じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 12月4日早朝の月と木星の接近の様子。最接近は15時26分。なお、12月8日の01時55分には、金星と月が0°40′まで接近(=金星食)するが、食自体は北米西部でないと見られないようだ。

2015年12月03日(木)


【思ったこと】
151203(木)理論心理学会公開シンポ(14)心理学の将来の方法論を考える(6)鈴木氏の話題提供(3)

 昨日の続き。

 話題提供の後半では続いて、カオスの心理学的意味が論じられた。カオスはゆらぎであり「動的な安定性」を意味する。カオス的であることは心身の健康と対応するが、リアブノフ指数が大きすぎてもダメというようなお話であった。話題提供では、指尖脈波、呼吸、重心動揺などの生理的データが具体例として取り上げられ、単純な時系列データでは見えにくい特徴がカオス解析で把握できる点が指摘された。さらには、2人の実験協力者の血流の同期を初対面どうしと友人間で比較した解析から「共感」を科学的に分析できる可能性、定型発達児と非定型発達児の比較、コミュニケーションというように、個人内の健康状態ばかりでなく、個人間のカオスについても検討できる可能性が示唆された。

 話題提供のおわりのところでは、脈波と共感の同期の発展として「場」、「気」、「空気を読む」なども同期現象としてカオス的に分析できる可能性、病患の診断にも応用できる可能性など、大きな夢につながる可能性も示唆された。

 ここからは私の感想になるが、難解な数式については殆ど理解できなかったが、従来の要素還元主義的な科学と異なり、各要素を不可分として捉える視点、しかも個人内部のメカニズムばかりでなく、個人間や、個人と環境の関係にも広げられるという点がは理解できた。この視点は「全体論的な科学」と呼ぶことができる。もっともそれが、伝統的な東洋思想によって補強できるものかどうかはイマイチ不明。上記の「場」、「気」、「空気」などは、対象や特徴についての記述的な概念としては使えるだろうが、説明概念にはなり得ないと思うからである。

 このほか、討論の際、カオス解析で描かれるパターンは、現時点では、見た目の特徴では分類できるものの、量的な指標に基づいて主観を交えずに機械的に分類するというような方法は確立していないというお話も出ていた。

 要素還元主義的な科学に対峙する全体論的な視点が必要である点は十分に理解できた。とりわけ、健康や自己治癒力を高めるためには、体全体についての科学が求められる。この面では伝統的な東洋医学や東洋的な健康法の知見が大いに役立つことは間違いあるまい。

次回に続く。