じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



08月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
 8月24日06時現在、台風15号が強い勢力を保ったまま九州を直撃している。岡山は幸い、予報円の外側に位置しているが、台風の南東側が通過するため、かなりの雨と強風が心配される。

2015年08月24日(月)


【思ったこと】
150824(月)『嫌われる勇気』(44)「関係フレーム理論」、「ACT」との比較(3)

 昨日も述べたように、ACTでは、言語行動(話し手)やルール支配行動(聞き手、もしくは自己ルール)を重視したセラピーであると特徴づけることができる。『嫌われる勇気』では「すべての悩みは「対人関係の悩み」である」と強調されているのに対して、ACTの入門書では
...ACTはこのように、人間のノーマルなマインドのノーマルな心理作用が、容易に有害なものとなり、いずれは誰もが心理的に苦しめられる、と仮定するところから始まる。そして、この苦悩の根源は、人間の言語にほかならないと考えている。【ハリス(2012)、9-10頁】
と記されており、「すべての悩みの根源は言語にある」と置き換えても良さそうな気がする。ちなみに、ACTで使われている「マインド」という言葉は、「人間の言葉(human language)」のメタファー(比喩)として用いられているという。【ハリス(2012)、10頁】

 では、言語はどんな悩みをもたらすのか? ハリス(2012、11頁)では悪い面として
言葉があるから嘘をつくし、人を操ったり、惑わせたりする。中傷や悪口、中途半端な知識を広める、憎悪、偏見、暴力を駆り立てる、殺人兵器や環境を汚染する工場を作るなどの行為も、言語を介してのものである。過去のつらい出来事を思い悩んだり「再体験」したりする、不吉な未来を想像して怯える、自分と他者を誰かと比較・判断・批判して責める、自分の人生を締めつけて台無しにするようなルールを作り出す、といったことも可能だ。

といった点を挙げている。もっとも、もちろん良い面もある。これについては、
 良い面としては、言語はまず、世界のあり方やそこに存在するものを表現するのに役立つ。あるいは、言語を使うことで未来の予測や計画を立てられるし、知識を他者と分かち合う、過去の経験からも学習する、存在しないものを想像して創り出す、効果的な行動につながるルールを取り決める、個人ではなく社会として反映する、離れた人と連絡をとる、過去に生存していた人からまなぶなど、さまざまなことが可能になる。

といった点が挙げられており、けっきょく、「言語は人間にとって、祝福でも呪詛でもあるので、ACTでは「マインドは友でもなく、かと言って、敵でもありません」と言っている。【11頁】」と結論される。

 もちろん、言語が存在しなくても、病気、戦争、環境汚染、人間関係上の軋轢などは起こりうるが、それらを言語化し、感情と結びつけることで、苦悩が増幅され再生産されているという側面はあるように思う。

 不定期ながら次回に続く。