じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月26日の夕刻、生協のショップで「クリスマスローフボン」と「チョコマシュマロ」を半額で売っていたのでまとめて購入。家に戻ってから妻に「ほれ、クリスマスプレゼントを買ってきたぞ」と言ったら、「どうせ半額で買ってきたんでしょう。」と言われた。「どうしてわかったんだ」と尋ねたら、「クリスマスが終わってから定価で買う人なんていないでしょう。」 クリスマスプレゼントの価値も文脈によって変わるという実例。


2017年12月26日(火)


【思ったこと】
171226(火)関係、対応づけ、文脈をめぐる議論(6)文脈とは?(5)

 昨日の続き。

 トールネケ(2013、『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』、武藤・熊野監訳)の「派生的関係反応」の説明の中では、文脈についてさらに専門的な解説がある(翻訳書118頁以降)。
...実際の生活の中では,状況ははるかに複維である。ほとんどの刺激が,それぞれの物理的性質, 個人の学習履歴の中で確立されている直接的関係,そして,個人の関係フレームづけの学習履歴に基づいて,いくつもの異なる潜在的な機能を有している。刺激が, 先に述べたような文脈手がかり(「○○は○○である」,「○○は○○の後ろにある」,「○○は○○の後にくる」など)を通じて関係づけられるとき,実際に働きを発揮するようになる特定の刺激機能は,いくつもの生じ得る機能の中から選び出されることになる。より専門的に表現すれば,特定の関係を与えられたとき,多くの可能性の中から特定の刺激機能だけが変換される,ということになる。
 この部分は、昨年の大学院の授業でも取り上げたことがあるが、受講生にはなかなか理解してもらえなかった。分かりにくいというのは、刺激が機能している時は、あまりにも当たり前すぎて、関係文脈の役割に気づきにくいことが原因ではないかと思われる。特に日本の文化では、文脈は明示されないことが多く、「空気を読む」ことが大切であるとされている。この「空気」というのはまさに文脈そのものである。

 トールネケの120頁では「リンゴ」が例として挙げられているが、ここではそれに代えて「牛の写真」を取り上げてみることにしよう。「牛の写真」を見た時にどのような反応が対応づけられるのかはまさに文脈に依存している。幼児の言語訓練場面であれば「ウシ」という発声が強化される。しかし、精肉売場に牛の写真があれば、豚肉や鶏肉と区別するための弁別刺激として機能する。高原をドライブ中に看板として牛の写真がある場合は、の先に牧場があるという案内板の役割を果たす。このほか、食べ物クイズの最中であれば牛の写真に対しては「牧草」が正解となるし、牛乳瓶のラベルに写真があれば美味しい牛乳であるというイメージづくりに役立つかもしれない。

 次回に続く。