じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 5月10日朝のモーサテによれば、5月2日〜5月8日のビジネス書ランキング(紀伊国屋書店調べ)で、またまた『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』が1位、2位を独占した。4月までのデータはこちらにあり。これら二冊以外では「すぐやる人」と「一流の育て方」が比較的長期にわたり好調な売れ行きを維持しているように見える。

2016年05月10日(火)


【思ったこと】
160510(火)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(21)「考える」と人間の言語(7)話し手と聞き手/ルール支配行動

 5月9日の続き。

 第2章40頁以下(翻訳書57頁以下)では、「話し手と聞き手」、さらに「ルール支配行動」について概説されている。行動分析学の入門書でしばしば語られているように、スキナーは、言語行動を話し手の行動に限定しており、聞き手の行動は「ルール支配行動」という別のカテゴリーで捉えている。とはいえ、話し手と聞き手は相互に入れ替わるものであり、また、「考える」という行動においては、両者が同一人物になりうる(「...but there is a listener even when someone is thinking; it s just that in this case the speaker and the listener are the same person.」)と論じられていた。

 言葉を発する行動はSkinner(1957)が提唱したように、タクト、マンド、イントラバーバル、といった形で分類され、それぞれ異なる随伴性によって強化されている。タクトの場合は、聞き手に有用な情報を与えることによって聞き手側から有利な扱いを受けられるようになる。またマンドの場合は、「○○をください」と発することで、希望の品を手に入れることによって強化されていく。

 この分類は、聞き手側にも適用できる。相手がタクトを発した場合には、情報源の信頼性を斟酌した上でそれを利用する。これによって、直接体験と同じように経験を積むことができ、より有利な随伴性環境に身をさらすことができる。また相手がマンドを発した場合は、相手の要求物を提供することによって、次の機会には自らのマンドを実現しやすくすることができる(もちろん、場合によっては相手の要求を断ることもできる)。

 とはいえ、言葉を発する(話す、書く、...)行動とそれを受信する(聴く、読む、...)行動が異なる随伴性によって強化されていることは確かであろう。例えば、被災地の取材で現地の人たちが発しているマンド(「○○が欲しい」)は、聞き手にとってはタクト(“「○○が欲しい」という要望が多く発せられている”というタクト)になることもある。逆に、「道路が壊れている」、「床上浸水している」といったタクトを受信することが、支援を求めるマンドになることもある。

 本書の話題に戻るが「Please wait outside, and I'll be right with you.(外で待っていてください。すぐに行きますから)」という言明は、行動と結果を特定しているという点で明らかにルールの条件を満たしている。こうした経験を繰り返すことで、今度は、それを自分に適用することができるようになる。「この停留所でもうしばらくバスを待っていよう。バスはすぐに来るだろう」といったルールを自分で作ることができる。これは「自分を誘導するルール(self-directed rules)」と呼ばれる。いっぱんに「意志が働く」と言われているのは、大部分が、この自己誘導型ルールを意味しているものと思われる。

次回に続く。