じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 ムラサキツユクサの花。雑草のツユクサ科とは異なり、トラデスカンティア属。接写で見ると、雄しべまで色がついている。この雄しべは循環型原形質流動の観察に使われるという。

2016年05月29日(日)


【思ったこと】
160529(日)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(33)派生的関係反応(5)刺激等価性クラスをめぐる動物研究(1)

 5月28日の続き。

 刺激等価性クラスの諸研究で興味深い点は、従来の単純な弁別学習の原理では説明できない現象が確認されているという点にある。こちらの論文の「2.5. 行動分析学の基本原理は拡張されるべきか?」のところでいくつか挙げたように、実験的研究のいくつかの結果については、「単純接触効果説」や「習得性好子形成説」でも説明できる場合がある。しかしそれらのアーティファクトの可能性は、実験条件を多様に設定することで排除できる。いずれにせよ、従来の基本的原理で説明できない部分について、シンプルで体系的な原理を増築したほうが、未知の現象を発見したり、臨床的応用を広げたりできるという可能性がある。

 もう1つ興味深い点は、人間と動物の違いである。
From repeated studies involving different animal species, we know that this ability has not been convincingly shown in any other species (S. C. Hayes, 1989), not even chimpanzees that have had many years of "language" training with humans (Dugdale & Lowe, 2000). Humans, in contrast, show this behavior from at least two years of age (Devany, Hayes, & Nelson, 1986).【原書62〜63頁】
さまざまな動物種を対象とした研究の積み重ねによって,この能力が,人間以外のほかのどの種においても,説得力をもって示されていない。何年にもわたって人間と一緒に「言語」訓練を受けたチンパンジーにさえも,示されないのである。それとは対照的に,人間は少なくとも2歳からこの行動を示す。【翻訳書86頁】」
動物を対象とした刺激等価性クラスの研究については、

山崎由美子 (1999).動物における刺激等価性. 動物心理学研究, 49, 107-137.

が無料で閲覧できるほか、最近になって、同一著者による、脳科学辞典項目:

刺激等価性

を通して最新の情報を知ることができる。

 なお刺激等価性をめぐる諸問題については、日本認知科学会の『認知科学』誌に

「対称性:思考・言語・コミュニケーションの基盤を求めて」

という特集号に掲載されており、SidmanのInvited Paper「Symmetry and Equivalence Relations in Behavior.」を含み、動物を対象とした研究を含めて興味深い話題が各種取り上げられている。ありがたいことに、これらはすべてj-stageから無料で閲覧することができる。

 次回に続く。