じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月14日の楽天版にミミズクのオブジェの写真を掲載したが、同じ教育学部構内で、その形にそっくりな偽物のオブジェを見つけた。凍結防止のため散水栓にかぶせたビニール袋と思われる。

2018年1月17日(水)


【思ったこと】
180117(水)「対応づけフレーム理論」(1)

 関係フレーム理論の立場から視点取りのしくみを論じた文献としては、

Barnes-Holmes, Y., McHugh,L., & Barnes-Holmes, D. (2004). Perspective-taking and theory of Mind a relational frame account. The Behavior Analyst Today, 5, 15-25.

があり、その後2012年に、

The Self and Perspective Taking: Contributions and Applications from Modern Behavioral Science.

という書籍が刊行されている。ここでは、2004年の論文を取り上げることにしたい。

 この論文は、まずRFTのあらましが紹介され、後半で、視点取りについての認知的解釈をRFTの観点から再検討するという内容になっている。

 視点取りの話題からは少々脱線するが、RFTの紹介部分のところに分かりやすいがあったので、少し長くなるが、備忘録代わりに引用しておくことにしたい。【訳は長谷川による】

According to RFT, relational responding in accordance with arbitrary stimulus relations is not controlled solely by formal stimulus properties, but by contextual cues. RFTによれば、恣意的に設定された刺激関係に対応した関係反応は、その刺激の形態的特性だけでなく、文脈刺激によっても制御される。For example, if you are instructed that ‘A is the same as B, and B is the same as C’, then as a verbally sophisticated organism you will readily derive, without additional information, that ‘A is the same as C’ (although A and C are not physically the same stimulus). 例えば、「AはBと同じで、BはCと同じだ」と教示を受けると、言語を身につけた生活体は、追加の情報なしに(AとCは形態的には同じではないにもかかわらず)「AはCと同じだ」を容易に派生させる。 In the language of RFT, the derived sameness relation between A and C is controlled by contextual cues, in this case the word “same”, the relational functions of which have been established by the verbal community. RFTの用語に基づくと、AとCの間の派生された同一関係は、文脈刺激、この場合は「同じ」という言葉によって制御されている。この「同じ」は言語共同体の中で確立された関係機能である。For RFT, deriving the A-C relation in this case is an example of arbitrarily applicable relational responding because the “sameness” of the relation is arbitrarily applied and can be modified by social whim. RFTによれば、この例におけるAとCの関係は、恣意的に適用された関係反応の一例である。なぜなら、「同一」という関係は恣意的に適用されたものであり、社会の中でいとも簡単に置き換えができるからである。 For example, I could now tell you that ‘A is larger than B and B is larger than C’. In this case, you would derive new relations (‘A is larger than C and C smaller than A’), and this relational response provides an example of the relational frame of comparison (rather than sameness). 例えば、今度は「AはBより大きく、BはCより大きい」と教示したとしよう。この場合は、AはCより大きく、CはAより小さいという新しい関係が派生される。そしてこの関係反応は、同一ではなく、比較の関係フレームの一例となる。

The literature on RFT has identified a number of patterns or families of arbitrarily applicablerelational responding, referred to as relational frames (Hayes, Fox, Gifford, Wilson, Barnes-Holmes, & Healy, 2001). RFTに関する文献は、恣意的に適用可能な関係反応を「関係フレーム」と呼び、さまざまなパターンや仲間を挙げている。Although these frames are distinctive in various ways, they all have the same three defining properties: mutual entailment, combinatorial entailment, and transformation of stimulus function. これらのフレームはいろいろな特徴を持っているが、どのフレームにも3つの共通した特性がある。すなわち、相互的内包、複合的内包、刺激機能の変換である。 Mutual entailment describes the relations between two stimuli or events. 相互的内容は2つの刺激間あるいは事象間の関係について述べたものである。For example, if A in a specific context is related in a particular way to B, then a relation between B and A is also entailed in that context. 例えば、ある特定の文脈において、Aが特定のかたちでBに関係していたとする。そうすると、その文脈のもとではBとAの関係も内包される。Mutually entailed relations may or may not be symmetrical. 相互的内包は対称的の場合もあれば、非対称の場合もある。For instance, if A is the same as B, then the derived mutually entailed relation between B and A is also one of sameness (i.e., B=A). 例えば、もしAがBと「同一」であれば、BとAの間で派生された相互的内包の関係もまた「同一」となる。However, if A is more than B, then a less than relation is entailed between B and A.しかし、AがB「よりも大きい」という場合、BとAの間で内包される関係は「より小さい」となる。

Combinatorially entailed relations pertain among three or more related stimuli. 複合的内包は3つあるいはそれ以上の刺激間に関連するものである。Consider again the comparison example presented previously: ‘A is larger than B and B is larger than C’. 上に挙げた「AはBよりも大きく、BはCよりも大きい」という例を再び取り上げることにしよう。In this case, a larger than relation is entailed between A and C, but a smaller than relation is entailed between C and A. この例では、AとCの間では「より大きい」は内包されるが、CとAの間では「より小さい」が内包される。Combinatorially entailed relations also differ from mutually entailed relations with regard to their specificity. 複合的内包関係は、相互的内包と異なる特有の性質がある。For instance, ‘if A is shorter than B and A is shorter than C’, then the entailed relations between B and C and between C and B remain unspecified (i.e., B and C might be the same, or one might be shorter than the other).例えば、「AはBより短く、AはCより短い」という情報が与えられても、BとC、あるいはCとBの関係は特定できないという性質である(BとCは同じ長さかもしれないし、いずれかが他方より短いかもしれない。
 以上の紹介文で若干気になるのは、「XとYとの関係」と「YとXの関係」という表現のわかりにくさである。少し前に述べたが、この言い回しは「XをYへ対応づける」、「YをXに対応づける」というように変えたほうがスッキリするように思われる。
 もう1つ気になるのは、「同じ(大きさ、長さ)」とか「より大きい」、「より長い」という言語的教示の使用である。子どもの発達のプロセス(「量の保存」など)を見ていると、大きさや長さの概念は、対応づけ訓練の過程で少しずつ身につけていくものであり、後になってから精緻化されていくのである。

 次回に続く。