じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 本部棟前のハクモクレン。今が見頃。

2017年3月26日(日)



【思ったこと】170326(日)徹底的行動主義の呼称の起源(7)

 昨日に続いて、

Schneider, S. M., & Morris, E. K. (1987). A History of the Term Radical Behaviorism: From Watson to Skinner. The Behavior Analyst, 10, 27-39.

の要約と感想。

 1970年代〜1980年代になると「radical behaviorism」は、行動分析学の関連誌(Behaviorism、The Behavior Analyst、Journal of the Experimental Analysis of Behaviorなど) でも同じ意味で広く使われるようになった。当初ワトソンの行動主義の特徴づけに使われていた「radical」という修飾語は、スキナーに受け継がれたことになった。また、これに伴い、「radical」に含まれる「過激な」といったネガティブな意味はなくなり、もっぱらポジティブな「thoroughgoing(徹底した)」という意味で使われるようになった[]。
]Michael, J. L. (1985). Behavior analysis: A radical perspective. In B. L. Hammonds (Ed.), The master lecture series: Vol. 4. Psychology and learning (pp. 99-12 1). Washington: American Psychological Association.

 以上をふまえて、本論文36頁では、以下のように結論されていた。
In particular, Skinner shares with Watson the view that consciousness is a nonexistent entity, but that the events labeled "conscious" are, in principle, amenable to scientific analysis. This latter feature of Watson's and Skinner's views―"radical" or not―can be considered important in setting their respective radical behaviorisms apart from methodological behaviorism.


 さて、原語の「radical」の呼称の起源はこれまで述べた通りであるが、日本語の「徹底的行動主義」はいつ頃から登場したのだろうか?

 私が調べた限りでは、刊行された書籍の中で「徹底的」が初めて登場したのは、

佐藤方哉 (1983). 序論 学習研究の展開.【八木冕(監) 佐藤方哉(編) 現代基礎心理学 第6巻 学習U 東京大学出版会, pp.1-12.】

であったようだ。その3頁では、以下のように説明されている。
a.徹底的行勵主義
 Skinner(1938)は"行動とは,個体(an organism)の働き(functioning)のうちで,外界に働きかけ(acting upon)または交渉をもつ(having commerce with)ものである”と,行動を定義する.この定義からは,行動は他者から観察可能,すなわち顕現的である必要はなく,非顕現的な行動もあることになる.
 そして,行動分析は,あらゆる行動を対象に,“個体はなぜそのように行動するのか"という問いに答えることを目的とするので,当然,非顕現的な行動もその対象となる.非顕現的行動のなかでも特に重要なのは,いわゆる"意識”である. Skinner(1945,1953,1957, 1964, 1969, 1974)によれば, "意識”とは,知覚行動,および内言化した言語行動である。
 したがって, Skinnerは,公共的に観察することのできない出来事は科学の対象とはならないとする方法論的行動主義(methodological behaviorism)を退け,“意識”も行動として分析できるという立場―これをSkinnerは徹底的行動主義(radical behaviorism)とよぶ―をとる.


 次回に続く。