じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 岡大・東西通りのヒラドツツジ。東西通りの北側石垣の上と、南側歩道沿いにそれぞれ1km近くにわたって植栽されているが、開花の時期に多少のずれがあり、また年によっては花が少ない株もあり、1km全体が一斉に開花するというような絶景は見られない。とはいえ、今年は比較的花が多いようだ。


2014年5月3日(土)

【思ったこと】
140503(土)長谷川版「行動分析学入門」第5回(2)好子出現の随伴性による強化(2)好子の起源と多様性(1)生得性好子

 前回までのところで「好子出現の随伴性による強化」は、

●行動の直後に【   】が出現すると、以後、その行動は増える(もしくは高頻度を保つ)

という形で定義されると述べました。ここで、【   】に入れることのできるモノや出来事のことを好子(コウシ)と呼び、行動が増えたり高頻度を保つ状態に維持されていることを「強化されている」と呼びます。

 具体的には、
  • 「釣り糸をたれたら、魚がとれた。」:同じ場所で釣り糸をたれる頻度が増える。その場所に通うようになる。
    【   】→釣り糸をたれる→【獲物の魚】
  • 「湧き水のある場所に行ったら、おいしい水が飲めた」:その場所に通う頻度が増える。
    【   】→湧き水のある場所に行く→【おいしい水】
  • 「アルバイトをしたら、給料がもらえた。」:その仕事を続ける。
    【   】→アルバイトで働く→【給料】
  • 「歳末のセールの日にお店に行ったら、福引き券を貰えた」:セールの日にお店に出かける頻度が増える。
  • 【   】→お店に行く→【福引き券】
など、例はいくらでもたくさん挙げることができます。

 ここで問題となるのは、私たちにとっていったい何が好子になるのか、また、どういう経験を経て好子が形成されるのかということです。

 まず、いったい何が好子になるのかという点ですが、もともとの起源は、環境への適応方略としての行動にあると思われます。すなわち、その個体の生存や子孫の繁殖にプラスに働くようなモノや出来事を手に入れる行動を増やしたり高頻度で継続することが、結果的に適応上有利な結果をもたらすという次第です。

 生物学的に必要とされる物質は、すべて好子の候補となり得ますが、身の回りに溢れているモノは、わざわざ面倒な行動をしなくても手に入るので好子にはなりません。例えば、地上には酸素が溢れていますので、通常、酸素は好子にはなりません。【8000m級の高い山に登ったり、排気ガスいっぱいの交差点で交通整理をしている人にとっては、好子になります。】

 食べ物、水、適温、性的興奮をもたらす刺激などは、いずれもその動物の生存や繁殖に必要な刺激となります。それらは普通、無条件に好子になっているように思われます。このように、経験を必要としない好子のことを「生得性好子」と呼びます。これに対して、何らかの経験を経て好子となったモノや出来事のことを「習得性好子」と呼びます。後述するように、習得性好子は価値の形成や多様性と大きく関連しています。

 なお、環境への適応方略としての行動のところでも述べましたように、私たちに備わっている適応方略は、原始時代の過酷な環境の中で生き延びるために淘汰されたものであり、モノがあふれる現代社会には必ずしも通用しなくなっています。例えば、糖分や脂肪分は、十分な食糧が確保できなかった原始時代には、きわめて適応的なエネルギー源であったと考えられます。甘いモノや脂肪たっぷりの食べ物が生得的好子であることは、その時代においてはきわめて適応的でした。しかし現代社会では、それらが過剰に摂取されることはむしろ、不適応的となっています。人類がかつて身につけた生得性好子が現代社会の問題行動の一因になっていることは確かです。

次回に続く。