じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 北海道胆振東部地震と台風による航空便欠航の影響のせいか、毎日一便運航の新千歳・岡山便の乗客は極端に少なかった。写真上は搭乗開始直前の待合所、写真下は出発直前の機内。ざっと数えたところでは乗客は30数人にとどまっていた。


2018年10月5日(金)



【小さな話題】

孤独な高齢者は早期死亡リスクが高く、うつになりやすい?

 昨日の日記で述べたように、定年退職後は他者と交流する機会が極端に減った。こういうWeb日記を執筆しているおかげで「書き言葉」はそれなりに使っているが、「しゃべり言葉」のほうは全く機会が無く、夫婦の会話を除けば、一日の合計会話時間は10分にも満たず、このままでは日本語のしゃべり方を忘れてしまうのではないかと思うほどである。

 このことで若干気になるのが、他者との交流が少ないことによる種々のリスクである。

 このことに関連するが、少し前のNHK「偉人たちの健康診断」(8月29日再放送の選「黄門様は立つのがお好き」)で、好奇心旺盛で交友関係が広いと、なぜ認知症になりにくいのかという話題を取り上げていた。【オリジナルの記事はこちら

 番組ではまず、英国で、「孤独担当大臣を新設」という2018年1月18日付けの朝日新聞DIGITAL版記事を紹介していた。人口6560万人の英国では孤独を感じている人が900万人、友人や親戚と1か月以上会話をしていないお年寄りは約20万人に達しているという。なお、こちらの記事によれば、英国での孤独問題は、ジョー・コックス議員が立ち上げた「孤独委員会」で検討されてきたが、2016年6月にコックス議員が極右思想の男性によって殺害され、今回の担当大臣は「孤独委員会」の仕事を継続するために任命されたとのことである。「孤独委員会」の2017年報告では「孤独は1日たばこを15本吸うのと同じくらい、健康に害を与える」と指摘しているという。

 「偉人たちの健康診断」では、全国30の市町村14万人の高齢者を対象とした調査によれば、
  • 同居者以外の他者との交流が月1回未満の人の早期死亡リスクは1.3倍
  • 同居者以外の他者との交流が週1回未満の人の要介護認定のリスクは1.3〜1.4倍
という結果が得られているという【出典は、斉藤・近藤・尾島(2015)健康指標との関連からみた高齢者の社会的孤立基準の検討 10年間の AGES コホートより.】

 番組で挙げられていた「交友関係が広いと死亡率が低い理由」は
  1. 身体活動量が増える←人に会うために歩くなど。
  2. 社会的支援を受けやすい←何かあった時に助けてくれる人が多い
  3. 精神的支援を受けやすい←悩みなどを相談できる人がいる
という3点であったが、これらだけの理由であるならば、別段、他者との交流が無くても実現可能であるような気もする。例えば1.は、毎日一人で散歩をすればよいし、2.はどうしても必要が生じた時に有料サービスを受ければよい。3.については、少なくとも私は、悩みごとは自分で解決すべきだと思っていて、他者からの助言は受け入れることもあるが、過剰な助言はお節介として断乎拒否するであろう。

 番組ではもう1つ、
  • グループに参加しない高齢者は、うつの発症率が高い。
  • 65歳以上で役割を持っていない人は役割を持っている人の7倍、うつ傾向になる確率が高い。
という調査結果も紹介されていた。もっともこれも、ニワトリが先か卵が先か、みたいなところがある。もともと全く別の原因でうつ傾向のある人はグループに参加したがらないであろうし、ストレスの多い役務を引き受けようとはしないであろう。質問紙調査のスコア程度では、潜在的な「うつ傾向」までは測れないであろうから、因果関係を逆にして「潜在的なうつ傾向のある人は、グループに参加しない」、「潜在的なうつ傾向のある人は、役割を持たない」と考えることもできるのではないかと思われる。

 けっきょく、他者との交流は、それが「無駄な時間」なのか、何かを共有し共感する場であるのかによって違ってくるように思う。私の場合、少なくとも、とりとめの無い話題でおしゃべりをするような場は「無駄な時間」(←これはテレビ番組も同じで、芸能人たちがワイワイ喋るような番組を視ることは私にとっては全くの時間の無駄である。) あと、高齢者にあっては、他者との交流が多い人ほど他者との死別・離別の悲しみをたくさん味わうことになる。このことがプラスに働くのか、マイナスに働くのかもしっかりおさえておく必要がある。