じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月21日は夏至。夏至の正式な定義は太陽が黄経90°になる瞬間であり、今年の場合は朝07時34分。夏至の日は、南中時の高度が最も高い日でもあり、岡山では78.8°の高さから照りつける。写真は11時15分頃の影の様子。南中時刻は12時06分となっているため、影は北西方向に伸びている。

 なお、夏至の日付は、1992年から2022年までは、西暦年を4で割った余りが0〜2の年は6月21日、余りが3の年は6月22日となる。2023年の夏至は日本時間で6月21日23時58分頃となっているが、マイナスのうるう秒が頻繁に挿入されれば6月22日にずれ込む可能性もある【これまでのところ、マイナスの閏秒(負の閏秒)が挿入されたことは無い】。いずれにせよ、東経135°以西の地域では、2023年6月21日よりも22日のほうが南中時の高度が高く、昼間が長くなるはずだ。

2016年06月21日(火)


【思ったこと】
160621(火)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(52)派生的関係反応(24)刺激間のさまざまな関係(3)

 昨日に続いて、

Dougher, M. J., Hamilton, D., Fink, B., & Harrington, J. (2007). Transformation of the discriminative and eliciting functions of generalized relational stimuli. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 88, 179-197.

の内容を紹介していきたい。

 実験1のPhase 4では実験群と統制群両方の参加者に対して、

刺激B→電気ショック

というレスポンデント条件づけが行われた。細かい手続としてはまず5分間のベースライン期間があり、続いて、刺激Bが30秒提示される。電気ショックはこのうち最後の50ミリ秒に与えられた(=遅延条件づけ)。各条件づけ試行は90秒隔てた間隔で6回行われ、その90秒後に、今度は刺激Aが提示された。刺激A提示時には最後の50ミリ秒において刺激B提示時の半分の電圧の電気ショックが与えられた。そしてさらに90秒の間隔を置いて、今度は刺激Cが提示された。

 以上の手続部分で、刺激A提示時になぜ軽い電気ショックを与えたのかという疑問が浮かぶが、これについては次のように説明されている。仮に刺激A提示に電気ショックが与えられなかったとすると、刺激Bは危険だが、刺激Aは安全、よっておそらく刺激Cも安全であろうという予断が働いてしまう【=ある種の弁別学習】。刺激A提示時に軽いショックを与えたのはそれを避けるためであるという内容であった。

 でもって、結果はどうなったか? Fig.3.が示すように、実験群の8人の参加者のうち6人は、皮膚伝導度の変化の大きさが、A<B<Cという結果になった。一度も電気ショックと対提示されていない刺激Cに対して最も大きな変化が生じた点は、まさに「刺激機能が、比較の関係に従っても変換されうる」という証拠になるだろう。いっぽう、統制群でA<B<Cという傾向を示したのは7人中1人のみであった。残り6人のうち5人は、A<B>Cという傾向を示しており、これは、レスポンデント条件づけの際のオリジナル刺激であるBに対する反応が最も大きく、AやCへの反応は般化の一種と解釈することができるだろう【←刺激Aや刺激Cと刺激Bのあいだには物理的類似性はあまりないが、同一の実験環境のもとで、同じような位置に刺激が提示されるといった文脈の類似性はあるものと考えられる】。

 ということで、Phase 3においてオペラント反応の出現頻度にA<B<Cという傾向が見られ、かつPhase 4においてレスポンデント条件づけの結果として生じた条件反応の強さにもA<B<Cという傾向が見られたことは、「刺激機能が、比較の関係に従っても変換されうる」証拠を示したものと言える。

 このほか、実験中および実験後のエピソードとして、実験群の参加者1人が刺激C提示時に電気ショック提示用の電極を腕から剥がそうとしたこと、直接質問したわけではないが、実験群の何人かの参加者がディブリーフィングの際に刺激Cの提示時には刺激Bよりももっと強い電気ショックがかけられるのではないかと信じていたこと(かつ、統制群の参加者ではそのような予想はなされなかったこと)などが記されていた。

 なお、以上の結果から結論を導く際には、若干の問題点が残っている。

 その1つは、実験参加者が実験群と統制群にランダムに割り付けられていなかったという点である。この実験では実験群に対する訓練・テストが行われた数週間後から統制群参加者が集められた。但し、いずれも同じような学生集団から募集されており、異なる時期に実施したことが結果に影響を与えた可能性は低いとされている。

 もう1つは、Phase 3のバー押しやPhase 4において、刺激Aや刺激Cに対するテストが各1試行しか行われていないという点である。これには回数が少ないことに加えて、順序効果の影響を排除できていないという問題がある。このことについては、テストを複数回繰り返した場合、1回目のテスト自体が影響を及ぼす可能性があり1回のみに限定したと説明されていた。

 余談だが、Dougher et al. (1994)の、

Dougher, M. J., Augustson, E. M., Markham, M. R., Greenway, D. E., & Wulfert,E. (1994). The transfer of respondent eliciting and extinction functions through stimulus equivalence classes. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 62, 331-351.

は、「Received October 4, 1993/Final acceptance June 27, 1994」となっていて、投稿受付から採択決定まで9ヶ月しかかかっていないのに対して、今回のDougher et al. (2007)のほうは、「Received: June 3, 2005/Final acceptance: May 4, 2007」と記されており、その期間は1年11ヶ月にも及んでいる。今回の実験1に関して問題が指摘されていたのか、続く実験2、実験3に関する部分なのかは不明だが、いずれにせよ、投稿者たちと査読者たちのあいだで何らかの議論が長引いていた可能性は否定できない。

 次回に続く。