じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 寒冷渦の南下と台風10号により発生した線状降水帯により、岡山では29日、67.5ミリの降水量を記録した。これにより、8月の積算降水量は140.5ミリとなり平年値87.4ミリを大きく上回った。

 なお8月29日は1日を通じて気圧が1000hPaを下回った。8月の平年値(現地標高)は1007.0hPa、1年間の平均値は1013.0hPaとなっており、これほど長時間にわたり低圧状態が続くのは珍しいのではないかと思う。気圧が低いことで体調不良になる方にとってはお気の毒な1日となった。

2016年08月29日(月)



【思ったこと】
160829(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(102)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(38)「般化オペラント」についての復習(21)「般化オペラント」のルーツ(6)

昨日の続き。

 オペラント反応クラスを定義する際に、形態的な類似性を重視するか、機能的に定義するかという問題は、通常はあまり大きな問題にはならない。スキナーボックスを用いた実験的行動分析研究では、レバー押しやキーつつきは実験者側の都合により操作的に定義されているが、これは機能的な定義と言える。もちろん、ラットによっては、前足ではなく鼻先やシッポでレバーを押す個体も出てくるかもしれない。そのような形態的に異なる反応であってもレバーを押すことができさえすれば反応が1回生起したと見なされる。とはいえ、通常、殆どすべてのラットは前足でレバーを押す。当初鼻先で押していたラットもいずれ前足で押すようになる。これはおそらく、
  • シェイピングの段階で、前足で押す行動またはそれに(形態的に)近い行動が実験者によって強化される。
  • レバーを押すという機能を有する諸行動のなかで、前足で押す行動が最も省エネであり、高速で反応を続けることができる(シッポでは何度も押すことはできない)。
 なお、私がかつて、ニホンザルを使って実験させていただいた中では1頭だけ、指先ではなく口先でパネルキーを押すという行動を続けた個体があり、そのままデータをとり続けた。機能的な定義という立場から言えば、指先でも口先でも同じ反応と言える。但し、見本合わせ課題のように、パネル前面に種々の刺激を提示するような実験をする場合、口先でパネルキーを押す個体は、指先で押す個体に比べると、手がかりとなる刺激が目に入りにくく学習ができないという可能性もある。

 機能的な定義についてはいくつかの素朴な疑問が出てくる。

 まず、行動がどのように機能しているのかというのは、通常、その行動を十分に観察しABC分析を行った上で初めて分かることである。ということは、事前には暫定的な定義しかできないという可能性がある。

 第二に、行動がどのように機能しているかということと、行動がどのように強化されているのかということを分離するのが難しいケースがある。

 第三に、何が機能しているのかという内容が視点によって変わってしまう可能性がある。例えば、農耕用の牛に鋤をつけて畑を耕すという場合、牛自体は「畑を耕す」ために動いているわけではない。単に、脚を踏ん張りながら前に進もうとしているだけである。ダイエットや健康増進行動などの場合も、当人は特定行動が目的達成のために機能していると思い込んでいるかもしれないが、実際には何の成果も上げていない場合がある(←但し、機能的定義と目的論的定義は異なる。念のため)。

 このほか、先行事象A(antecedent)→標的行動B(behavior)→結果事象C(consequence)という枠組みで分析するといっても、実際には、AとCのところにも行動が介在している場合があり、何をもって要素や単位と見なせるのかが分かりにくい場合もある。例えば、スキナーボックスで、赤または青のライトが提示され、それに対応したキーをつつくと餌が与えられるという弁別行動においては、「キーをつつく」という行動以外に、ライトの色を見る、対応するキーのほうを向く、餌が与えられる窓に首を突っ込む、餌を食べるといった行動が次々と生じている点にも留意する必要がある。

 次回に続く。