じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 今年のGWは、前半が種々の用事が重なったため連日の「休日出勤」となり、後半のみ、妻の実家のある北九州に帰省した。途中、関門橋〜門司ICのあたりで3kmの渋滞という情報が入ったので、下関ICから関門トンネルに入ってみたが、トンネルの中もやはり渋滞となっていた。その分、海底トンネルの景色をゆっくりと観察することができた。

2016年05月5日(木)


【思ったこと】
160505(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(16)「考える」と人間の言語(2)

 5月2日の続き。

 第2章ではスキナーの言語行動の理論では、タクト、マンド、イントラバーバルといった分類がすべて機能的に行われている点が強調されていた。またそれらは社会的般性強化子【社会的般性好子】によって強化されている。こうした考え方は、言語行動が種々の苦悩の原因になりうる【第7章「人間の言語が持つダークサイド」】という面を説明する上で大いに有効と思われるが、文法の成り立ちや、各種言語における動詞等の変化や微妙なニュアンスの違いを体系的に説明できるものではない。また、私が知りうる限りでは、スキナーの言語理論に基づいた効率的な外国語学習法というのも開発されていないようである【ただし、オートクリティックに関する理論は、単語の語尾変化、句読点、文法構造、構文などの説明を可能にするという指摘もある】。

 ここで少々脱線するが、妻の実家に帰省のさい、車のラジオでたまたまロシア語講座が放送されていた。この日は完了体と不完了体の使い分けがテーマとなっていたが、この区別はなかなか難しい。例えば日本語で「父は朝、外出した」と1通りに表現するところ、ロシア語では「父は朝、外出して、まだ戻っていない」場合と、「父は朝、外出したが、今は家に戻っている」という場合で異なる動詞が使われる。同じく「彼は、モスクワに行った」も「彼は、モスクワに行ったが今は日本に帰国している」という場合と「彼はモスクワに行って、いまもそこに滞在している」では異なる動詞が使われるという。こうした使い分けがなぜロシア語において強化され続けているのかは、スキナーの理論では説明できない。

 もう1つ、これは4月の新入生オリエンテーションの際に、言語科学の教員から聞いた話しであるが、陸上競技のスタート時に「位置について。用意。ドン!」とは言うのになぜ「位置について。準備。ドン!」と言わないのかといった疑問も、スキナーの言語理論では説明できない(←言語科学でどう説明しているのかは不明)。ということで、言語学や言語科学の分野と、スキナーの流れをくむ言語行動理論は、別段、対立するものではない。それぞれ得意とするところで力を発揮すればそれでよいとは思う。

 元の話題に戻るが、スキナーの「イントラバーバル」、「オートクリティック」といった分類は、言語学では主要な研究対象にはならないように思う。そのぶん、行動分析学的アプローチが活躍できる分野であるとも言える。

 また翻訳書47頁で論じられているように、スキナーの体系で特に有用と思われるのは、以下の2点に集約できる。
  • 言語行動は,先行事象と結果によって支配される人間の行動として捉えることができる点
  • この分析によって,私的出来事の検討に立ち戻ることが可能となるという点


次回に続く。