じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 農学部正面(写真左)と本部棟南東側(写真右)のカイノキの雄花。カイノキは雌雄異株であり、オス樹の雄花が大量の花粉を飛ばしている。一部は時計台脇のメス樹まで到達している模様。メス樹がたくさんの実をつけるとその年の紅葉はイマイチとなる。

2017年4月17日(月)



【思ったこと】170417(月)関係フレーム理論をめぐる議論(13)刺激機能の変換とレスポンデント条件づけ(3)

 刺激機能の変換とレスポンデント条件づけについては、昨年6月(6/2〜6/12)に詳しく考察したことがある。この時の結論部分を以下に再掲しておく。
上記は、従来の条件づけ原理(レスポンデント条件づけ、オペラント条件づけ)以外のプロセスによっても、刺激機能の変換が起こりうることを明示している。もともと条件づけは「人や動物に対して、一定の操作により特定の反射や反応を引き起こすよう学習させることである。」と定義されており、派生的刺激関係がもたらす刺激機能の変換も、この意味では条件づけ、すなわち、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけに続く「第三のタイプの条件づけ」と呼べないこともない。もっともそのような変換が生じるプロセスは、レスポンデント条件づけやオペラント条件づけとはかなり異なっており、しかも、これまでのところ、人間に限って生じる変容であると考えられている。条件づけの概念を拡張したほうがよいのか、それとも、条件づけの原理はレスポンデント条件づけとオペラント条件づけに限定して体系化しておき、それらに影響を与える新たな変容のプロセスとして別の枠組みで論じたほうがよいのか、議論が分かれるところではないかと思う。

 いずれにせよ、これまでの条件づけの原理では、ある中性刺激が条件刺激となったり、習得性好子(あるいは習得性嫌子)になったり、弁別刺激になったりすることは十分に説明でき、かつ影響を与えるプロセス(あるいはコントロールする手法)を明らかにすることができた。派生的刺激関係がもたらす刺激機能の変換は、これとは全く別のプロセスで、ある刺激に対して不安が生じたり、逆に、その不安反応を、古典的な消去操作以外の方法でも減じることができる可能性を示している点で、理論的にも、臨床場面への応用という点でもまことに興味深い。但し、本文にも記されているように、「...it is not enough to know that this is an ability human beings learn and that it has certain consequences. We need to know how contextual factors influence this behavior.|人間が学習を通じて身につける能力だということを知って,これが特定の結果を持つと知るだけでは,十分とは言えない。私たちは,どのようにして文脈的な要因がこの行動に影響を与えるのかを知る必要がある。」 という点に留意しなければならない。従来の条件づけ原理で説明困難であるような不安症状の発現を何でもかんでも派生的刺激関係でこじつけてしまったのでは、何の解決にもつながらない。【もちろん、過去の履歴をたどることには限界があり、現在の症状は現在の文脈の中で解決していくことのほうが生産的である。過去に何が起こったのかをいちいち調べ上げなくても、特定刺激がいまどのように機能しているのか、さえ確認できれば解決は可能であろう。】
 刺激機能の変換がもたらす行動変容は、レスポンデント条件づけがもたらす行動変容との相乗効果で加算的に働く場合もあれば、拮抗的に働く場合もありうる。レスポンデント条件づけがもたらす行動変容は、レスポンデント消去(系統的脱感作など)により取り除くことが可能であるが、「派生的関係反応+刺激機能の変換」ではそうはいかない。また、レスポンデント条件づけ自体は文脈の影響を受けにくいのに対して、「派生的関係反応+刺激機能の変換」は文脈に大きく依存している。臨床場面ではこのあたりの見極めが大切ということになるのだろう。