じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 行動分析学会年次大会参加のため訪れた弘前大学は2007年10月よりキャンパス内全面禁煙を実施しているという。岡山大学より7年も前からの先進的な取り組みでもあり、さっそく実情を見学させていただいた。

 まず驚いたのは、構内には「キャンパス内全面禁煙」を呼びかける掲示が殆ど無かったことである。私が見つけたのは写真上の2箇所のみであった(しかも右側はポイ捨てに関する注意)。
 しかし、掲示が殆ど無いにもかかわらず、キャンパス内ではポイ捨て吸い殻が1本も見当たらなかった。
 いっぽう、まことに残念ながら、キャンパス出入り口付近では写真下のように吸い殻11本がポイ捨てされていた。通行人の多い出入り口付近で有害な煙を吐き出すばかりでなく、自分で吸った吸い殻1本さえ始末できないという、身勝手な喫煙行為がここにもあることが示された。但しこれらのポイ捨てが大学教職員・学生によるものなのか、それとも、今回の学会参加者やそれ以外の目的で訪れた学外者によるものかは定かではない。


2014年6月30日(月)

【思ったこと】
140630(月)日本行動分析学会第32回年次大会(2)スキナーの原著を語る

 今回は、大会2日目の午前中に行われた、

● 学会企画シンポジウム「B.F.スキナーの原著を語る」

についてのメモ・感想。

 企画趣旨が「スキナーが何を言ったのかということではなく、原著を読んでどのような影響を受けたのか」という点にあることが強調された。続いて、
  1. Skinner for the Classroom.【Epstein編集によるスキナーの論文集】
  2. Cumulative Record.【Cumulative Record: A Selection of Papers, 1959, 1961, 1972 and 1999 as Cumulative Record: Definitive Edition. This book includes a reprint of Skinner's October 1945 Ladies' Home Journal article, "Baby in a Box," Skinner's original, personal account of the much-misrepresented "Baby in a box" device. ISBN 0-87411-969-3 (paperback)】
  3. Verbal Behavior.【Verbal Behavior, 1957. ISBN 1-58390-021-7.】
  4. About Behaviorism.【『行動工学とはなにか : スキナー心理学入門』犬田充訳(佑学社 1975年)--原書:About Behaviorism, 1974. ISBN 0-394-49201-3】
  5. Schedules of Reinforcement.【Schedules of Reinforcement, with C. B. Ferster, 1957. ISBN 0-13-792309-0.】
  6. The Technology of Teaching.【『教授工学』村井実、沼野一男監訳;慶應義塾大学学習科学研究センター訳(東洋館出版社 1969年)--原書:The Technology of Teaching, 1968.】
という6冊の原著【一部は論文集】それぞれについて、話題提供者がどのような影響を受けたのかが熱く語られた。なお上記リストは、ウィキペディアの記事により私の方で詳細情報を補足した。

 話題提供はそれぞれ興味深い内容であったが、特に、印象に残った点を備忘録代わりに箇条書きさせていただく。
  • スキナーの原著は全文を和訳してみること、1つの文の理解に時間を惜しまず、毎日30分でもよいから継続的に読み進めていくことが大切。
  • 「装置はたまに壊れる」→うまくいかない時にこそ発見のチャンスがある。
  • 『Cumulative Record.』収納の「A Case History in Scientific Method.」には、スキナーボックス誕生以前の、いろいろな装置の改良のプロセスが描かれていて興味深い。ちなみに「スキナーボックス」という呼称は、Hullとその弟子がつけた呼称らしい。スキナー自身がそう言ったことはない。またスキナーは、「箱」の中で観察された事実だけが科学的に検証されるものとして語られ、それ以上の議論がなかったことに狼狽したという。
  • 『Verbal Behavior.』については東京のほうで小規模の講読会が継続的に開催されている。佐藤方哉先生が説いておられるように、一番重要な点は、言葉はそれ自体が意味を持つのではなく、使われることによって意味を持つ。但し、伝統的な言語学の立場を踏襲しても、直ちに不都合が起きるわけではない。【←同一の言語コミュニティ、あるいは地球環境というもとでは、使われ方に共通性が見られるためだろう。】
  • 『Verbal Behavior.』執筆は、1934年にホワイトヘッドと同席した夕食会で「科学は人間行動の説明に成功するだろうが、言語行動は例外だ」と言われたことがきっかけ。その後23年かけて完成。
  • 『About Behaviorism.』:研究者の実名はあまり挙げられていないなか、Freudの名前が20回も出てくる。
  • 「Cause」や「Technology」の訳語については工夫が必要。
  • スキナーの自伝は英文がシンプルで読みやすく、かつスキナーの思いが率直に語られていることがありオススメ。
  • スキナーは1953年末に自分の娘が通う学校で当時の教育方法の問題点を実感して以来1990年に亡くなるまでずっと教育について憂慮していた。晩年「I think education is the greatest disappointment of my life. 私が思うに、教育はわが生涯において、最大の失望だった.」と語っている。


 なお、今回は取り上げられていなかったが、私が個人的に影響を受けた本と言えば、

●『科学と人間行動』河合伊六ほか訳(二瓶社 2003年)--原書:Science and Human Behavior, 1953. ISBN 0-02-929040-6. 無料で全文をpdfファイルで読むことができる。【こちらから】

を真っ先に挙げたい。このほか、

Contingencies of Reinforcement.This 2013 B. F. Skinner Foundation edition is identical to the original 1969 Meredith publication except for the additional foreword by David C. Palmer.

も、最も体系化された本の1冊としてぜひともオススメしたいところだ。


次回に続く。