じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 本部棟の北東側にあるハクモクレンが開花直前となっている。2011年の楽天版に、2008年〜2011年までの開花記録があるが、今年はかなり遅い。2月に最低気温氷点下の日が半分近くあったせいだろうか。

2017年3月19日(日)



【思ったこと】170319(日)オドノヒュー&ファーガソン『スキナーの心理学』(31)第4章 徹底的行動主義(13)

 3月18日の続き。

 第4章では、スキナーの特徴を16項目にまとめたあと、何がスキナーの哲学ではないかという議論として、「スキナーは論理実証主義者ではない」という話題が取り上げられている。もっともウィキペディアの当該項目に記されているように、論理実証主義自体は20世紀前半に重要な役割を果たしたが、21世紀に入った現在では「大多数の哲学者は、ジョン・パスモアが言っているように、論理実証主義は「死んでいる、つまり、かつて哲学的運動であったのと同じだけ死んでいる」と考えられているようであり、このような議論が大きな意味を持つかどうかは分からない。いずれにせよ、本書では、
  • スキナーはマッハの影響を受けた。
  • 論理実証主義はマッハの影響を受けた。
  • 論理実証主義はヴイトゲンシユタインには影響を与えたが、スキナーには影響を及ぼしていない。
というように論じられていた【長谷川による要約・改変】

 本書では、著名な研究者がスキナーを論理実証主義者者もしくはその影響を受けているという点に関して次のように反論している。【長谷川による要約・改変】
  • スキナーは、実証性の基準については何も言っていないし、意味のあるなしの区別にもこだわっていない。
  • スキナーの心理学へは論理実証主義の中心的な思想は持ち込まれていない。
  • 心理学用語の操作的定義については何も言っていないし、論理実証主義とはまったく別の分析を進めている。
  • スキナーは、心理学用語を間主観的に定義することに反対の立場だった。言語に関しては、発語やその効果を支配している環境側の変数を科学的に分析しようとしていた。
  • スキナーは、自分の業績を哲学に属する分野のものとは考えていなかった。
  • ホワイトヘツドが若いスキナーに心理学は哲学の発展を忠実に追従すべきだと述べた時に、彼は全面的に反対し、必要なのは心理学的認識論だと反論している。
  • 論理実証主義とスキナーの業績の結びつきは存在せず、したがって、運命共同体的なものではない。
  • 論理実証主義では物理学を科学としてもっとも重視しているが、スキナーは、それとは対照的に、心理学には生物学がもっとも重要だと考えた。
  • スキナーはマッハの生物学的実証主義の影響を受けているが、論理実証主義の影響は受けていないし、彼の理論はそこから引き出されたものではない。


 なお武藤(2006、2011)は、第1章の「機能的文脈主義とは何か」という章で、
  • 一般哲学による分類:論理実証主義、経験論的社会構築主義、形而上学的社会構築主義
  • Pepperによるルート・メタファーの分類:機械主義、機能的文脈主義、記述的文脈主義
  • Skinnerによる行動主義の分類:方法論的行動主義、徹底的行動主義
というように横軸に配置した上で、縦方向で、その距離が思想的類似や相違の程度を表す。いっぽう、
  • 基準A:研究対象を観察・操作可能なもののみとする。
  • 基準B:現実や真理の存在をア・フ・リオリに想定する。
  • 基準C:対象に対する「予測と影響」というゴールをア・プリオリに選択する。
という4層に分けて、二次元上に各主義を配置してその特徴を論じている。それによれば、論理実証主義は基準Aのみを満たすという点で、機械主義の一部と方法論的行動主義のレベルに位置づけられている。いっぽう、形而上学的社会構築主義、機械的文脈主義、徹底的行動主義の一部は、上記基準A〜Cのいずれをも満たすという特徴をもつとされている。この点から、機能的文脈主義は形而上学的な社会構築主義に含まれる一方で、経験論的な社会構築主義や論理実証主義とは異なると論じている。

 なお、徹底的行動主義は論理実証主義ではないという主張については、ウィキペディア英語版の「Radical behaviorism」でも以下のように紹介されている。【長谷川による改編】
Radical behaviorism is often dismissed as logical positivism. Skinnerians maintain that Skinner was not a logical positivist and recognized the importance of thought as behavior. This position is made quite clear in About Behaviorism. A clearer position for radical behaviorism seems to be the movement known philosophically as American pragmatism.


 次回に続く。