じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡大構内を流れる座主川の上流域には、少なくとも一箇所、「滝」が流れ込んでいる。旭川から取水していいる用水路がいったん分岐し、この場所でその一部が座主川に流れて落ちる。水田に水を引いている季節のみの絶景。

2015年08月22日(土)


【思ったこと】
150822(土)『嫌われる勇気』(42)「関係フレーム理論」、「ACT」との比較(1)

 昨日の日記で「自らの価値」に関する主張がよく分からないと述べた。ここでまた脱線するが、「自らの」と「価値」について、行動分析学の発展型の1つである、「関係フレーム理論」や「ACT(アクト)」がどう位置づけているのか、関連文献から引用し、比較参照してみたいと思う。といっても唐突になるので、まずその経緯を以下に記す。

 「関係フレーム理論(RFT)」という名称は、Hayes & Hayes(1992、American Psychologist, 1992, 47, 1383-1385.)で初めて使用された【武藤(2006)『アクセプタンス&コミットメント・セラピーの文脈 −臨床行動分析におけるマインドフルな展開−』, 48頁による】。スキナーの言語行動理論(Skinner, 1957)や、ルール支配行動についての考え【Skinner自身は1966年、問題解決に関する分担執筆書の中の「An operant analysis of problem solving.」という章で初めて使用したという。トールネケ(2013)『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』、159頁による】を、その後蓄積された派生的関係反応に関する発見などに基づいて発展させた理論であり、行動分析学の基本概念である「行動随伴性」に加えて、「出来事を恣意的に関係づける能力」を重視している。

 「ACT(アクト)」は関係フレーム理論に基づいて開発されたセラピーの1つであり、私の知る限りでは、以下の入門書が大いに参考になる。
  • トールネケ(2013、武藤・熊野監訳)『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ:言語行動理論・ACT入門 』星和書店
    RFTについての体系的解説。ちなみにトールネケ先生は9月26日に京都でRFTについての講義をされる。詳しくはこちら参照
  • ハリス(2012、武藤監訳)『よくわかるACT:明日からつかえるACT入門』星和書店
    タイトルの「よくわかる」の通り、関連書の中では一番分かりやすい。
  • ヘイズ他(2014、三田村・大月監訳).『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT) 第2版-マインドフルネスな変化のためのプロセスと実践‐』星和書店
    ACTについての公式な指南書
  • 武藤崇編著(2006)『アクセプタンス&コミットメント・セラピ−の文脈 臨床行動分析におけるマインドフルな展開』ブレーン出版 絶版
    入門者には難解だが、機能的文脈主義の哲学的背景について、よく理解できる。絶版になってしまったのは残念。
 なお、昨年の日本心理学会大会で拝聴したところによると、ACTは特定の心理療法として固定されたものではなく、研究者相互の議論や成果を活かして日々進化していくものであるとのことであった。また第一人者と目されてきた武藤さんは、じっさい多数の翻訳書や論文を刊行されており「長年にわたりACTの普及に尽力されてきた」と紹介されることが多いが、ご自身としては、普及という意図はなく、「ACTの内容を正確に伝え、多くの人に評価してもらうため」が本意であったとのこと。
 8月6日の日記に記したように、今年は8月29日〜30日に日本行動分析学会の年次大会が開催されるが、ほぼ同じ日程で、 が開催されるという。「マインドフルネス」に関してはもともと、行動分析学とは別物という印象が強かったので同一日程で競合してもそれほど奇異はないが、行動分析学を土台に発展したはずのACTが、なぜ、行動分析学会年次大会開催日に別の場所でイベントを開催するのかについては、情報不足のためよく分からない。

 不定期ながら次回に続く。