部改変】
...前節においてクラスという枠組みを扱った。本節では,その反応クラスと分類されるもののうち,特殊な反応クラスを扱う。通常,反応クラスとは,上述のように,同様の機能を持つ行動のまとまりのことを指し示すにすぎない。しかし,ここで検討する特殊な反応クラスとは「フレーム」(frame)と呼ばれる反応クラスのことである。この「フレーム」という名称は,認知的な構造のように誤解される危険性があるため,それを避けるためにフレーミング(framing) と呼ばれることもある。また,その呼称が示すように「中身は変わることはあっても,外枠はいつも変わらない」という「まとまり」を示す反応クラスのことである。そのような現象は,古くは「学習セット」(learning set)あるいは「学習のための学習」(learning to learn) と呼ばれてきた。さらに,行動分析学では,より限定的な反応クラスとして「般化模倣」と呼ばれる現象として検討されてきた(その他に注目行動,同一・異質見本合わせ,排他律などの行動でも同様の現象が確認されている)
 同じ章には、「クラス」と「フレーム」についての次のような説明もある【一部改変】
Hayesは,クラスという枠組みで刺激等価性を考えるということを一定に評価しつつも,それ以上にく刺激一刺激>間の「関係」(relation) として刺激等価性を捉え直すことによって,さらに研究の進展が期待できると考えた。そのように提案した理由は,「関係」は「等価」にとどまらず,その他の多くの関係性も「言語」や「認知」に深く関与しているからである。そこで,彼らは「フレーム」という枠組みを援用し「等価」関係以外の関係性も積極的に扱っていくことを指向した。それが「関係フレーム」(relational frame)である。
 正確な理解を期すために、RFTのパープルブックから引用させていただく。【下線は長谷川による】
(33頁)A relational frame is a specific class of arbitrarily applicable relational responding that shows the contextually controlled qualities of mutual entailment, combinatorial mutual entailment, and transformation of stimulus functions; is due to a history of relational responding relevant to the contextual cues involved; and is not solely based on direct non-relational training with regard to the particular stimuli of interest, nor solely to nonarbitrary characteristics of either the stimuli or the relation between them. A relational frame is thus both an outcome and a process concept. The contextually controlled qualities of mutual entailment, combinatorial mutual entailment, and transformation of stimulus functions are outcomes, not processes. they do not explain relational frames: they define them. The process is the history that gives rise to a relational operant that is under a particular kind of contextual control.
 上掲での重要なポイントは、
  • 「関係フレーム」は特殊な反応クラスであること。
  • その反応クラスは、相互的内包、複合的相互的内包(複合的内容)、刺激機能の変換という3つの特徴を有すること。
  • 「関係フレーム」とは結果として生じた現象であり、また現象のプロセスを記述した概念であること。
  • 「相互的内包、複合的相互的内包(複合的内容)、刺激機能の変換」は関係フーレムを説明する概念ではない。あくまで、関係フレームを特徴づけるものであること。
ということになろうかと思う。
 もう1つ、次の頁も引用させていただく。
(34頁)We use the term relational frame in its noun form for the sake of convenience; however, a relational frame is always “framing events relationally” ― it is an action. Arbitrarily applicable relational responding is the generic name for behavior of this kind, while a relational frame is a specific type of such responding. The metaphor of a “frame” has been adopted to emphasize the idea that this type of responding can involve any stimulus event, even novel ones, just as a picture frame can contain any picture. Nonarbitrary relational responding does not require the frame metaphor because the relation is not “empty” and arbitrarily applicable ― it is specified by the physical properties of the stimuli to be related.
 ここで重要なポイントは、
  • 名詞形の「フレーム」は便宜的な表現であり、その実態は反応であること。
  • 「フレーム」はメタファーであること。非恣意的な関係反応と異なり、空っぽであること。
が強調されている。
 不定期ながら次回に続く。