じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 1月11日、3月31日の定年退職日までの残り日数がついに80日となった。80日と言えば、ヴェルヌの八十日間世界一周が思い出される。80日間で世界一周ができると思えば、定年退職前にもうひと仕事できそうな気もするが、実際は日々雑務に追われて整理・廃棄作業がなかなか進まない。

※1月11日は、定年退職日までの残り日数が80日という点では「出発日」と言えるが、ヴェルヌの小説では10月2日午後8時45分発の列車でロンドンを出発し、80日後の12月21日の同時刻に戻る計画となっていた。(ネタバレになってしまうが、地球を西から東に移動したため、旅行者の1日は、おおむね24時間×80/81の長さとなっていて、1日分の余りは日付変更線通過で解消されていた。)

2018年1月11日(木)


【思ったこと】
180111(木)関係、対応づけ、文脈をめぐる議論(14) 対応づけと順序性

 この連載は、もともと、教養教育科目「行動分析学入門2」の教材作成のための備忘録として開始したものであったが(2017年12月20日の日記参照)、年末年始に執筆していた電子版テキスト「長谷川版・行動分析学入門」の第9章「行動分析学の発展(1)関係フレーム理論」も無事完成し、すでにアップロードも完了している。従来の入門書と異なり、「関係づけ」を「対応づけ」として説明したことと、関係反応を「対応づけ型」、「タクト型」、「選択型」に分けて説明したこと、さらに、「関係フレームづけ」とは「ひとまとまりの反応が勝手に起こりやすくなってしまうこと」と説明したことなど、(自称)ユニークな内容となっている。これにより、関係フレーム理論でいう「相互的内包」や「複合的相互的内包(複合的内包)」が何を意味するのか、関係フレームづけは般化オペラントであることなどが、いくらか分かりやすくなったのではないかと自負している。

 上記の「対応づけ型」、「タクト型」、「選択型」という関係反応の分類であるが、当該章では、その基礎は事物(あるいは事象)二者間の相互比較にあるという点で「対応づけ」にあると述べた。じっさい、3つ以上の事物(事象)の関係は、通常、相互に見比べることによって可能となる。見た瞬間に全体が捉えられるような事物(事象)は、「三者」というよりもひとまとまりの複合刺激として扱われる可能性のほうが高い。

 もっとも、3つ以上の事物(事象)がすべて対応づけに依存しているとは言えないような事例もある。例えば東京駅で新幹線に乗車した時に「この電車は、品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪、新神戸、岡山に止まります」という車内放送があったとする。これは、乗客にとってはこの放送により、自分の目的地が停車駅に含まれているのかどうかを確認することができる有用な情報である。しかし、これだけでは、駅ごとの個々バラバラの停車駅情報(「新横浜→停車」、「静岡→通過」といった情報)であって、目的地以外の停車情報は何の役にも立たないだろう。
 しかし、「この電車は、品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪、新神戸、岡山に止まります」は、6つの駅がその順番に並んでいるという関係反応を派生させる。さらに、
  • 京都を発車したら次は新大阪だ。
  • 新横浜と名古屋と京都で用事があるならば、この順番に下車するのが一番効率的だ。
  • 岡山から新横浜まで行く途中、名古屋を通過する。
ということも派生されるだろう。これらは、特定の駅と駅の間の対応づけが基礎になっているわけではない。

 上記の例は「この動物園では、ゾウ、キリン、ライオン、シマウマが飼育されています。カバやサイは飼育されていません。」という情報とは異なり、順序性が関係づけられた情報である。順序性と言えば、数の学習が浮かぶが、序数としての「1、2、3、...9、10」を覚えることで、例えば「6は3より大きい」、「2と7のあいだに5がある」という関係反応が派生される。この例でも、個別の数同士の対応づけが基礎になっているわけではない。

 次回に続く。