じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月26日の岡山は、記録上は降水量ゼロであったものの、激しく雪が舞う時間帯があった。写真は黒正巌先生像周辺の「積雪」

2018年1月26日(金)


【思ったこと】
180126(金)「対応づけフレーム理論」(9)包含関係(2)

 昨日も述べたように、包含関係は、事物の属性ではなく、人間が恣意的に設定した基準に基づいた分類の結果である。どのような基準を採用するのかはそれがもたらす有用性によって決まる。

 野生の動物たちであっても、包含関係を弁別とした行動はできる。例えば、群れで行動する動物にとっては、ある個体が仲間なのか、別の群れの個体なのかは、きわめて重要な弁別課題となる。自分の子どもたちとそうでない子どもたちを区別することも、野生動物の子育てにとってはきわめて重要であろう。もっとも、これらの行動は、包含についての関係反応という概念を持ち出さなくても十分に説明できる。動物たちが包含関係に基づいて行動しているのではなく、動物たちの行動を観察する人間側のほうが、観察された行動を簡潔に記述するために包含の概念を取り入れているに過ぎない。

 包含に関する関係反応の原形は、般化と分化強化にあるのかもしれない。例えば、Aという犬に噛まれた子どもは、さまざまな種類の犬を怖がるようになるかもしれない。この場合、動物学的な意味での「イヌ」という基準で分類しているわけではない。形態的類似性や鳴き声、動作などを通じて「ワンワンと吠える、四つ足で歩く、自分より小さい動くモノ」というような基準で、Aという犬が恐怖反応の条件刺激となり、それに似た動物への刺激般化が起こるようになる。

 しかしそのうち、犬の中にもBという、よくなついていて絶対に噛んだり吠えかけたりしない犬も存在することが分かる。これにより、「怖い犬」と「可愛い犬」という分類基準が形成され、「Aという犬は『怖い犬』に含まれ、Bという犬は『可愛い犬』に含まれる」というような包含関係反応が生じるようになる。また、この分類基準は本人にとって有用である。

 以上をふまえて、どのような訓練が包含関係反応を形成していくのかを考えてみよう。これまでと同じ記号を使うと、まず、
  • (A→P)→[○vs□] 【○】
    AのあとにPを呈示する。AがPに含まれていれば○を押す
という訓練は必須であろう。しかしこれだけでは、「AはPと同じだ。」という訓練と課題構造は何も変わらない。これに加えて、
  • (P→A)→[○vs□] 【□】
    PはAに含まれていないので□を押す
という訓練を行えば、「Pの一部にはAでない部分がある」となり、

A⊂B

という包含関係に一致する。

 ちなみに、「Pの一部にはAでない部分がある」というのは、「PはAより大きい」と同じ意味になる。これまでのところでは、「大小関係は直線上の2つの点の座標の位置比較であると見なすことができる」と述べてきたが、

「XよりYは大きい」というのは、「YはXを含み、かつXでない部分も含む」

ということとして捉えることもできる。(「座標の位置で言えば、YはXの座標に、XとYの差の部分だけ右に移動したところにある」と言っても同じ。)

 次回に続く。