じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山の6月5日の日の入り時刻は19時14分。夕食後もまだ外が明るかったので、近隣の旭川土手まで散歩。岡山では6月4日の梅雨入り後、41.0ミリの雨が降ったが、旭川の水量には特段の変化は見られていない。

2016年06月5日(日)


【思ったこと】
160605(日)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(38)派生的関係反応(10)刺激機能とレスポンデント学習およびオペラント学習による変化(2)

 6月2日の日記で、「刺激機能」という考え方にふれた。「刺激が機能を持つ」といっても、その刺激自体の物理的エネルギーや化学成分が変化するわけではない。「機能を持つ」というのはあくまで、特定の文脈のもとで、当事者と刺激との間で成り立つ概念であって、いずれが欠けても当該機能は発揮されない。そういう意味では、「Cという文脈のもとで、刺激Xは、Aさんにおいて強化機能を有する」は、固有の現象に言及したものと言える。もっとも、そのことが分かると、
  • Cによく似た文脈のもとでも、刺激XはAさんにおいて強化機能を発揮するだろう。
  • 刺激Xの随伴のしかたが変われば、Aさんの行動は変わるだろう。
  • 刺激Xは、Aさんの別のオペラント行動をも強化するだろう。
という予測ができる。さらには、

●「Cという文脈のもとで、刺激Xが、Aさんの行動を強化する」中で見出された法則性は、Aさん以外、時には動物を含めて一般化できる特徴を有する。

という可能性もある。こうした一般化の成功例としては、パヴロフの条件反射の諸法則、強化スケジュールの研究などが挙げられる。どのように巧妙に実験条件を統制しても、その結果は実験が行われた文脈に固有の影響を反映する。それでもなお、文脈フリーの特徴を抽出することはできるからこそ、実験的研究の積み重ねとして体系化できるのである

※例えば、農作物の収量はその年の気候や、栽培地の土壌といった固有の文脈を反映する。それでもなお、一般化された栽培技術は適用できるし、また別の観点から植物の生育の法則を見出すことができる。

 もとの話題に戻るが、原書69頁(翻訳書96頁)では、
What kind of function a certain event has in relation to my behavior can be understood only through analysis of a specific situation. Here is a simple example: The light is turned on when I am in a dark room. This can have different stimulus functions for me, and only a closer account of the situation in question, and my responses to it, can help clarify what these stimulus functions are. The light can function as an unconditioned stimulus that triggers my eyes to blink. It can also have a punishing function in relation to the behavior I was engaged in, so that I cease my activity when the light is turned on. It can function as an establishing operation, under which something else I can then perceive becomes a discriminative stimulus for drawing closer, like if I were to approach a cupboard that I didn't see when the light was off.
ある出来事が,私の行動との関係においてどの種類の機能を有しているかは,具体的な状況を分析することでしか理解することができない。ここに,ひとつの簡単な例を挙げよう。私が暗い部屋の中にいるときに,明かりがつけられる。このことは,私にとってさまざまな刺激機能を有する可能性があり,問題となる状況と私の反応についてのより詳しい説明だけが,刺激機能が実際に何であるかを明確にする助けになる。明かりは,無条件刺激として機能して,私がまばたきをするきっかけとなるかもしれない。また,私がそのときに行っている行動によっては,それとの関連で弱化的機能を有する可能性もあり,その場合, 明かりがついた時点で私は活動をやめることになるであろう。あるいは,明かりがついたことで気づけるようになった何かが弁別刺激になるといったように, 明かりは確立操作として機能することもできる。たとえば,それまで暗かったときには見ることができなかった食器棚に向かって, 私が近づいていく場合などである。
というように、1つの刺激(ここでは明かり)が無条件刺激として機能する場合、弱化機能を有する場合、弁別刺激として機能する場合、さらには確立操作として機能する場合があると論じられている。前回も述べたように、当該刺激がどう機能するのかは、あくまで、当事者の固有の学習履歴と刺激が生じた文脈に依存している。

 では、刺激は、学習履歴と文脈次第でいかなる機能も獲得できるのか?ということになるかと言えば、そういうわけでもない。無条件刺激としての機能、あるいは生得性好子、生得性嫌子(「一次性強化子、一次性弱化子」もしくは「無条件性強化子、無条件性弱化子」と呼ばれることもある)の強化機能・弱化機能は、それぞれの動物において予め決まっていて、経験によって変わることはない。刺激機能を変容させる仕組みを説明したものが、まさにレスポンデント条件づけとオペラント条件づけの原理と言うことができる【原書69〜71頁、翻訳書97〜99頁】。

次回に続く。