じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 2017年1月のウォーキング総括と脳年齢チェック。  2017年1月は、総歩数39万3436歩、1日あたり平均1万2691歩となり基準の1万2000歩を上回った。

※図1はいつもの通り、毎日の歩数を少ない順に左から並べたもの。左端の落ち込みは、その月に何らかの事情で歩数が少なかった日があることを示す。右端はその月に最も多く歩いた日の歩数。グラフが12000のあたりで水平になっているほど、毎日の歩数がほぼ安定していたことを意味する。

 2016年12月と比べると、2017年1月の平均歩数は1日あたり28歩ほど少なくなった。いっぽう、毎日1万2000歩以上歩いた日数は、12月が24日/31日、1月が25日/31日となっており、わずか1日の違いではあるが、1月のほうがむしろ安定して1万2000歩を維持できていたとも言える。年末年始の帰省時の行動がこれらの差をもたらしたものと思われる。

 なお2017年11月から、脳年齢チェックの結果も集計することにした。下の図は、その日の年齢を若い順に並べ直したもの。40歳未満という判定を受けた日数は11月が3回、12月が14回、1月は21回というように次第に増えている。中央値のほうも、11月が43歳、12月が41歳、1月は38歳というようにかなり「若返って」きた。あくまで同じ課題に対する練習効果を反映したものと思われるが、どこまで若返ることができるか次月以降が楽しみである。

2017年1月31日(火)




【思ったこと】
170131(火)ACTの価値論(7)価値vs.ゴール(3)

 昨日の日記で、ハリス(2015)の、

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』(岩下慶一訳、筑摩書房、1700円)

を取り上げた。引用箇所には若干の訳語の不統一や、価値と目標に関する疑問があったので、念のため英語の原書の該当部分をチェックしてみた。

Harris (2007/2008). The happiness trap: how to stop struggling and start living

 まず訳書の205頁:
 価値と目的を混同しないことは大切だ。価値は私たちが目指す方向であり、終わりのない進化のプロセスだ。愛に満ちた気遣いのあるパートナーになることは価値のひとつだ。それはあなたの人生における終わることのないプロセスだろう。愛と気遣いを止めた瞬間、もはやその価値に沿っては生きていけないことになる。
 一方、目標は望んでいる成果であり、達成可能なものである。たとえば結婚することは一つの目標だ。達成されればそれで終了であり、目標リストの中から消去される。結婚してしまえば、愛情深く優しかろうと、冷たくぶっきらぼうであろうと、あなたは既婚者だ。
 価値とは、西を目指して旅するようなものだ。どこまで行こうと西はさらに向こうまで広がっている。一方、目標は山や川のようなものだ。そこに行ってしまえば、それで目標達成なのだ。 より良い仕事に就きたいというのも目標だ。仕事を得たら目標は達成だ。しかし、全力で仕事がしたい、仕事に没頭したいなどの望みは、価値からくるものだ。
は、
It's important to recognize that values are not the same as goals. A value is a direction we desire to keep moving in, an ongoing process that never reaches an end. For example, the desire to be a loving and caring part ner is a value. It's ongoing for the rest of your life. The moment you stop being loving and caring, you are no longer living by that value.
A goal is a desired outcome that can be achieved or completed. For example, the desire to get married is a goal. Once achieved, it's done and can be crossed off the list. Once you're married, you're married, whether you're loving and kind, or hard-hearted and uncaring.
So a value is like heading west. No matter how far you travel, there's always farther west you can go. Whereas a goal is like the mountain or river you wish to cross on your journey. Once you've gone over it, it's a "done deal."
という原文が対応している。この原文を見る限り、「目的」と「目標」の原語はいずれも「goal」となっている。但し、最初の段落では「goals」というように複数形となっており、第2段落以降は「a goal」となっている。複数形を「目的」、単数形を「目標」というように区別しているのであれば分からないでもないが、いずれにせよ、日本語においても、価値や目標が1つだけではないという点に留意しておく必要がある。

