じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 4月24日の午前中、本部棟6階で全学の委員会が行われた。写真は6階バルコニーと会議室の窓から眺める新緑。
  • 左上:北方面
  • 左下:北西方向
  • 右上:北東方向
  • 右下:東方向
 来年度は定年退職となるため、この場所からの新緑はこれで見納めとなる。

2017年4月24日(月)



【思ったこと】170424(月)心理パラドックス(3)一夫一婦制と一夫多妻制

 4月20日の続き。三浦俊彦先生の『心理パラドックス 錯覚から論理を学ぶ101問』(二見書房)の中に、「一夫一妻のパラドクス」というのがあった(問題番号015)。

一夫多妻制から一夫一婦制に移行して、男と女のどちらが損をし、どちらが得したのだろうか?

このクイズに対しては「一夫一婦は男が損し、女が得」という回答が圧倒的に多いと言われる。しかし、よく考えてみると、一夫多妻制で得をするのは女のほうであり、損をするのは男であるというのがパラドックスになっている。理由は、
  • 女は、他の女との利害衝突なしに、高レベルの男を自由に選べる。
  • 男は、少数のモテる男以外は結婚相手がいなくなる。子孫を残すこともできない。
といったもので、確かに説得力がある。

 仮に男全体の中で、高収入のモテる男が1/4いたとして4人ずつの女性と結婚したとする。この場合、女性は全員既婚者となれるが、男性の3/4は結婚相手を失う。「一夫多妻制で男は得をするか」と考える時には、「一夫多妻」の「一夫」に当てはまる男のことばかりに注意が向いてしまうが、「男は得をするか」を考える時には、結婚できない男のことも考えなければならないというクリシンの例となる。


 本書では書かれていないが、「一妻多夫」になったら男が得をし、女は損をするのかというクイズも同様である。「一夫多妻」と「一妻多夫」の大きな違いは、子どもを産める数にある。一人の女性が産める子どもの数は一夫一妻でも一妻多夫でも変わりないので、男が自身の子孫を残せるかどうかという点においては一妻多夫のほうが不利となる。いっぽう、女のほうは、(社会に進出するのではなく家庭で子育てをするという役割を担う限りにおいては)一妻多夫のほうが稼ぎ手が多いので楽な生活ができるかもしれない。

 いずれにせよ、そもそも、「どちらが得をし、どちらが損をしたのか」という問題が普遍的に成り立つのかどうか疑わしい。それぞれの時代の文化や経済の仕組みに依存して異なる正解が得られることになるだろう。

 なおウィキペディアの該当項目を見ると、一夫多妻を合法、もしくは「違法だが犯罪とならない」とする国はアフリカ、中東、ロシアなどを含めてかなりの面積を占めている。日本でも3世紀頃から一夫多妻制の社会が確認できるという。イスラム圏で一夫多妻が認められている一因には「初期のイスラム社会(イスラム帝国)ではイスラム勢力の征服戦争によってイスラム教徒男性の戦死者が多かった。そのため、イスラム法ではイスラム以前の無制限の一夫多妻制に、4人までという人数制限と、すべての妻を平等に扱うという掟によって一定の制約を与えた上で、聖戦によって生じた寡婦を既婚者が娶(めと)ることを推奨した。」という背景があるようだ。

 いっぽう一妻多夫制のほうは、人間のみならず鳥類・哺乳類全体を見ても、基本的には比較的少ない配偶システムであると記されている。「男性は得た配偶者の数が繁殖の成功度、すなわち子供の数に直結するが、女性は配偶相手の数を増やしたとしても直接に繁殖成功度に結びつくわけではないので、女性が多くの配偶者を求める進化的な淘汰圧は働かなかったと考えられている。」というのがその理由であるが、「一妻多夫制をとったとき、生まれる子供の生存率が高いことが、野外観察や実験データから示されている。」という記述もある。
一妻多夫は、ヒマラヤ近辺のヒトでは減少傾向にあるが、通常の結婚制度である。チベット、インドの南の一部の地方、ナイジェリア、ネパール、ブータン、スリランカ、北極圏の一部、モンゴル地方、アフリカとアメリカ州の先住民、ポリネシアの複数の共同体で、伝統的な制度として現在でも存続している。実態は一妻多夫というよりは多夫多妻、いわゆる乱婚と言ったほうが正確な地域もある。
となっており、厳しい自然環境地域を中心にいまなお存続しているようだ。