じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月2日は、心理学の概説科目の最終回(小テスト)であった。この講義の受講生は例年70名〜90名前後であったが、今年度は4学期制施行に伴い急増し、履修登録者数は263名にのぼり、収容人員の多い26番教室に変更させてもらった。
 10月以降の3学期、4学期にも講義科目を担当するが、文法経講義棟の大教室を使用するのはこれが人生最後となる見込み。


2017年8月2日(水)


【思ったこと】
170802(水)行動分析学の用語統一議論(3)「好子か強化子か」、「嫌子か弱化子か」という議論(2)

 昨日の続き。「好子か強化子か」、「嫌子か弱化子か」という議論についての私の意見は、長谷川版補遺に述べた通りである。結論を先に言えば、
  1. 「好子」、「嫌子」は、最良とは言えないまでも、現状では最善の呼称である。すでにある程度定着しており、今さら呼称を変更する必然性は見当たらない。
  2. 「強化子」、「弱化子」という呼称は、「強化をもたらすのが強化子、弱化をもたらすのが弱化子」というように誤解される恐れがあり、不適切である。
というのが私の考えである。

 行動分析学の概念は、機能的に定義されることが最も適切と言えるが、「強化子」は必ずしも強化機能を有するわけではないし、「弱化子」が弱化機能を有するわけではない。行動の直後に強化子が消失すれば行動は弱化されるし、行動の直後に「弱化子」が消失すれば行動は強化される。強化や弱化と同じ言葉に「子」をつけるというのは、初学者に混乱をもたらす恐れがあるように思う。

 かつて「強化子」は「正の強化子」、「弱化子」は「負の強化子」と呼ばれていたことがあった。補遺に述べたように、この「正の」、「負の」というのは、「プラスした時の」、「マイナスした時の」という意味であり、漢字だけで表せば「加算型強化子」、「減算型強化子」ということになる。しかし、これでは、わずか2文字で済む「好子」、「嫌子」をそれぞれ6文字に増やすことになってしまう。文字数を増やすという必然性は見当たらない。

 以上に加えて、「阻止の随伴性」を議論する場合、「強化子」や「弱化子」という呼称を使うと、
  • 嫌子出現阻止の随伴性による強化→弱化子出現阻止の随伴性による強化
  • 好子消失阻止の随伴性による強化→強化子消失阻止の随伴性による強化
  • 嫌子消失阻止の随伴性による弱化→弱化子消失阻止の随伴性による弱化
  • 好子出現阻止の随伴性による弱化→強化子出現阻止の随伴性による弱化
というように変更せざるを得なくなるが、これではまるで早口言葉であり、議論の最中にもしばしば言い間違えが起こる可能性が高い。


 次回に続く。