じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文学部3階から眺める中庭花壇。今年の夏は、ヒマワリ、ペチュニア、ルドベキア、ブルーサルビア、ホウキギ、ジニア各種、キンギョソウ、ラムズイヤー、マツバボタン、アサガオ、タチアオイなど、色とりどりの園芸植物で賑わっている。すべて実生、もしくは多年草のため、水やりの必要は無さそう。

2016年07月12日(火)


【思ったこと】
160712(火)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(67)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(3)アナロジーとは?

 7月11日の続き。

 本書では、まず、アナロジーについて詳述されている。「アナロジカル(類推的)に思考する能力は、人間の言語と認知にとって基本的な重要性を持つものと広く見なされている。」とした上で、
The core idea is that knowledge is transferred from one field of experience (often called "base" or "vehicle") to another (usually called "target"). The base is the field of experience which is most familiar; the target is then the field where knowledge is to be expanded, which is done by relating the two fields. 【原書93頁】
...中心となる考え方は,知識が1つの経験領域(しばしば「ベース」または「ヴィークル」と呼ばれる)から別な経験領域(通常「ターゲット」と呼ばれる)へと転移(transfer) される,というものである。ベースは,馴染み深い経験の領域である。では,ターゲットはというと,知識が展開される場である。知識の展開は,2つの領域を関係づけることによって行われる。【翻訳書129頁】
というように、「ベース(ヴィークル)」、「ターゲット」、そしてそれらの関係づけが重要な役割を果たしていると論じている。通常、「ベース」は馴染み深い現象、当たり前のように受け入れられている現象であり、「ターゲット」は未知の現象、「説明」が求められているような現象である。ここでいう「説明」は必ずしも予測や制御に有用な「説明」とは言えないが、未知の対象の特徴に対する理解を助け、周辺領域との関連づけを容易にするといった効果をもたらす可能性があるように思う。

 本書ではよく知られた例として、太陽系と原子とのアナロジーが挙げられていた。この場合は、太陽系がベースで原子はターゲットであり、「どちらもが「ある部分がほかの部分の周りを回る」という空間的関係を持(つ)」という類似性がある。後述されているように、「もしも,ある個人が,原子をこのような形で(アナロジーが単純化しで描写しているような感じで)理解していて,太陽系がどのように働いているかを知らなかったとしたら,私たちは,その人に対して,「太陽系は原子のようである」と言って,原子をベースとしながら太陽系をターゲットとして用いることができる。」というように、条件によっては、ベースとターゲットを逆にすることもできる。

 「今まで一度も見たことのない」とよく言われるが、厳密に言えば、どんなものにも似ていないモノというのはそもそも知覚できないし、他者に対して何を見たのかを伝えることができない。われわれは、初めて見たモノに対しては、まずは「○○に似ているが、ここが違う」というように反応する。講義の際には、「『万里の長城』を一度も見たことの無い人に、どんなものか説明してください」(他に『ピラミッド』、『金閣』などなど)といった例を挙げることがある。どの事例でも、説明者は、「○○に似ている」という形の類似性と、程度表現の形容詞を使わざるをえない。

 言葉が全く通じない人と交流する場合でも、共通体験があるか、もしくは、目の前に現物が揃って言えば、アナロジーを活用することでコミュニケーションをはかることが可能であろう。というか、お互いに相手の国の言葉を学ぶ際には、アナロジーは欠かせない。

次回に続く。