じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月10日の岡山はよく晴れ、日照時間は11.6時間となった。日照時間が10時間を超えたのは、6月4日の梅雨入り後初めて。写真はイロハモミジの赤い実。

 大学構内にはイロハモミジとヤマモミジがあり、葉っぱの形だけではなかなか区別ができないが、こちらのサイト
イロハモミジの実は一番小さく、翼状の実(翼果)は竹とんぼのように、水平に開きます。また葉の上からかぶさるように実をつけるのが、ヤマモミジやオオモミジと区別する大きなポイントです。
 ヤマモミジとオオモミジは、翼果はブーメラン形かU字状となり、実は葉の下からぶら下がるように付く点がイロハモミジと異なります。
という見分け方が記されており、写真の赤い実は葉の上に竹とんぼのようについていることからイロハモミジではないかと推測される。

2016年06月10日(金)


【思ったこと】
160610(金)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(43)派生的関係反応(15)派生的刺激反応と刺激機能の変容(4)

 昨日に続いて、

Dougher, M. J., Augustson, E. M., Markham, M. R., Greenway, D. E., & Wulfert,E. (1994). The transfer of respondent eliciting and extinction functions through stimulus equivalence classes. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 62, 331-351. 【こちらから無料で閲覧可能】

の研究について紹介する。

 実験2の序論ではまず、不安障害の改善の技法として、フラッディング(flooding)や系統的脱感作(systematic desensitization)が有効であるということが知られており、また、不安・恐怖反応の低減は、そうした介入を行った当該刺激以外の一連の刺激のセットに対しても有効であるということが経験的に知られていることなどを挙げ、当該刺激以外でもなぜ低減が起こるのか、その基本的な仕組みにを検討することが本研究の目的であると記されていた。

 実験2は、実験1と同じ装置が用いられているが、今度は、条件刺激に対する消去が刺激等価性クラスが成立している別の刺激に変換されるのかどうかが検討された。また、この実験では、8人の実験協力者は、実験群と統制群に分かれ、統制群では、電気ショックを受ける手続は実験群と同一であるが、刺激等価性クラスを形成する訓練は一切受けなかった。

 実験群に対する訓練・テストは全部で7段階から構成されていた。
  • Phase 1:Train and Test 2 4-Member Equivalence Classes 刺激等価性クラス形成訓練とその確認。実験1と同様だが、刺激等価性クラス成立の確認基準を厳格にした。
  • Phase 2:Respondent Conditioning 今回は、Class1に属するB1、C1、D1すべてが条件刺激になるよう、電気ショックが与えられる。いっぽうClass2に属する刺激が提示された時には電気ショックは起こらない。
  • Phase 3:Extinction of Respondent Elicitation by B1 B1のみ、条件反応が起こらなくなるように消去
  • Phase 4:Test for Transfer of Extinction to C1 & D1 B1に対する消去がC1やD1にも変換したのかを調べる。
  • Phase 5:Re-Condition Respondent Elitationby B1 再び、B1に対するレスポンデント条件づけ
  • Phase 6:Test for Transfer of Respondent Elitataon to C1 & D1 B1が条件反応を誘発する機能がC1やD1に変換したかどうか
  • Re-Test Equivlence Classes: 刺激等価性クラスが依然として成立しているかどうかについての再チェック。
 上にも述べたように、統制群の4人には、第2、第3、第4段階のみが実施された。

 その結果、第一段階では、実験群の4人すべてにおいて、ほぼ完璧な刺激等価性クラスが成立。

 第二段階では、実験群4人のすべてにおいて、Class1に属する刺激が引き起こす皮膚伝導度の変化(skin-conductance levels and skin-conductance responses)は、Class2の刺激がもたらす変化よりも大きく、Class1の刺激に対するレスポンデント(分化)条件づけが成立したことが確認できた。

 第三段階では、B1が提示されても電気ショックは起こらないという消去操作が繰り返された。第四段階で、B1と同じクラスに属するC1やD1が引き起こす皮膚伝導度の変化をテストしたところ、B1が喪失した機能の変換が確認された。

 さらに第五段階で、B1への再条件づけを行ったところ、第六段階では、B1が再獲得した条件刺激としての機能がC1やD1に変換されたことが確認された。

 消去や再訓練の際による刺激機能の変換はClass1の諸刺激のみに及んでおり、、Class2の刺激(B2、C2、D2)は影響を受けなかった。また、刺激等価性クラスの訓練を全く受けていない統制群では、B1を消去してもその機能喪失が、C1やD1に変換されることはなかった。

 ということで、実験1で一部見られた実験協力者間の傾向の不一致(8人中2人)は、刺激等価性クラス形成とレスポンデント条件づけの改善により、実験2では解消することができた。

 この研究の結果から、レスポンデント条件づけによる刺激誘発機能(条件刺激としての機能)の獲得と消去の両方が、刺激等価性クラスが成立している別の刺激に変換されることが示された。これは、日常行動で、まったく新しい環境に置かれたような場合(直接的なレスポンデント条件づけを一度も経験していない場合)でも刺激機能の変換が起こること、またそれは、刺激般化では説明できないような刺激に対しても、刺激等価性クラスが成立していれば変換が起こりうることが示唆された。

 今回の結果から刺激等価性クラスの成立と、刺激機能の変換という2つの現象が連関していることは示された。しかし、この論文の総合考察の最後のところでは、「刺激等価性クラスのプロセスが原因になって刺激機能の変換が生じる」というように因果関係を持ち込んだ説明を行うことは「premature and even misguided」であると論じられている。
That is, stimulus equivalence might be the result rather than the cause of transfer of function. Alternatively, both might be the result of some other behavioral processes.
すなわち、刺激等価性は刺激機能の変換をもたらす原因ではなく、むしろ同時に起こった結果であろう。両者は、何らかの別の行動プロセス群によって結果としてもたらされた現象であると考えられる。【長谷川による意訳】


次回に続く。