じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 12月17日の朝はよく晴れ、日の出前の東の空には木星と、月齢28.4の細い月が見えた。次の新月は12月18日の15時30分。太陽に近いため、新月の前日の月を眺められるのは滅多にないことだ。なお、月の近くには水星も輝いているはずであったが、肉眼では全く確認できなかった。


2017年12月16日(土)


【思ったこと】
171216(土)将棋と加齢

 昨日までの日記で「加齢に伴い向上・維持する能力を発掘する」というシンポの感想を述べてきたが、プロの将棋は、加齢の影響をもろに受ける世界という点でまことに厳しい。

 このことに関連して、将棋界では最近、いくつかの興味深い出来事があった。

 まずは、今期の竜王戦で羽生善治氏(47歳)が渡辺明氏(33歳)に勝利し、永世七冠となったことである。「永世」の称号自体はそれまでの業績の蓄積と言えるが、年齢的にはまだまだ若手の渡辺明氏に勝利したという点は、47歳になられてもまだまだ「向上・維持する能力」があるということの証明になるのではないかと思われる。

 その羽生善治氏であるが、今年に入ってから、菅井竜也氏(25歳)に「王位」、さらに中村太地氏(29歳)に「王座」のタイトルを奪われ、竜王戦挑戦時には「棋聖」のみの一冠になっていた。そろそろ世代交代かと思われた矢先に竜王に復位されたというのはスゴイことだと思う。

 その後、将棋のA級順位戦のほうで、全勝で首位を独走していた豊島将之氏(27歳)が連敗したことにより、12月16日時点では、なっなんと、
  • 5勝2敗:羽生、豊島
  • 4勝2敗:久保
  • 4勝3敗:佐藤康
  • 4勝4敗:渡辺明
という成績順となり、羽生善治氏が自力で名人戦挑戦者になれる可能性が出てきた。もし、現名人の佐藤天彦氏(29歳)から名人位を奪取することにでもなれば、相当の話題になることだろう。

 こうしてみると、将棋の世界では40歳後半でもまだまだトップの力を維持できる可能性のあることが分かるが、見方を変えれば、それが可能なのは、羽生、ひふみん、大山といったごく一部の天才棋士だけであり、大半の棋士は40歳をすぎればじわりじわりと後退し、C級2組のあたりで何年か踏ん張った後にフリークラス入り、引退という道を辿らざるを得ないようである。

 あと、これは私の思い込みかもしれないが、持ち時間の長い将棋と早指し将棋では、前者のほうが年配棋士向きで、早指しのほうは若手棋士向きという特徴があるような気がする。早指し将棋では、長年の経験に基づく「勘」が役立つこともあるが、プロのレベルになると、ほんのちょっとした見落としが致命的になるため、短時間でいろいろな筋を読み切る力が優れた若手のほうが有利になるのではないかと思われる。最近、中学生プロ棋士の藤井聡太四段が本戦トーナメント出場を決めた朝日杯将棋オープン戦は、「持時間各40分(チェスクロック使用) 切れたら1分」という早指しになっており、2016年も若手の八代弥氏(23歳)が 優勝している。

 なお、将棋の順位戦自体は、C級2組から、全勝に近い勝率を上げたうえで上位の級に勝ち上がっていく必要があるので、いくら強い若手棋士でもすぐには名人になれない仕組みになっている。とはいえ、今期のA級には、稲葉、広瀬、豊島といった若手(渡辺明氏は貫禄がありすぎるが年齢的には若手)が入っており、一世代上の棋士たちと互角にわたりあっている。B級1組のほうでも糸谷哲郎氏が現時点で6戦全勝となっていて来期のA級入りはほぼ確実と思われる。将棋のことをあまり知らない人でも、20歳代から30歳代前半の若手棋士たちと、30歳代後半より上の中堅や羽生世代の棋士たちとの世代間の対決という構図で捉え、棋譜は分からなくても、感想戦やインタビューでの言葉に触れるだけで大いに得るところがあるのではないかと思う。