じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月5日(金)は文学部・オープンキャンパスが開催された。文法経講義棟の各教室のうち、20番教室が主会場、それ以外の大教室は中継会場となり、1800人以上のご参加があったという。
  • 写真左2枚:昼休み前後の時計台前。いつもとは違う雰囲気。
  • 写真右上:私が会場担当者となった26番教室(400名収容)の準備風景
  • 写真右下:中継センターとなった教室

2016年08月05日(金)



【思ったこと】
160805(金)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(85)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(21)「般化オペラント」についての復習(4)ランダムな反応系列をつくる

 昨日に続いて、

Hayes, S. C., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (Eds.). (2001). Relational Frame Theory: A Post-Skinnerian account of human language and cognition. New York: Plenum Press

の23頁のあたりから行動のクラス(反応クラス)や「般化オペラント」に関する記述を閲覧していくことにしたい。

 さて、これまで述べてきたように、「オペラント」は、形態的(形相的)な類似性の基準(formal)によっても、機能的な基準(functional)によっても定義しうる。実験的行動分析の場面では両者の区別は必ずしも必要でない場合もあるが、だからといって軽視してよいというわけではない。「オペラント」の中には、形態的には著しい差違があっても同じように機能する反応があり、これらはしばしば、「般化オペラント(generalized operants)」、あるいは「overarching operants」、「higher order operants」などと呼ばれる。なお、原書23頁で引用されている、

Barnes-Holmes, D., and Barnes-Holmes, Y., (2000). Explaining complex behavior: Two perspectives on the concept of generalized operant classes. The Psychological Record. 50, 251-265.

は、タイトル部分を検索語とすることにより無料で閲覧可能となっている。

 この形態的には著しい差違がある「般化オペラント」としてまず例示されているのが、Neuringer(1986)やPage & Neuringer (1985)の行動変動性に関する実験であった。
  • Page, S., and Neuringer, A., 1985, Variability is an operant. Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes, 11, 429-452.
  • Neuringer, A., 1986, Can people behave "randomly"?: The role of feedback. Journal of Experimental Psychology: General, 115, 62-75.
 この種の実験では、一定の長さの反応系列を区切り、直前とは異なった新しい反応系列が生起した時に強化されるようになっている。例えば、2つのボタン【左(L)と右(R)】のいずれかを5回押し続けたところ、「LRLRL」という系列になったとする。この場合、次の5回でまたまた「LRLRL」と押しても過去と同じなので強化されないが、例えば「LLLRR」というように押せば新しい反応系列となるので強化される。こうした形で、ヒトやヒト以外の動物を対象に、よりランダムな反応系列を生成させることができる。

 ちなみにこうした「ランダム生成」については私自身も取り組んだことがあり、

長谷川 (2008). 乱数生成行動と行動変動性:50年を超える研究の流れと今後の展望. 行動分析学研究, 22, 164-173.

でその経緯を総括したことがあった。その中では上掲のNeuringerらの論文も当然引用されている。

こうした実験では、ヒトやヒト以外の動物が本当に反応系列が「ランダム」になるように行動していたのかどうかは分からないという点に留意する必要がある。というか、有限な反応系列では「これがランダムで、これは規則的」といった区別をすることは数学的に間違った判断をしてしまうことになる【「12345」も「15926」も純粋なランダム系列の中では同じように出現する。「12345」はランダムでないとか「15926」はランダムだといった区別はできない】。但し、長谷川やNeuringerらが行った方法を使えば、少なくとも、画一的(ステレオタイプ)な反応系列を起こりにくくすることで、結果的に、より柔軟な行動パターンを作り出せるような効果がある。

 元の話題に戻るが、過去に生起していない新奇な反応系列を強化することが可能であった場合、これを、「形態的に類似した反応クラス」が強化できたと見なすわけにはいかない。このような場合の反応クラスは、形態的類似性の基準ではなく、機能的に定義するほかはない。


 次回に続く。