じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 大陸からの高気圧帯に覆われているため、岡山では黄砂が観測され、空全体が赤みがかっているように見えた。もっとも本当に心配なのはPM2.5による大気汚染である。リンク先の予報によると、岡山はこの先も汚染状態が続き、特に5月30日の午前中は、「きわめて多い」ほうから2番目となっている。早朝の散歩で深呼吸することが健康にいいのか悪いのか分からなくなってきた。


2014年5月28日(水)

【思ったこと】
140528(水)長谷川版「行動分析学入門」第7回(15)好子出現の随伴性による強化(22)部分強化と強化スケジュール(9)いろいろな強化スケジュール(2)定時隔スケジュール(2)

 昨日取り上げた定時隔スケジュール(Fixed Interval schedule、「FIスケジュール」と略す)について若干の補足をしておきます。

 このFIスケジュールは
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間以内に行動しても全く強化されない(次の好子が出現する確率はゼロ)
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間が経過したあとの最初の行動は100%強化される(次の好子が出現する確率は100%)
また、『Schedules of reinforcement. 』(Ferster & Skinner, 1957)では、FIスケジュールは以下のように定義されています。【こちらから閲覧可能。
In a fixed-interval schedule of reinforcement (FI) the first response after a designated interval of time is followed by a reinforcing stimulus.
また、当時はコンピュータによる実験制御は行われていませんでしたが、
It is programmed by a timer which starts from zero after each reinforcement (or from the start of the session) and closes a circuit ("sets up" a reinforcement) at the end of a designated time. The first response following this period operates the magazine.
強化が行われたあと【好子が出現したあと】、タイマーがゼロにリセットされ、設定された時間が経過すると回路のスイッチが入るようになる。回路がつながったあとの最初の反応がmagazine(ハトの実験なので、穀粒の入った餌箱)を摂食可能な位置に移動させる。【訳は長谷川による】
という仕掛けになっていて、1950年代当時でも、コンピュータ無しで簡単に実験ができたようです。

 もっとも、こういうルールで強化することが「時間経過によって確率を変動させる」操作として最も基本的、代表的であるかどうかについては疑問が残ります。

 例えば、非常にのんびりとしたハトがいて、2分間に1回しかキーをつつかなかったとしましょう。このハトに、「FI 1分」という強化スケジュールを実施したとしても、実際の行動は2分間に1回しか起こらないので、実際には「FI 2分」の強化スケジュールを実施した場合と同じ実験操作を行っていることになります。

 この問題に限りませんが、強化スケジュールにおいては、どの部分が実験的に操作されているのか(独立変数)、どの部分は被験体の行動に依存しているのかをはっきりさせておく必要があります。
  • 先に述べた比率スケジュール(定比率FRや変比率VR)の場合は、好子を獲得するのに必要な行動回数(FRやVRの値)は実験的に設定できるので独立変数と言えます。
  • 定時隔スケジュールの場合は、形式上はFIの値(時間間隔)が独立変数ということになりますが、被験体の行動頻度(「反応率 response rate」)が少ない時は、実際に好子が出現した時間間隔が、手続上設定したFIの時間間隔と一致しない可能性が出てきます。
もっとも、ハトのキーつつき行動の実験では、通常、ハトは高頻度でキーをつつきますので、設定したFIと好子出現の時間間隔に大きなズレが生じることはありません。

 あと、強化スケジュールのもとでは、被験体(人間であれば行為者)自身が行った行動回数や時間経過は次の行動の手がかりとして利用可能です。これは後述する弁別学習にも関連してきます。強化スケジュールの研究を、
  • 行動随伴性についての体系的な研究として行うのか
  • 強化スケジュールのもとでは何が手がかりになっているのか、その手がかりはどの程度利用可能なのかといった弁別学習の研究として行うのか
  • 別の目的のための実験ツールとして強化スケジュールを利用するだけなのか
といういずれの目的で行うのかによって、実験計画の方向性は大きく変わっていくことにも留意する必要があります。

次回に続く。