じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 先日の台風10号、12号に続いて、今度は台風13号が接近している。今回の台風はあまり発達せず、最低気圧は990hPA程度までと予測されているが、関東から中部地方にかけて前線がかかっており、台風がこの前線を刺激して大雨を降らせる恐れがある。じっさい、画像右端にあるように、9月7日朝06時の時点では、台風から離れた関東地方各地が降水量Top10のうち5の箇所を占めている。

2016年09月06日(火)



【思ったこと】
160906(火)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(108)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(44)「般化オペラント」についての復習(27)「般化オペラント」のルーツ(12)

昨日も述べたように、般化模倣についてはもう少し他の視点に目を向けておく必要があるように思う。1つはBanduraの模倣理論、もう1つはマロットらが主張する「模倣性好子(Imitativer einforcers)」という概念である。

 このうちBanduraの模倣理論については、

メイザー,J.,E.(著)磯博行・坂上貴之・川合伸幸(訳). (1996). メイザーの学習と行動. 二瓶社. [Mazur, J. E. (1994).Learning and behavior. NJ: Prentice-Hall.]【日本語訳の最新版は2008年刊行の日本語版 第3版

に分かりやすい解説がある【第1版283〜284頁】。要点をまとめると以下のようになる。
  1. Banduraは、般化模倣理論を他の理論と同じく不適切だと主張した
  2. 彼の有名な4歳児を使った攻撃行動の実験(Bandura, 1965)では、
    • モデルの行なったことに対する結果の違いが子どもの行動に影響を及ぼしているが、般化模倣理論ではこの現象を説明できない。
    • 観察を通じて新しい行動を「学習」するのに、強化は必ずしも必要ではないが、これらの新しい行動を「遂行」するのには、強化を期待することが重要である。模倣の般化理論には模倣行動の学習と遂行を区別する基準を設けていない。
  3. Banduraの模倣理論(1969, 1986)は、個人の行動としては観察不可能であるものを想定しており、認知理論に分類される。
  4. Banduraの模倣理論では(1)「注意の過程」、(2)「保持の過程」、(3)「運動再生産の過程」、(4)「誘因と動機づけの過程」という4つの要因が主張されている。
となる。
 メイザーの本ではBanduraの理論についてさらに詳細な論考があり、結論的には、般化模倣理論でも、なぜ子どもは強化されたモデルを模倣し、罰されたモデルを模倣しないのかについて簡単に説明できると論じられている。

 メイザーの本の中でも言及されているが、一口に模倣といっても、「全く新しい行動を真似する」というケースと、ある状況・文脈のもとで、すでに身につけている行動を活発に行うというケースは区別しておく必要があるように思う。Banduraの攻撃行動の実験は、すでに身につけている攻撃レパートリーを、ある状況・文脈のもとで活発に行うというものであり、新しい攻撃のしかたを習得したわけではない。この連載で論じている般化オペラントは、定義上、新しい反応の習得に関わる現象であり、このことに焦点をしぼって復習を進めていくことにしたい。

 次回に続く。