じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

5月26日(土)の18時からのNHKニュースでは、アメフト反則・危険行為問題に関連する関学の記者会見の話題がトップで伝えられた。↓の記事参照。


2018年5月26日(土)


【小さな話題】

アメフト反則・危険行為問題でNHKは騒ぎすぎ
 日本大学アメリカンフットボール部の選手が、試合中に関西学院大学の選手に後ろからタックルしてけがを負わせた問題が連日取り上げられている。どんなスポーツであれ、相手選手を負傷させるような反則行為はあってはならないことで厳正な対処が求められるのは当然であるとは思うが、この問題をめぐるマスコミの取り上げ方は明らかに騒ぎすぎだと思う。高視聴率目当ての民放ワイドショーならともかく、公共放送のNHKまでがこの問題を過大に取り上げているのはどうかと思う。

 あくまで私が見聞きした範囲であるが、NHKは5月25日の15時半からの日大・大塚学長の会見の様子を、大相撲中継を中断して総合テレビで放送した【高齢女性の乱入場面も一部放送された】。翌26日15時からの関学の監督とディレクターの記者会見の様子は、事前から30分の番組枠をとって総合テレビで放送し、大相撲終了後の18時からは「日大との定期戦 信頼関係取り戻すまで中止」という見出しでトップニュースで伝えた。

 上にも述べたように、どんなスポーツであれ、相手選手を負傷させるような反則行為はあってはならないことで厳正な対処が求められるのは当然であるが、他の番組を中断あるいは差し替えてまで30分にわたって記者会見の様子を生放送したり、定時ニュースでトップで伝えるほど重大深刻な出来事であるとは私には思えない。1時間分の受信料を返してもらいたいところだ。

 今回の反則・危険行為がニュースとしてどれだけの価値を持つのかは、
  1. 日本国民がアメフトにどれだけの関心を寄せているか?
  2. 選手がどの程度負傷したか?
  3. アメフトの試合の中で同種の反則・危険行為がどの程度の頻度で起こっているか?
  4. 背後に構造的な問題があり、スポーツ界にどの程度悪影響をもたらしているのか?
などによって決まってくるかと思う。

 このうち、1.の「日本国民がアメフトにどれだけの関心を寄せているか?」については、ネットでざっと検索したところ、こちらに2016年のアンケート調査の結果があり(三井広報委員会、15歳以上の男女1200名対象)、興味のあるスポーツとしては、野球(32.5%)、サッカー(29.4%)、テニス(22.7%)などが挙げられている中、アメフトは第16位の4.3%にしかすぎず、あまり関心を持たれていないスポーツであることが確認できた。このほか別の調査でも、アメフトがTop20にランクインしている結果は殆ど得られていないようだ。

 上掲2.の負傷の程度というのは、事故や犯罪の場合の取り上げ方と同様である。反則行為により選手が死亡したような場合はトップニュースになるが、軽傷であればニュースにはならない。今回の場合、負傷した選手が3週間ぶりに実戦に復帰できる見通しであるということで、怪我の程度だけから言えば、アメフトのような激しいスポーツではしばしば起こる程度の負傷であるようにも思える【「腰は完治していない」という負傷選手父親の会見もあるようだが】。

 上掲3.は、今回の事件がきわめて特殊な事例であるのか、それとも日常的に起こっている問題現象の1つとして表面化してきたのか、によって扱い方が変わってくる。仮に、日大の監督やコーチの指導方法に問題があるとすれば、日大のチームの中で繰り返し起こっているはず。そうではなくて、他大学でも同じ程度で起こっているならばアメフトの構造的な問題と言える。このあたりは、直近の何百試合もの映像を点検した上で公正に提示してもらいたいところだ。

 上掲4.は、一部で指摘されている監督・コーチの独裁的な指導方法に関わる問題であるが、このことと反則・危険行為問題は別に議論されるべきであろう。ちなみに、昨今では、高校野球や高校駅伝などの世界でも、かつてのスパルタ式、ど根性叩き込みのような指導方針よりは、選手の良いところを褒めたり自主性を尊重した指導方針のほうが評判がよく、実質的にも成果を挙げていると聞く。スパルタ式が嫌われれば、結果として良い選手も集まらない。そうなれば試合でも勝てなくなるため、結局は廃れていく。なので、ことさらに批判されなくても、淘汰されていくようにも思える。

 元の話題に戻るが、本来、スポーツにおける反則・危険行為は、それぞれのルールのもとで試合の中でペナルティーが課せられる仕組みになっている。アメフトのルールについては殆ど知らないので分からないが、例えばサッカーであれば、ペナルティーキックとかイエローカードのルールがある。反則を繰り返せば結局はチームに不利になるので、通常はうまくおさまるようにできている。もしアメフトで危険行為が頻発するというのであれば、現状よりさらに厳しいペナルティーを付け加えればよいし、審判だけで把握できないのであれば、試合の様子を常に撮影し、反則監視員を設置して事後的にペナルティーを課せばよい。このほか、明らかな反則によって引き起こされた負傷については当然、加害者や加害チームが補償をする必要がある。いずれにせよこのあたりは、アメフト協会のような機関でしっかりと対処すればよく、部外者のマスコミがガタガタと騒ぎ立てるほどの公共性は無いように思われる。

 余談だが、私が大学院生〜研究員だったころは、ちょうど母校の黄金期が始まっていた頃であり、私自身も何度か中継を観たことがあった。もっとも、アメフトの試合というのはすぐに中断して、巻き尺で長さを測っている場面ばかりであり、どういうルールになっているのかがよく分からず、といって、別段ルールを理解しようという意欲も湧かなかった。ラグビーのほうはアメフトよりはいくらか分かりやすいが、なぜトンネルをつくって押し合いへし合いするのかは未だに分からない。65歳をすぎたことでもあり、今更、ルールを勉強したいとも思わない。