じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 勢力が衰えたことと、南寄りのコースをたどったことにより、台風8号の影響は岡山県では軽微であった。台風接近時からの72時間雨量も3.5ミリにとどまった。

 写真は、黒正巌先生像前に出現したボール状のキノコ。


2014年7月10日(木)

【思ったこと】
140710(木)長谷川版「行動分析学入門」第12回(5)阻止の随伴性(5)「嫌子消失阻止」と「好子出現阻止」による弱化

 阻止の随伴性の3番目は、「嫌子消失阻止」です。この随伴性は、まず前提として、嫌子が存在しており、その嫌子は、行動しなければやがて消失するものの、行動している限りはずっと存在し続けるというタイプです。
  • 【嫌子あり】→【行動】→【嫌子あり】
  • 【嫌子あり】→【行動しない】→【   】(やがて嫌子消失)
具体的な例としては、
  • 化膿した部分を掻く
    →化膿した部分が痒いからといって掻いているといつまでたっても治らない。掻かなければやがて、痒みも化膿も消失する。

  • 歯医者の椅子で暴れる
    →椅子の上で暴れていると治療ができないので、いつまでたっても虫歯の治療ができない。暴れなければ、治療は終了し、虫歯も消失する。

  • ヒグマに遭遇した時に騒ぐ
    →山中でヒグマが出現した時に騒ぎ出すと、ヒグマのほうも興奮して襲ってくる。騒がないでいれば、やがてヒグマも立ち去る【あくまで仮想の例。実際にヒグマに出遭った時にどのように行動すれば最も効果的かは分かりません】。
などがあります。この随伴性で重要なポイントは、「行動しない」ことが強化されるのではなく、「行動する」ことが弱化されるという点です。こちらの講義録の「1.5 死人テスト」のところに書きましたように、死人でもできることは行動ではありません。「行動しない」というのは死人でもできますから、強化の対象とはならないのです。もちろん、歯医者さんの椅子の上で暴れている子どもに対して「じっとしていなさい。そうすれば、すぐに治してもらえるのよ。」としかりつけることはできます。この言葉は、形式上は「じっとしている」という行動が強化されているように見えますが、実際には、「暴れるのを止めなさい。暴れているといつまでたっても治してもらえないわよ」という嫌子消失阻止の随伴性として機能しています。




 続いて、阻止の随伴性の4番目にあたる「好子出現阻止」について説明します。この随伴性は、行動しなければやがて好子が出現するのに、行動してしまうとその出現が阻止されてしまうというものです。具体的には、
  • 果物を熟していないうちにもぎ取る
    →果物がまだ熟していないうちにもぎ取ってしまうと、おいしい果実(好子)の出現が阻止される。もぎ取らないでいればやがて、熟したおいしい果実が出現する。

  • いたずらをすると3時のおやつが取り消し
    →いたずらしなければ、3時になると貰えるはずのおやつ(やがて出現するはずの好子)が取り消される(阻止される)という随伴性。なお、目の前にあるおやつを取り上げるのは、すでに述べた「好子消失による弱化」となります。

  • 会議で上司を批判すると昇進が取り消し
    →口をつぐんでいれば、やがて昇進できる(好子出現)段取りになっていたのに、批判をしたことでその出現が阻止されてしまう。【その批判が的を射たものであれば、逆に昇進の可能性が高まることもありえますが。】

 「嫌子消失阻止」と同様、「好子出現阻止」の随伴性も、「死人テスト」と照合した上で、何をもって行動とみなすのかという点で重要です。もし、「行動しない」ことが強化されるのであれば、上記の例では、
  1. 果実が熟していないうちは、何も行動しない
  2. 3時のおやつの時間までは、何も行動しない
  3. 会議では、何も発言しない
が強化されたことになってしまいます。しかし、それぞれ、
  1. 果樹の世話をするという行動(例えば摘果、消毒)は必要。
  2. 勉強やお手伝いなどの行動はしたほうがいい。
  3. 会議では、建設的な発言をしたほうが評価される。
というように、何も行動しなければそれで済まされるというわけではありません。要するに、具体的な特定の行動だけが弱化されるのであって、「行動しない」ことが強化されるわけではないということです。

次回に続く。