 もう1つ、ヴィクトール・フランクル『夜と霧(Mans Search for Meaning、原題は …trotzdem Ja zum Leben sagen:Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager』に言及した部分:
 興味深いのは、死の収容所でもっとも長く生き延びた人々は、肉体的に健康な人々ではなく、人生の目的としっかりつながった人々だったことだ。自分が価値を置くものとつながっている人々、つまり子供たちへの愛情や、書きたい本などがある人々は、これらのつながりに生きる目的、あらゆる苦痛に耐え忍ぶだけの価値を見いだしていた。価値とつながっていなかった人々はすぐに生きる意欲を失った。
 フランクルの目的意識はいくつかあった。彼は愛する妻に深い価値を置いており、生き延びていつの日か再び彼女に会うのだという強い意志を持っていた。しばしば彼は、雪の中の厳しい仕事のシフトの中で、凍傷から来る足の苦痛と、ひどく殴打されたことによる体の痛みに苦しみながら、妻の姿を心に呼び起こし、彼女をどれだけ愛しているかを考えた。愛の感覚はフランクルを持ちこたえさせるに十分だった。
 フランクルのもう一つの価値は、他者を助けることだった。彼はキャンプにいる間、他の囚人が苦痛に対処するのを手助けした。彼らの苦悩に熱心に耳を傾け、優しさと創造性に満ちた言葉を投げかけ、病や死の床にある人々の世話をした。特筆すべきは、人々が心の奥深くにある価値とつながることを助け、人生の意義、目的を見つけられるようにしたことだ。これによって人々は生き延びる強さを得た。フリードリヒ・ニーチェが言ったように、「生きる意味を見出した人は、大抵のことは耐えられる」のだ。
については
One of the most fascinating revelations in this book is that, contrary to what you would expect, the people who survived longest in the death camps were often not the physically fittest and strongest, but rather, those who were most connected with a purpose in life. If prisoners could connect with something they valued, such as a loving relationship with their children or an important book they wished to write, that connection gave them something to live for, something that made it worthwhile to endure all that suffering. Those who could not connect with a deeper value soon lost the will to live.
Frankl's own sense of purpose came from several sources. For exam ple, he deeply valued his loving relationship with his wife and was de termined to survive so he could one day see her again. Many a time during strenuous work shifts in the snow, with his feet in agony from frostbite and his body racked with pain from brutal beatings, he would conjure up a mental image of his wife and think about how much he loved her. That sense of love was enough to keep him going.
Another of Frankl's values lay in helping others, and so, throughout his time in the camps, he consistently helped other prisoners to cope with their suffering. He listened compassionately to their woes, gave them words of kindness and inspiration, and tended to the sick and the dying. Most importantly, he helped people to connect with their own deepest values so they could find a sense of meaning, of purpose. This would then quite literally give them the strength to survive. As the great philosopher Friedrich Nietzsche once said, "He who has a why to live for, can bear almost any how."
となっている。
 訳文の最初の段落「人生の目的としっかりつながった人々」という部分は原文では「those who were most connected with a purpose in life」となっていて、ここでは「goal」ではなく「a purpose」が使われていた。

 第二段落の「フランクルの目的意識」も原文では「Frankl's own sense of purpose」というようにやはり「purpose」が使われている。

 では、「purpose」はどう定義されているのかが気になるところだが、この24章で「purpose」が使われているのは、この章では上掲引用箇所のほか、次の節の、
Values provide a powerful antidote, a way to give your life purpose, meaning, and passion.
という一箇所のみとなっていた。この部分は「目的」と訳されていた。
価値はこういう気分への強力な解毒剤となり、人生に目的と意味と情熱をもたらしてくれる。

 なお、原書には索引がつけられているが「purpose」はそのリストに含まれていない。翻訳書には索引はつけられていない。

次回に続く。