じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 ギリシャで見かけた気になる表示
  • A:アテネのホテルのエレベーター。地下1階が「B1」ではなく「-1」と表示されていた。
  • B:クルーズ船のエレベーター。「開」ボタンはあるが「閉」ボタンがついていないため、誰も居ない階で停止すると、ドアが閉まるまでずっと待たなければならない。
  • C:アテネのホテルのトイレ案内。「TOILET」ではなく「TOILETTES」。フランス語?
  • D:飲むヨーグルトのラベルが「кефiр」と書かれているように見えた。「i」以外の文字はロシア語そっくりで、「キフェル」あるいは「ケフィル」という似た発音になっている。メーカー自体はMEVGALというギリシャのブランド。これまた「мевгал」と書かれていてロシア文字のようにも見えた。けっきょく、ギリシア文字とロシア語のキリル文字は共通度が高いということか。




2014年8月27日(水)

【思ったこと】
140827(水)2014年版・高齢者の心と行動(9)

 以上、(オペラント)行動の起こり方を左右する8通りの随伴性と、及び、行動してもしなくても何も変わらないという「無強化・消去」1通り、合計9通りについて簡単に説明しました。このうち、行動を減らす(弱化する)4通りの随伴性は、迷惑行動や自分の悪い癖を直す時にきわめて有用ですが、時間が限られていますので今回はカットし、これから先はもっぱら、行動を増やす随伴性(強化をもたらす随伴性)4通りを中心にについてお話を進めてまいります。復習すると、行動を増やす随伴性は、基本随伴性のうちの2通り、及び阻止の随伴性のうちの2通り、合計4通りに絞られます。
  • 基本随伴性により行動が増えるケース(行動が強化されるケース)
    • 好子出現の随伴性:【   】→行動する→【好子出現】|【   】→行動しない→【   】
    • 嫌子消失の随伴性:【もともと嫌子あり】→行動する→【   】|【   】→行動しない→【   】
  • 行動が増えるケース(行動が強化されるケース)
    • 好子消失阻止の随伴性:【もともと好子あり】→行動しない→【   】|【もともと好子あり】→行動する→【相変わらず好子あり】
    • 嫌子出現阻止の随伴性:【   】→行動しない→【やがて嫌子出現】|【   】→行動する→【   】

 具体的な例として「畑を耕す」という行動を取り上げてみると、
  1. 好子出現の随伴性:畑を耕すと、作物という好子が出現する。
  2. 嫌子消失の随伴性:耕作用の牛が、ムチに叩かれることから逃れるために畑を耕す
  3. 好子消失阻止の随伴性:畑を耕さないと作物がとれなくなるので、食料確保のために耕す。捕虜が畑を耕さないと食事抜きだと強制されて耕す。
  4. 嫌子出現阻止の随伴性:奴隷が、命令に従わないと体罰だと脅かされて畑を耕す。
という4通りになります。
 見ただけで分かるように、上記2.から4.はいずれも義務的で無理やり行動させられており、生きがいをもたらすとは到底考えられません。
 いっぽう1.の「好子出現の随伴性」で行動している限り、人は、自由で、能動的に働いていると感じます。実際は、好子出現の随伴性によってコントロールされているのですが、当事者は自分は自由であると感じるのです。じっさい、「好子出現の随伴性」のもとでは、行動すれば好子が出現しますが、行動しなかったからといって何か悪いことが起こるわけではありません。平穏な状態がそのまま続くだけです。生きがいもまた、その中から生み出されます。つまり、
  • 行動しなくても平穏な状態が続くが、行動すれば好子が出現するという状態の時には、人は、「したいから行動している」、「自分は自由である」と感じます。
  • 嫌子消失の随伴性、好子消失の随伴性、あるいは嫌子出現阻止の随伴性のもとで行動が強化されている時は、人は、「しなければならないから行動する」、「強制的に行動させられている」と感じます。
  • 行動してもしなくても何も変化が起こらない状態のもとでは、人は、「何をやっても無駄だ」、「自分は無力だ」と、無気力状態に陥ります。
 ということで、先に述べた、スキナーのHappinessの定義にもある通り、「好子出現の随伴性」こそが生きがいの必要条件であり、できる限り、そのような行動機会を増やしていくことがよりよい生活環境の実現につながることは間違いありません。とはいえ、現実社会においては、
  • 現実に台風や地震や疫病がある以上、被害を回避するための防災・予防は不可欠です。「嫌子出現阻止の随伴性」から逃れることはできません。
  • また、いかに科学技術が進歩しても、人は誰でも死ぬ運命にあり、その際の死の苦痛(=嫌子出現)や死による離別や大切なモノの喪失(=好子消失)から逃れることはできません。
  • 現実社会が善意や互助互酬だけでは成り立たない以上、他者に働いてもらう(働かせる)仕組みはどうしても必要です。奴隷制のもとでは、奴隷は暴力的支配によって無理やり働かされていましたが、現代の資本主義社会のもとでは、お金が人を働かせるツールとなっています。
 上記の3番目に関して付け加えると、私たちが働いて賃金を得るのは、形式的には「働く→賃金(好子)」という好子出現の随伴性のように見えますが、じっさいは、働かないと解雇されて月々の収入(好子)が手に入らなくなるという「好子消失阻止の随伴性」で強化されている部分があります。【もちろん、そういう中にあっても、働くこと自体がもたらす生きがいや楽しみはありますが、純粋に好子出現の随伴性だけで働くことができるのは、働かなくても平穏な生活が維持できる境遇にある人に限られます。そういう意味では、高齢者が自発的に参加するボランティア活動などは、純粋に好子出現の随伴性だけで強化される可能性があります。
 もう1つ、好子出現の随伴性だけの世界は、「行動しなくても平穏」、つまり嫌なことは何もしなくていいという状態にあるため、人々は、苦労を伴う努力をしなくなるという危険性もあります。受験勉強が楽しくてたまらないと思った人は少ないと思います。たいがいの人は「受験勉強をしないと、大学合格という好子が失われる」という好子消失阻止の随伴性で努力をし、結果的に幅広い知識を身につけ思考力をアップさせることができます。長期的な目標達成(ずっと後になって出現する大きな好子)のための努力を確実に遂行するためには、自己管理(セルフコントロール)の技法の一環として好子消失阻止の随伴性をみずから設定し、自分自身を叱咤激励することもまた必要です。

次回に続く。